ニューバーリーのトライアル

金・土の二日間、ニューバリー競馬場の春開催が行われました。土曜日には三つのパターン・レースが行われています。
英国競馬はシーズンが始まると、続けざまに重要なレースの連続です。今のところ火山灰による空港閉鎖の影響は出ていないみたいですけど・・・。

先ず最初はジョン・ポーター・ステークス(GⅢ、4歳上、1マイル4ハロン5ヤード)。パターン・レースには珍しく16頭もの登録がありましたが、1頭取り消して15頭立て。
1番人気は去年のアイルランド・セントレジャー2着のクローワンス Clowance とセシル厩舎のマニフェスト Manifest が分け合って9対2。

レースはアクマル Akmal がスローペースで逃げ、クローワンスが2番手の展開。直線入口では15頭全てにチャンスがありそうなレースとなりました。

ここからグングンと加速してきたのが、ジッと後方の外で待機していたハービンジャー Harbinger 。ゴールではライアン・ムーア騎手が手綱を抑えるほどの圧勝です。
2着は3馬身差で人気の一角マニフェスト、更に2馬身差がついて3着にはクレルモン Claremont の順。ハービンジャーは11対2の2番人気でした。
人気を分けたクローワンスは11着に沈んでいます。

勝ったハービンジャーは名伯楽マイケル・スタウト師の管理馬。去年はスタウト厩舎のセントレジャー候補でしたが、トライアルのヴォルティジュール・ステークスで原因不明の凡走。ここからの見事な復活です。
厩舎サイドによれば、冬が彼を変えたのだそうです。スタウト厩舎が得意とする古馬になって本格化するタイプで、当面の目標はエプサム競馬場のコロネーション・カップになります。

続いては1000ギニーへの重要なステップとなるフレッド・ダーリング・ステークス(GⅢ、3歳牝、7ハロン)。
8頭立ての1番人気は、先日ニューマーケットでネル・グィンを制したミュージック・ショウ Music Show と同じ陣営のレディー・オブ・ザ・デザート Lady Of The Desert 。どうしてもこの馬をニューバリーに使いたいという馬主の希望があり、ミュージック・ショウはニューマーケットで出走したのでしたね。
そんな経緯もあり、13対8の被った1番人気です。

しかし結果は小波乱、7対1で3番人気の伏兵パフ Puff が穴を開けています。2着は首差で4番人気のハバーイブ Habaayib 、大本命レディー・オブ・ザ・デザートは1馬身差切られて3着に終わりました。

レースは2番人気のミシーヤ Misheer の逃げで始まり、レディー・オブ・ザ・デザートは後方で待機策。
勝負所でレディー・オブ・ザ・デザートのキーレン・ファロン騎手が先に仕掛けて先頭に立ちましたが、中団を進んだジム・クロウリー騎乗のパフとリチャード・ヒルズ騎乗のハバーイブが本命馬を挟むように追い込み、番狂わせとなりました。

勝ったパフはレイフ・ベケット厩舎の管理馬。これで1000ギニーには20対1のオッズが出されました。
パフは血統的には1マイルには疑問があり、気性面でも多少問題がありますが、厩舎としては1000ギニーに向かわないわけにもいかないでしょう。

2着のハバーイブはふけ(発情)を経験したばかり、それを考慮に入れれば大健闘でしょう。

敗れたレディー・オブ・ザ・デザート陣営は、失望はしたものの悲観的ではなく、ミュージック・ショウをニューマーケットのギニーへ、レディー・オブ・ザ・デザートはアイルランドかフランスのギニーに向かわせて両馬の対決を避けたい意向のようです。

さてこの日の目玉は、2000ギニーのトライアル戦であるグリーナム・ステークス(GⅢ、3歳、7ハロン)。出走は僅か5頭ですが、興味津々の一戦です。

注目は2歳時にロイヤル・アスコットでコヴェントリー・ステークスを圧勝したスピード馬キャンフォード・クリフス Canford Cliffs と、同馬をドーヴィルのモルニー賞で破ったアルケイノー Arcano の再対決。
人気は、雪辱が期待されたキャンフォード・クリフスが10対11の1番人気、対するアルケイノーは2対1の2番人気でした。

しかし結果は両馬とも敗れ、優勝を攫ったのは8対1で3番人気に支持されていたディック・ターピン Dick Tarpin でした。
半馬身差2着に本命のキャンフォード・クリフス、何と7馬身離された3着にアルケイノーの順。

実は、勝ったディック・ターピンはキャンフォード・クリフスと同じリチャード・ハノン厩舎の所属馬で、ハノン師としてはワン・ツー・フィニッシュを達成したことになります。
ハノン厩舎は、これでグリーナム・ステークス4勝目。2002年のレッドバック Redback 2007年のメジャー・カドー Major Cadeaux 、2008年のパコ・ボーイ Paco Boy に続く快挙となりました。

この勝利でディック・ターピンの2000ギニーに向けたオッズは12対1が出されましたが、師としては英国ではなく海外のギニーに向かいたい由。あくまでもニューマーケットにはキャンフォード・クリフスで勝負したい意向のようです。
キャンフォード・クリフスは、この日のレースでも直線で左に斜行して内ラチに寄れたのが敗因。真っ直ぐに走っていれば勝っていたはず、というのが師の見解です。実はドーヴィルでもこの癖が出たのが敗因、調教では素直に走っているだけに、暫くは様子見というのが現状のようです。

一方のアルケイノー陣営。これまで無敗の同馬にとって初黒星となり、明らかに失望した様子。今日の走りには生気が感じられませんでした。
これまた様子見ですが、ギニーへの出走を断念する可能性も出てきました。

この結果、キャンフォード・クリフスとアルケイノーという2頭のギニー候補に暗雲が立ちこめ、結果として現在の1番人気に支持されているオブライエン厩舎のセント・ニコラス・アベイ St Nicholas Abbey のオッズが益々高くなってしまったようですね。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください