地方都市オケ・フェスト/京都市交響楽団

もう直ぐ4月だというのに冬が戻ってきて居座ってしまったような寒さの中、昨日(3月28日)は錦糸町で行われている地方都市オーケストラ・フェスティヴァルの最終日を聴いてきました。
今年の主人(とり)は京都市交響楽団です。

《京都市交響楽団》
プッチーニ/交響的奇想曲
R.シュトラウス/ホルン協奏曲第1番
     ~休憩~
シューマン/4本のホルンのための小協奏曲
ベートーヴェン/交響曲第4番
 指揮/広上淳一
 ホルン/ラデク・バボラーク(シュトラウス&シューマン)
 ホルン/垣本昌芳、澤嶋秀昌、寺尾敬子(シューマン)
 コンサートマスター/泉原隆志

チェロのトップには上村昇(かみむら・のぼる)の姿も見えます。

京響の東京公演は去年も聴きましたが、それはこのフェスティヴァルではなく、サントリーホールで行われた自主公演でした。
京響は本拠地の京都コンサートホールで何度も聴いていますし、前年のサントリーも聴きました。私にとっては札幌交響楽団と並んで最も身近に感じられるオーケストラです。その意味でのサプライズはありません。

今回は去年と同様、京都での3月定期演奏会をそのまま東京に持ち込んだもの。前日に演奏されたばかりのプログラムです。
曲目をザッと見渡すとややテーマがぼけている印象もあります。内容としても少し物足りない感じ。
しかし実際に聴いてみるとどうして、実に充実した定期であることが実感できたのは流石でしょう。「腹八分」という食後感は、実は最も満足度の高い内容とでも言いましょうか、また聴きたいという期待を残す見事な選曲だと思いました。

プレトークでも紹介されていましたが、京都でのコンサートはチケット完売だった由。京響は2009-2010シーズンの定期で何と7回も満員御礼が出たそうで、着実にファン層を拡大しているのは頼もしい限りです。
次に京都に出掛ける際は、事前にシッカリとチケットを確保しておく必要がありそうですね。

冒頭のプッチーニは若書きの一品。確かピエトロ・スパダが校訂して演奏できるように構築されたはずですが、ナマで聴ける機会はそうあるものではありません。知ってはいても、歌劇「ラ・ボエーム」の冒頭の音楽が出てくると思わずニヤリとしてしまいます。
チンバッソを揃えた、堂々たる交響楽。

続いては今回の大きな目玉でもあるバボラーク登場。当初発表のプログラムではシューマンの次にシュトラウスでしたが、当日は上記のように演奏曲順変更の案内が挟み込まれていました。(京都ではどうだったのでしょう)

伝統的にホルンの名手を輩出してきたチェコが生んだ天才ホル二スト。その華麗なテクニックと柔らかく豊かな音色には唖然とするばかり。バボラーク目当ての客席も多かったのに違いありません。
バボラークと広上の相性も抜群。何年か前に新日本フィルと両者が共演したのも、確かここすみだトリフォニーホールだった記憶があります。

休憩を挟んで演奏されたシューマンの佳作は、バボラークと京響のホルン奏者たちとの共演。もちろん最も難しい1番奏者はバボちゃんの担当です。

これまたナマで聴くのは珍しい作品ですが、当時開発されたばかりのヴァルブ付きホルンに興味を持ったシューマンの素晴らしい作品です。4本のホルンを揃えることの難しさから取り上げられる機会が少ないのですが、如何にも上機嫌なシューマンらしい幸福感に満ちた音楽。
演奏も活気に満ちて見事。全体はアタッカで通される3楽章形式ですが、特に中間のロマンスの美しさは忘れられません。

最後はベートーヴェンの幸福感に満ちた第4交響曲。ここに至って、この日のプログラムはクラシック音楽を聴くことの楽しさ、幸福感に主眼がおかれてることに気が付きます。
広上淳一の指揮も、正に音楽の楽しさを身体一杯に表現するもの。

このベートーヴェンも足が地に着いた、実にベートーヴェンらしいベートーヴェン。最近流行の尖がった第4とは一線を画すもので、テンポは速過ぎず緩過ぎず、私がこの曲で聴きたい音楽が全てギッシリと詰まった演奏です。
時に物足りなく感じることのある第3楽章が見違えるほど生き生きと面白い楽章に聴こえてくるのは、広上のスコアの読みが深い証拠。

プレトークによれば、マエストロはベートーヴェンの偶数番号交響曲を高く評価しているとのこと。広上がベートーヴェンの交響曲を纏めて取り上げたことは無いと思いますが、私はナマと録音を含め、様々な機会で色々なオーケストラとで、第2と第8以外は全て聴いてきました。
今年7月に日本フィルと横浜で演奏する第8は聴き逃せません。今から期待が高まります。
残るは第2ですが、確か以前に水戸で振ったはず。もし京都で演奏するチャンスがあれば、遠征せねばなりますまい。

京響は来年の都市オケ・フェストには参加予定がありません。単独での東京公演があるのか否か。
“また東京にも寄せて頂きます” という挨拶の後で演奏されたアンコールは、バルトークのルーマニア民族舞曲から2曲続けて。
ホール出口の掲示板に書かれた紹介では、4番と7番とのこと。

ところで、すみだトリフォニーホールからは現在建設中の東京スカイツリーを目の前に見ることができます。
今朝(3月29日)のニュースでは、本日スカイツリーの高さが東京タワーを抜いて東京一になるとか。ということは、京響公演が行われたのは、スカイツリーの高さが第2位だった最後の日。
このツリーを横目で見たはずの京響メンバーたち、我がオーケストラの最近の躍進と重ね合わせて感慨を抱いた人もあったかもね。

充実著しい広上/京響を堪能した一日でした。

 

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