強者弱者(33)

霜柱

 東京にて寒さの最も甚しきは北豊島に接する小石川、駒込の町々なり。千駄木富士前曙一円の地高台にして霜どけの甚しき市内他に其比を見ず。最も暖きは高輪、三田一円の地なり。千住は南北とも駒込に比して遥に暖かなり。新宿の寒さは駒込につぐ。駒込は初冬の乾燥期に入りて雨を見ざる事三旬の長きに亙るも、足一度裏小路に入れば霜解けの泥濘履を没して行く可からず。
 廿三日 新嘗祭 雲はびこりて、風寒し。しぐれもよひの空、大根と油揚げの味を思はしむ。

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東京で最も寒いのは小石川や駒込。暖かいのが高輪や三田とありますが、現在ではこういう感覚は判りませんね。

私のサラリーマン時代は、勤めていた赤坂見附が寒く感じられました。四谷の山からの風が紀の国坂を吹き下って、弁慶掘一帯の寒かったこと。尤もこれはビル風が影響していたのかも知れません。

「旬」は、ここでは「じゅん」と読みます。上旬・中旬・下旬の旬。10日間のことですね。三旬の間雨が降らないということは、丸々一月も降雨が無いこと。
それでも昔は霜解けのために道がぬかるんで、ぬかるみに靴を取られて歩けなかったものです。

今日、11月23日は「勤労感謝の日」。正しくは、というより古くは「新嘗祭」(にいなめさい)です。この字くらいは問題なく読めるでしょうが、念のため。
天皇が新米を神に献上し、また食する祭儀。広辞苑によると、古くは陰暦11月の中の卯の日に行われたそうです。

 

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