強者弱者(42)
歳の市
歳の市は其処によりて日を異にす。草市につどふ好き人の、灯影に見る中形の浴衣の瀟洒として質素なるも、人によりてなまめかしきに比べて、これはコート、毛皮の襟巻、流行のマッフラーなど、黄金によりてきらびやかなるはいやし。羽子板の押絵によりて過去一年の劇壇を回顧したるもをかし。
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歳の市は、新年の飾り物などを売る市のこと。場所によって市の立つ日が違うという話ですね。
中でも当時から賑わっているのは、浅草寺の歳の市でしょう。ここの目玉商品が羽子板だったそうです。
「羽子板市」という名称が定着したのは戦後のことで、100年前は単に「歳の市」で通っていました。
ただし、羽子板に押絵を施す習慣は江戸時代からあったそうで、200年の伝統があるようです。
江戸期の押絵は歌舞伎役者が中心でしたから、“過去一年の劇壇を回顧” となるわけです。
最近の羽子板市は12月17日から19日までですが、明治期はもっと遅かったのではないでしょうか。
現代の東京の歳の市では、御徒町アメ横のものが最も有名かも知れません。
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