強者弱者(8)
飛行日和、野球日和
秋晴の空に、飛行機の試乗をなすものあり。歳時記に所謂秋晴、小春などの季節と相俟ちて、そが詩歌、俳諧の題材となるも近きうちにありぬべし。
野球日和。近年屡外来の選手と、わが選手との国際的遊戯早稲田、慶應のグラウンドに催さる、日本橋小舟町あたり旧式の土蔵造り、帳場格子の奥暗きに、新聞を眼鏡越しに見る実体の主人若き番頭を捉へて、野球とは如何なるものぞなど、問ひたるもをかし。
毎年此頃雨天多し、セルの単衣に袷羽織、稍寒きを覚ゆ。郊外、雨中に蟋蟀の声あり。
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「秋晴」は、「しゅうせい」とルビが振られています。現在では専ら「あきばれ」と読ませるようで、漢字の読みのテストで「しゅうせい」と回答したら間違いにされてしまうかも知れません。
しかし古い辞典で確認すれば明らかなように、これは「しゅうせい」が正しいでしょう。「あきばれ」はあくまでも慣用読みだと私は信じています。
「ひより」を「日和」と書くのは、逆に当て字でしょうね。旅行びより、洗濯びよりは良く聞きますが、「飛行日和、野球日和」は100年前ならではの季節感でしょうか。
確かに空が高くなる今頃が、趣味としての飛行や野球には適しているのかも。
私は野球には関心が無いのでよく知りませんが、100年前は早稲田、慶應の対抗戦辺りが頂点だったのでしょう。
広辞苑によると、「野球」という訳語が制定されたのが1894年のことだそうです。秀湖がこれを書いた頃は「野球」という言葉が生まれて15年くらい。“野球とは如何なるものぞ” という人もまだまだ多かったと思われます。
音痴の私でさえ、簡単な野球のルールぐらいは知っていますから。
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