復刻版・読響聴きどころ(2)

読響聴きどころは、当初は定期演奏会だけを対象にするつもりでしたが、名曲シリーズにも手を出してしまいました。これは2007年1月の名曲シリーズの聴きどころ。
プログラムは前半がシュニトケの交響的前奏曲とヴァイオリン・ソナタ第1番、後半がドヴォルザークの新世界交響曲という組み合わせです。

この回も2回に分けて取り上げましたので、*で区切りました。

なお、最後に触れている五嶋みどり解説のURLは現在は無効になっています。譜面も引用した優れモノだっただけにサイトの閉鎖は残念です。

この回は、私自身はコンサートに行っていませんので感想はありません。
ただ、ドヴォルザークはライブ録音がCD化され、読響の年間会員向けとして頒布されています。

このコンサートで、下野は第2楽章のチューバを省いて演奏したことを後で知りました。聴きどころではこのチューバについても触れているのですが、まさか本当に実行するとは思いませんでしたね。

          **********

定期以外はやらない、と言っておきながらこういうトピックを立てるのですから物好きです。
名曲シリーズはむしろ定期より人気があるということなので、聴かれる方も多いのだろうと思います。更に読響の名曲シリーズは他のオケと違ってかなり凝った曲が出ますから、定期並みの聴きどころ満載コンサートも目立ちます。

新年最初はドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」ですね。新世界と新年とに直接結びつきはないと思いますが、毎年どこかのオーケストラが年明けに演奏します。
今年も下野=読響の他に秋山=東響と小林=日本フィルが予定しています。確か去年の読響ではセゲルスタムが指揮したと記憶しています。

今更「新世界より」をCDで予習するという人は少ないと思いますが、定期聴きどころに倣っていくつか基本的なデータを紹介しましょう。

先ず日本初演ですが、どうもこれのようです。
1920年(大正9年)12月29日、帝国劇場。山田耕筰指揮日本楽劇協会。
(このトピックを書いているのが日本初演の日である!)
世界初演の27年後にあたります。この世界初演も12月でしたから、この曲は新年よりも師走に縁があるのですね。

次に版ですが、最初の出版はジムロック(1894年)ですね。長年これが使われてきたと思いますが、最近になってドヴォルザークの自筆譜などを参考にしたクリティカル・エディション(批判校訂版)が出ました。
確か1955年のことで、最近は新版による演奏の方が多いと思います。

ポケット・スコアでは、今でも楽譜屋さんの店頭に並んでいるものの多くは旧版に基づくものでしょう。
新版はスプラフォン社から出ているのですが、同じものの日本語解説版がヤマハから発売されています。この新版には改訂の経緯や細かい訂正箇所が記してありますから、一度解説だけでも読んでおかれることをお薦めします。
私も両版とも持っていまして、この聴きどころもこれを参考にしています。

楽器編成についても触れなければいけませんね。
2管編成が基本ですが、フルート属ではピッコロが出てきます。第1楽章の展開部に入って直ぐの1箇所だけですが、2番フルートの持ち替えです。

一番の問題はイングリッシュ・ホルンですね。第2楽章の名旋律を担当します。
ジムロック版では第2オーボエが持ち替えて演奏するようにと読めるのですが、最後に出る箇所ではオーボエとの持ち替え時間が不足してしまいます。第100小節と101小節間のことです。

それでどうするか。

①つなぎの部分でテンポを落とし、奏者は慌しく持ち替える。
②ここに先立つ2番オーボエ・パートは最後まで吹かなくとも聴いている人には判らないから、途中で端折ってイングリッシュ・ホルンに持ち替える。
③二人のオーボエ奏者とは別にイングリッシュ・ホルン専門の奏者を用意する。

などが思いつきますね。新版ではパートの重要性に鑑み、③を採用しています。ドヴォルザーク自身は、この点について何も指示していないのですね。

下野氏が去年「三大交響曲の夕べ」で採用していたのは②だったと記憶しています。チョッと意地の悪い見所ですが、チェックしてみては如何でしょう。当然ながら録音では判りません。

もう一つがチューバです。これは第2楽章にしか出てきません。しかも単独のパートではなく、第3トロンボーン(バス・トロンボーン)と同じパートを吹きます。
ドヴォルザークがチューバを重ねるように指示したのは冒頭5小節のコラールだけですが、最後のコラールも冒頭と整合を取るために吹いた方が自然なのでしょう。新版でもここは括弧を付けて記譜しています。
そもそもチューバは使わなくても問題ないように思いますがどうでしょうか。

以上は基本的な情報です。
最後に我流の聴きどころ。第1楽章のフルートですね。第3主題というかコデッタのテーマですが、これはアメリカ・インディアンの民謡にヒントを得たというメロディーで、郷愁を誘うが如き美しい旋律がフルート・ソロに出ます。
当然、首席奏者が吹きますが、問題は再現部。ここは第2フルートが吹くケースもあります。いやその方が多いでしょうか。

楽譜ではどうなっているかというと、特に2番という指定はありません。ただ、音譜の旗が下向きに書かれているのですね。
フルート・パート一段に二人の奏者の音譜を記す場合、音譜の旗を上下に分けることによって夫々のパートを表わすことが多いですね。普通は1番奏者が高いパートを分担するからです。

ところがここはソロながら旗は下向き。つまり2番が吹け、と解釈できるのですよ。ただ旗といっても最初の2小節だけです。
フルートに限らず2番奏者のソロは少ないですから、これは貴重です。席によっては見えないのですが、どちらが吹くか確認しましょうか。

もう一つは第4楽章に1箇所だけ出るシンバル。楽譜では管や弦が p か pp なのに、シンバルは mf 。ここはそれこそ演奏者(最終的には指揮者の指示でしょう)によって千差万別です。音色、音量、奏法。
どのように叩くかの指示もありませんから、2枚を摺り合わせるもの、吊りシンバルを柔らかい撥で叩くもの、レコードで音だけ聴いているとどうやって出したのか謎のものまで様々です。
打楽器奏者は第3楽章のトライアングルも担当しますが、トライアングルでも吃驚するような奏法で叩いた人がいました。名人芸でしたね。ほとんど出番のない打楽器奏者ですが、ここにも注目しましょうか。

     *****

この演奏会は前半にシュニトケが演奏されますね。私はこの作曲家についてはほとんど情報を持っていませんし、当然この2曲も聴いたことがありません。CDも出ているようですが、持っていません。

従って聴きどころなどとんでもない話なのですが、少しばかり調べてみましたので、それを紹介することでご勘弁願います。

その前に、新世界よりのトライアングル。

これは自分で買ったチケットではなく、知人から頂いた招待券で聴いたと記憶しています。
場所は東京国際フォーラム、ワルシャワ・フィルの来日公演で、指揮は読響定期も振ったことのあるカジミェシュ・コルトでした。手元の資料によると、1997年11月11日のことです。

古いことで記憶が定かではありませんが、日本とポーランドに関する何かの記念を兼ねた会だったようで、ポーランド大使(?)がコンサートに先立って長々と挨拶をしていましたっけ。

さてトライアングルは、普通、楽器を左手でかざし、右手に持ったスティックで叩いて音を出しますね。
このときは、楽器を吊るし、2本のスティックを交互に叩いて音を出していたと思うのです。定かではありません。
それよりも音そのものが実に音楽的で、微妙な節回しすら感じられたのでした。ただのチリチリ音しか出せない筈のトライアングルを歌わせた。その名人芸に魂消たのです。

さてシュニトケ。この人は生まれながらのホームレスですね。もちろん路上生活者という意味ではなく、いかなる社会にも帰属意識を持てなかった、という意味です。ロシア人とはいいながら、父はユダヤ系ドイツ人でしょ。ロシア音楽というよりはドイツ音楽に近い。

その作品も多様式主義 Polystylism といって、様々なスタイルを同時に取り入れてしまう。クラシックなのですが、軽音楽にも通ずる部分もある。
シュニトケを楽しむコツは、クラシック音楽という既成概念を忘れて、作品の様々な声を聴くことではないかと思っています。

シュニトケの作品は、ほとんどがシコルスキという出版社から出ています。ハンブルクを拠点にする楽譜屋さんで、主力はポピュラー音楽の楽譜です。
クラシックでは、旧ソ連の西側出版権を持っていましたから、ロシア音楽が主体ですね。シュニトケも無名時代からたくさん出版していました。私も5~6曲持っていますが、比較的安価なので買い易いのが特徴です。
シコルスキの楽譜で有名なのは、「猫ふんじゃった」の印刷譜ですね。珍しいもので人気があります。(ボクは持ってませんよ)

そのシコルスキ社のサイトからの孫引きです。
交響的前奏曲は20分ほどかかる、単一楽章の作品です。楽器編成は、フルート3(ピッコロ2本持ち替え)、オーボエ3(イングリッシュ・ホルン1本持ち替え)、クラリネット3(Esクラ1、バスクラリネット1本持ち替え)、ファゴット3(コントラファゴット1本持ち替え)、ホルン4、トランペット4、トロンボーン3、チューバ1、ティンパニ、打楽器多数(3人の他にフレクサトーン、ヴィブラフォン)、ハープ、ピアノ、弦5部(12-12-10-8-6)となっています。

何でも、トランペットがファンファーレ風に開始するそうですが、全体的には極めて暗い音楽だそうです。シュニトケのオーケストラ扱いが極めて個性的、と評されていますから、その辺を楽しみましょう。

次のヴァイオリン・ソナタ第1番(弦楽合奏版)は、文字通りヴァイオリン・ソナタ(1963年)を6年後にアレンジしたもの。オーケストラの編成は、チェンバロと弦5部(4-4-3-3-4)です。
ヴァイオリン・ソナタはよく演奏されているようで、CDもかなり出ています。演奏時間は22分半ということになっています。

曲目解説は私がどうこういうより、五嶋みどりさんが書かれたものがあります。音楽評論家が書くものより遥かに優れていますから、これを参考にしてください。BACHの引用なんて目から鱗ものです。

http://www.gotomidori.com/japan/m_notes/m_notes-07schnittke.html

 

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