強者弱者(155)

夏祭

 十五日、深川八幡を初めとして市内各八幡の大祭。伊皿子の八幡神社は家康の開府以前より存したりと伝へらる。口碑に、家康入府の日、偶其祭典を見、氏子に問うて神体の八幡大菩薩なることを知り、幸先よしとて直に粢を給へりと。深川八幡に就いては『羽織芸者』『町芸者』の故事など思ひ出でらる。すべて、東京の祭典は何れも舊式をあらためず。人情本にて見たる光景其まゝになるもをかし。

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深川八幡祭りは、赤坂日枝神社の山王祭、神田明神の神田祭と並ぶ江戸三大祭りの一つです。深川八幡は、正式には富岡八幡宮。現在では8月13日から15日までの三日間開催だそうですね。↓

http://www.tomiokahachimangu.or.jp/

伊皿子の八幡神社は恐らく御田八幡神社のことだと思われます。1300年の歴史があるということですから、家康開府以前という解説にも符合します。↓

http://mitahachiman.net/

「粢」(し)は、神に供える穀物のことで、餅状にした米のことです。

羽織芸者は深川独自の芸者。辰巳芸者とも呼ばれ、羽織を着て客席に出たことから命名されたのだそうです。
“芸は売っても色は売らない” というのが彼女らの心意気だった由。

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