メトロポリタンのケーブル・オペラ

放送音楽

11月は「芸術の秋」ということらしい。NHKが盛んに音楽番組を放送してます。で、先週と今週の土曜日、ハイビジョンでメトロポリタン歌劇場の最新作をやってました。
ピーター・ゲルプに変わってからの新企画らしく、ケーブルを使って全世界にナマ中継しているそうです。そう言えば東京でも新橋が何処かで同時中継されている、という話を聞いたっけ。映像の総指揮は昔からズッと、ブライアン・ラージ。

それを「芸術の秋」にまとめて再放送しているらしい。

先週見た「魔笛」、これは酷かったですね。ブロードウェイで「ライオン・キング」をヒットさせた何とかいう女流演出家が手掛けた、というのが「売り」だったみたいだけれど、音楽はズタズタ、台詞だけじゃなく歌唱も英語。とても聴いていられなくて、10分ほど見てスイッチを切ってしまいましたわ。
没落するアメリカの象徴、メトロポリタンも地に落ちたもんだ。こんなの引き受けるレヴァインって、こんな指揮者だっけ。

ということで、今日の「エフゲニ・オネーギン」も気が進みませんでした。まぁ、暇だし、最初だけでも見るか。

ところがどうして、これは素晴らしかった。演出はロバート・カーセン。何かを敷き詰めたり、天井から降らせるのは、前に見た「椿姫」と同じ手だな、と思ったのは最初のうち。次第に演出に惹き込まれて行くのでした。

第1幕が終わったところで休憩。ビバリー・シルズが主役二人にインタビューしたり、メイキングのドキュメントがあったりと、休憩時間もトイレに行かせてくれません。
演出のコンセプトもお陰でよく判ったし、さすがエンタテイメントの国、アメリカですわ。

主役のオネーギンはディミトリ・ホロストフスキー、タチヤーナはルネ・フレミングです。もちろん役に成りきってますし、それぞれの想いもある。そういうことはドキュメントがシッカリ伝えてくれます。
素晴らしかったのはレンスキーを歌ったラモン・ヴァルガ。いい役だし、主役を食ってましたね。オルガのエレナ・ザレンバ、グレーミン公のセルゲイ・アレクサーシキンも喝采を浴びてました。

やっぱりゲルギエフは只者じゃないです。最近荒れている、とか何とか言われてますが、ロシア・オペラを振らせれば、存在感ありますねぇ。リハーサルでも、ほんの一言二言でオーケストラが変わっていく。過密スケジュールをこなせるのは、練習の効率が良く、指摘が的を得ていること、プレイヤーや歌手たちを瞬時に「その気」にさせるカリスマがあるからでしょうか。

これこそメトロポリタン歌劇場の実力でしょう。
それにしても落差が大き過ぎますね、メット。最低の魔笛と最高のオネーギンを鑑賞しました。来週もやるのかな、ライヴ・フロム・ザ・メット。

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