強者弱者(61)

初午

 初午 晴れて風なき日は、暖春に似たり。各所の稲荷雑踏織るが如し。赤坂表町の豊川稲荷、羽田の稲荷など最も賑はふ。羽田は海に近く養魚場の堤防に立ち萬頃の蘆萩に白帆の往来を見る最もよし。羽田川崎ともに両側の旗亭、残肴を店頭に並べて客を引かんとするは卑し。市内、泉岳寺の門前に此風あり。

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特に補足することもないと思います。

初午はもちろん2月最初の午の日ですが、京都の伏見稲荷の神が降りたのがこの日だったからとか。要するにお稲荷さんの誕生日ですね。
江戸時代は旧暦でしたが、明治以降は新暦。一説に立春以降最初の午の日とも言うそうです。

今年(2010年)は2月1日が初午ですが、後者の説を採れば2月13日です。尤も二の午、三の午(年によって)を祝うこともありますから、堅いことは言わないのでしょう。今年は25日が三の午。

羽田の稲荷は穴守稲荷でしょう。尤もここは戦後に羽田空港拡張のために移転させられましたから、ここに描かれた風景とは少し違うと思われます。

「萬頃の蘆萩」(ばんけいのろてき)という描写がありますが、蘆(あし)と萩(おぎ)が一面に広がっている様。昨今の羽田にこうした光景は見られなくなっています。

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