強者弱者(49)

薮入り

 十五日 一年二度の薮入り。待ちわびておとづるゝ我家の軒傾きてなつかしき母の貧苦にやつれたる、幼き同胞の餓に泣きたる、召使はるゝ家のきらびやかなるに比べて今更に世の態のはかなまれたるもうたてしや。母なる人の我が食を減じて薮入りといふ子に心ばかりの膳をしつらへたる却々に涙のたねぞかし。
 十六日 各所の閻魔賑はふ。

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「薮入り」(やぶいり)は説明をしなければならないほど、現代では廃れた習慣になってしまいました。

昔は、奉公人が一年に二度、正月とお盆に雇主から休暇を貰って実家に帰る習慣がありました。それが薮入り。現実にはいつ頃まで存在したのでしょうか。100年前は現役だったようですね。
俳句の方では、「薮入り」は春の季語だそうです。

十六日は「閻魔詣り」(えんままいり)ですね。閻魔は言うまでもなく地獄の親分ですが、1月と7月の16日は閻魔の斎日として閻魔堂に参詣する習わしです。斎日(さいにち)とは、ものいみする日。
この日は俗に地獄の釜の蓋が開く日、とされています。

因みに江戸の三閻魔は、杉並の華徳院、新宿の大宗寺、巣鴨の善養寺だそうです。お出掛けになっては如何。

http://japanfestival.web.fc2.com/kanren/enma/enma.html

 

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