日本フィル・第9交響曲

今年も第9の季節が巡ってきました。思えば、去年勤めを終えた日も最後は第9。オーケストラは新日本フィルながら指揮は同じ広上淳一でした。
巡り合わせ、ということではなくて自ら演出したことでもありますが・・・。

私は特に年末だから第9を聴くという主義ではありませんが、ここ何年かは毎年のように第9を聴く習慣になってしまいました。
もちろん第9なら誰でも良いということではなく、やはり指揮者なり歌手なりに聴きたい演奏家が出演する時に限ります。毎年聴けるということはラッキーなのでしょう。まだ数年は続きそうな予感です。

と言うわけで、今年は22日に池袋の東京芸術劇場で行われた公演。もちろん指揮者への期待と前半のトランペットの妙技が楽しみな公演です。

ハイドン/トランペット協奏曲変ホ長調
     ~休憩~
ベートーヴェン/交響曲第9番ニ短調作品125
 指揮/広上淳一
 トランペット/オッタビアーノ・クリストフォーリ
 ソプラノ/釜洞祐子
 アルト/重松みか
 テノール/錦織健
 バリトン/河野克典
 合唱/東京音楽大学
 コンサートマスター/江口有香
 ソロ・チェロ/菊地知也

開演1時間半前に池袋着、紹介してもらった関西風うどん屋で軽く一杯啜ります。これ、美味かったですねぇ~。聞けばこの店は日曜・祭日は休みなのだそうで、平日しか食べられない由。これだけを目当てに池袋散歩をしても良い、かな。

前半のハイドン、ソロを務めるのは今年の9月から日本フィルの客演首席トランペット奏者に就任したクリストフォーリ。これまでも定期演奏会で素晴らしいテクニックに感嘆してきましたが、今日はまた明るく、張りのあるトランペット・ソロで改めてこのイタリア人若手に惚れこみましたね。

初めて読んだプロフィールによると、1986年生まれといいますから未だ23歳。11歳でトランペット科に入学して7年で卒業。更にオーケストラ科のある学校に進学してからキャリアを開始した人。
プロになって未だ数年しか経っていないと思いますが、相当な履歴の持ち主ですね。
日本フィルは良く貴重な人材を押さえたと思います。

それにしても名前がクリストフォーリとは。扱う楽器がトランペットというのも不思議な感じがしませんか。
え、何のことか判らん? 別に詮索しなくてもいいですよ。単なる冗談として聞き流してください。

広上得意のハイドンということもあり、テクニック、音色とも最高級のハイドン演奏を満喫しました。第9へのアペリティフとしては文句の無い一品でしょう。

本命の第9。
広上の指揮で何度も聴き、その度に感想も綴ってきましたから、細かい事は繰り返しません。
要約すれば、

広上は最近流行のベーレンライター版は使いません。
対抗配置もやりません。
極端に速いテンポや、思い入れタップリの遅いテンポも取りません。
往年の名指揮者がやってきた楽器の追加や楽譜上の変更もやりません。
繰り返し記号も慣習以上のことはしません。
第3楽章から第4楽章にアタッカで突入することもありません。
ソリストを最初から舞台に登場させたり、第4楽章の大音量の時に入場させて拍手を遮ることもしません。
真っ赤な絵の具で塗りつぶすような演奏はしません。

それじゃぁ平々凡々たる普通の第9かと言うと、そうはならないのがこの指揮者の凄い所でしょう。列記した特徴は第9以外にも当て嵌まることですが、歌手は歌い易く、演奏者は弾き易く、それでいて客席はベートーヴェンの偉大さに思い切り感動できる。

そんな第9を、今年も聴けたことを幸せに感ずる一時でした。

 

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