強者弱者(56)
鶯のさゝ鳴
水仙の花咲く。郊外の家、朝毎に鶯のさゝ鳴きを聴く。床を出でて縁の障子を押しあくるに、雪つりしたる松の木蔭よりあわただしく飛び立ちて庭の片隅にかくれたる、賢げなるものごし心憎し。みそささいといふ鳥も物の蔭より蔭に隠れて飛ぶ、其心せはしきさま鶯に似たれども、声をしのぶ姿やさし。
盆栽の梅末なり。
椿の花咲き初む。
白魚市に上る。価貴く品稀し。蛸、海鼠など価卑くして味最もよし。
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特に解説は要らないと思いますが、現在とは若干季節感のずれがあるようです。但しこの文章が書かれた具体的な日付けが不明ですから、一概に断ずるわけにはいきません。
現在は都会で鶯を見かけることは稀になりました。私もひと冬に一度見かければ良い方。しかし鳴声だけは毎年耳にします。
次に「みそささい」を取り上げていますが、ミソサザイを東京で見ることはほとんどないと思います。「郊外」がどの辺りかは判りませんが、少なくとも私は東京で見た記憶がありません。
もしかするとジョウビタキの間違いではないか、とも思われます。ジョウビタキは現在でも都内で普通に見られます。翅の白紋がよく目立つので、紋付鳥という俗称もあるほど。
飛べば朱色が美しい鳥。あまり人を恐れないので、これをミソサザイと勘違いした可能性無きにしも非ず。
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