地方都市オケ・フェスト/大阪センチュリー交響楽団

すみだトリフォニーホールで開催中の地方都市オーケストラ・フェスティヴァル、二日目は大阪センチュリー交響楽団の登場です。指揮は同オケの音楽監督である小泉和裕。

私はこのオーケストラを聴くのは全く初めてのことで、小泉が音楽監督に就任してからどう変わったか、などということに触れる資格は全くありません。初体験の感想として読んでください。

前日に続いてのプレトークは、最初に楽団事務局?(名前を聞き損ないました、すいません)からオーケストラの現状について紹介があり、マエストロを迎えての話も概ねその方向。取り上げる作品の解説は一切ありませんでした。
従って、話の内容はあまり明るいものにはなりません。ただ、敢えてブルックナーを持って来たのは、この演奏を東京の聴衆に問うという意気込みがあったのは確かでしょう。こういうプログラムですが、これはフェスティヴァル向けとして特別に準備したもののようです。

《大阪センチュリー交響楽団》
リスト/ピアノ協奏曲第1番
     ~休憩~
ブルックナー/交響曲第4番
 指揮/小泉和裕
 ピアノ/小川典子

プレトークでも触れられていましたが、オーケストラのサイズは東京のメジャー団体に比べればやや小振りです。コントラバスが3プルトだったことから判断して、14型が最大のオーケストラでしょうか。

前半の協奏曲は文句なく素晴らしい演奏でした。ソロの小川、先月のシューマンではアンラッキーでしたが、ここは一気に名誉挽回。やはり協奏曲はオーケストラがある程度以上のレヴェルで対抗しなければどうにもならないということでしょう。
リストは小川典子のピアニズムには最適の作曲家で、推進力に溢れた小泉/センチュリーとガップリ四つの横綱相撲を堪能しました。

この日のプログラム、問題があるとすれば後半でしょう。賛否が真っ二つに割れそうなブルックナー。

実は、地元大阪では小泉のブルックナーがこてんぱんに叩かれている、という噂を聞いていました。もちろん当の小泉にもオーケストラにも評判は伝わっているでしょう。それでも敢えて東京にこれを持って来たのですから、オーケストラとしてもそれなりの覚悟はあったはず。

今回初めて彼らのブルックナー演奏に接し、なるほどねぇ~、と妙に納得してしまいました。

要するに小泉のブルックナーは、ブルックナーが苦手の聴衆には好感を持って迎えられるはずのもの。テンポが速く、メタボとは縁遠いブルックナー・サウンドを目指しているように思われます。特に第3楽章のスピード感は、これじゃ大阪では総スカンでしょ、と呟いてしまいました。

14型でブルックナーを演奏することにはある種の困難も伴うでしょうが、そこを逆手に取って開き直ったのではないかと勘繰るほどに痛快なブルックナーではありました。

これを聴いて金管が出過ぎると感ずる人もあるでしょうし、弦が量的に物足りないと不満を持つ向きもあるでしょう。それは厳然とした事実なのですが、私はこういうブルックナーがあっても面白いのじゃないか、という意見ですね。

もし大阪府知事がこれを聴いて、なるほどセンチュリーは弦楽器を増強すべきだ、と見直してくれればしめたもんでしょ。(んなことありゃしませんがね)

その意味で大阪センチュリーは、一言で言えば実に潔いオーケストラと申せましょうか。

面白いのは、前日に登場した大阪シンフォ二カーも14型のブルックナー演奏で快進撃を続けていること。

大阪は某長老による長年のブルックナー演奏の伝統がベットリと染み付いた土地でもあり、そこから全く正反対のスタイルが出てきたことは何か象徴的なものさえ感じてしまいます。
小泉のブルックナーが大阪で猛反対されているのもよぉ~く判りますが、めげずにこのスタイルを貫いて欲しいと思いますね。ガンバレェ~、小泉マエストロ。

思えば、関西には小泉/センチュリー、児玉/シンフォ二カー、大植/大フィル、飯守/関西フィルと、一癖も二癖もあるブルックナーが揃っていて、私に言わせれば、東京より余程面白いブルックナー天国と言えなくもありませんな。
全国のブルックナーお宅達よ、挙って関西に移住すべし。

ところで、この日の演奏ではフルートが実に素晴らしいと思ってメンバー表を見ると、どうもニコリンヌ・ピエル―という女性奏者のようです。名前からみるとフランス人でしょうか。技術的にも音楽的にも抜群、何処かに引き抜かれないように注意って、余計なお世話か。

最後に音楽そのものとは関係ない話を二つ。

一つは客席の拍手について。
この日のすみだトリフォニーの聴衆はチョッと変でしたね。ブルックナーでは第3楽章が終わったばかりなのに“ブラヴォ” という蛮声を掛けたり、本当に全曲が終わった時には何処で拍手して良いのか判らなかったり・・・。
舞台の上から見ていたら、東京の聴衆はあまりブルックナーを聴いたことが無いんだろう、と思われたかもしれませんね。

いえいえセンチュリーの皆さん、東京にもブルックナー・ファンはたくさんいるんですよ。たまたまこの日はタイミングが合わなかっただけ、と思ってください。客席の一人としては些か恥ずかしい気持ちでしたがね。

もう一点。
演奏終了後、多くの楽員が聴衆を見送るべく挨拶に出ていました。東京公演だけの特別行事ではないでしょう。
私の数少ない地方体験でも、札幌も同様でしたし、京都も同じ習慣があります。東京でこのようなことをするオーケストラは無いと思いますが、どうでしょうか。

これをサービスと呼ぶのかどうかは判りませんが、たった今まで舞台で演奏していたメンバーに声を掛けられる「場」があるということ、私は賛成ですね。

 

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