強者弱者(79)

西新井

 二十一日 御影供とて弘法大師入寂の日なるがため、高野山を始め、真言宗の寺院賑ふ。近郊に川崎、西新井の大師あり。川崎は年と共に俗化したれども、西新井には尚ほ野趣の掬すべきものあり。汽車の便もあれど、南千住より荒川に沿ひ歩して菜園麦圃の間を行く妙ならずとせず。千住には鮒のすずめ焼あり。田端よりするものは、道を上尾久村の渡しにとる可し。河畔に鯉こくを味ふもよし。

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「御影供」(ごえいぐ)とは、神仏や故人の影像に供物を捧げて祀ること(広辞苑)。
「入寂」(にゅうじゃく)は僧侶が死ぬことですが、死んだことにはならないのですね。空海は死んではおらず、寂滅に入っているだけ。

現在は西新井大師には東武伊勢崎線が便利ですが、100年前は南千住か田端から歩いた方が趣があると言っています。
恐らく南千住なら日光街道を北上して大川と荒川を渡り、梅島辺りで西に折れたのでしょうか。当時の周囲は文字通り「菜園麦圃」(さいえんばくほ)、野菜や麦の畑だったことが偲ばれます。

一方の田端から行く場合は、現在の尾久橋が架かっている辺りに渡しがあったようですね。当時は上尾久村。これで荒川を渡って北上するコースです。

千住には鮒のすずめ焼きを名物とする「鮒佐」という名店があり、現在も続いているそうです。↓

http://www.funasa.com/funa1.htm

尾久村の「鯉こく」はどうでしょうか。田端の商店街で「鯉こく」を食べたというブログを見つけましたが、それは興味のある方が自分で探して下さいな。

 

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