強者弱者(27)
尾花の木兎
西郊、雑司が谷に杖を曳くもの、尾花の穂にて作りたる木兎を求めて土産となす。平原の自然によりて養はれたる江戸の俳趣味。今之を細民のあはれなる手工に偲ぶ可し。境内欅の落葉堆きに、梢を洩るゝ日影の斑なる、障子を斜にして『やきとり』と筆太に書きたるも趣あり。
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「木兎」は「づく」とルビが振られています。ミミズクのことですね。昔はススキの穂をミミズクの形に編んだおもちゃがあって、雑司ケ谷の土産だったようです。
尤もここでは「土産」を「みやげ」と読まずに「いへずと」と読ませています。広辞苑は「みやげ」で載っていますが、元々人の家を訪ねる時に持参するものですから、「家を訪ふ」から「いへずと」と読むのが正しいのかも知れません。字源には「どさん」という振り仮名になっていますからね。
現代の読みが、必ずしも昔からそうであったということにはならない一例。
「杖を曳く」という言い方も最近はめっきり少なくなりましたが、散歩をするということです。私は時々使って不自然にも感じませんが、家内に笑われてしまいました。“あなたは江戸時代の人ですか、” ってね。
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