グッドウッド2010・2日目
グローリアス・グッドウッドの2日目の目玉は開催最大の呼び物であるサセックス・ステークスですが、その前にもう一鞍のパターン・レースであるヴィンテージ・ステークス(GⅡ、2歳、7ハロン)を取り上げましょう。
7頭立て。6対4の1番人気は、2戦2勝のクラウン・プロゼキュター Crown Prosecutor 。ブライアン・ミーハム厩舎、キーレン・ファロン騎乗です。
ところで毎度のことながら、2歳のパターン・レースに強いのはリチャード・ハノン厩舎。このレースにもエース格であるキング・トーラス King Torus とメジャー・アート Major Art の2頭を出走させてきました。
キング・トーラスが2番人気(11対4)に甘んじていたのは、前走ニューマーケットのサパラティヴ・ステークス(GⅡ)に勝って3ポンドのペナルティーを背負っていたからでしょう。
しかし3ポンドは、ハノン厩舎の快進撃を止めるには軽過ぎたようです。ステントリアン Stentorian の逃げを2番手で進んだキング・トーラス、直線であっさり抜け出すと、熾烈な2着争いを尻目に6馬身の大差を付けて圧勝してしまいました。
リチャード・ハノン師にとって、これは記念すべきグローリアス・グッドウッドでの50勝目に当たります。
2着には、逃げて一旦は他馬に交わされながらも差し返したステントリアンが巻き返し、短頭差3着にハノン厩舎の2番手メジャー・アートの順。
本命クラウン・プロゼキュターは道中再三の不利があり、直線で2番手に押し上げる場面もありましたが、出たり入ったりで消耗著しく6着ブービーに敗退してしまいました。
キング・トーラスに騎乗したのはもちろんリチャード・ヒューズ。調教ではあまり走らないタイプだそうですが、本番ではガラリと変わります。
このあとはデューハースト・ステークスを目指すことになりそう。
現時点でハノン厩舎のナンバー・ワンはストロング・スート Strong Suit でしょうが、キング・トーラスも2000ギニー候補の1頭として16対1のオッズに上がってきました。
さて愈々サセックス・ステークス(GⅠ、3歳上、1マイル)。何と言ってもハノン厩舎の強豪キャンフォード・クリフス Canford Cliffs と昨年の覇者でオブライエン軍団のエース、リップ・ヴァン・ウィンクル Rip Van Winkle の対決が見ものです。
8頭の登録がありましたが、ビーコン・ロッジ Beacon Lodge が取り消して7頭立て。4対6の1番人気には3歳の雄キャンフォード・クリフスが選ばれ、3頭出しチーム・オブライエンの筆頭リップ・ヴァン・ウィンクルが9対4の2番人気で続きます。
レースはオブライエンのペースメーカー、インコッパッシング Encompassing が強いペースで引っ張り、スタミナ勝負に持ち込む作戦。
ゴール前あと2ハロン、2番手でマークしたリップ・ヴァン・ウィンクルが抜け出して3馬身ほどのリードを奪いましたが、後方に待機したキャンフォード・クリフスが目の覚めるような末脚で急襲、最後は馬を抑えるほどの余裕を残したままリップ・ヴァン・ウィンクルに首差で快勝しました。
3着は3馬身4分の1遅れて3番人気のプレミオ・ロコ premio Loco 。人気どおりの決着です。
以下4着にオブライエンのベートーヴェン Beethoven 、5着ドリーム・イーター Dream Eater の順。
これがグローリアス・グッドウッドでの51勝目となるハノン師、サセックス・ステークスは2003年のリール・バディー Reel Buddy に続く2勝目。ここでもウルトラ・クールの待機策を見事に決めたリチャード・ヒューズ騎手にとっては初制覇となります。
サセックス・ステークスは、創設から暫くは3歳馬の限定戦でした。1960年に4歳馬に開放され、年齢制限が撤廃されたのは1975年から。
レースの伝統でしょうか、その1975年からは8年連続で3歳馬が制するなど、これは3歳が強いGⅠ戦として知られてきました。キャンフォード・クリフスは、1975年以降では25頭目の3歳馬となります。
今年2着リップ・ヴァン・ウィンクルは3歳時の去年の覇者ですし、一昨年のヘンリーザナヴィゲイター Henrythenavigator から通算して3歳馬は3連覇となります。
まだ誰も達成していないサセックス連覇に挑んだリップ・ヴァン・ウィンクル、今回は騎乗停止中のジョニー・ムルタに替ってライアン・ムーアが騎乗していました。
今年のリップ・ヴァン・ウィンクル、アスコットのクィーン・アンに続いてこれが2戦目ですが、マイルから1マイル半までの守備範囲のある馬で、これからが本番と言えましょう。
キャンフォード・クリフス、シーズン当初は行きたがる癖があって一息勝ち切れませんでしたが、後方待機を学習して末脚が生きるようになり、愛2000ギニー、セント・ジェームス・パレスとGⅠ3連覇。今年のチャンピオン・マイラーに最も近い存在に成長してきました。
ハノン師としては来年も現役に留めたい意向。最終的にはオーナーの判断ですが、現役続行となれば今シーズンはこれで引退、来年の更なる飛躍に備えたい由。
ヨーロッパのマイラー路線は、この後ドーヴィルのジャック・ル・マロワ賞、アスコットのクィーン・エリザベスⅡ世ステークスと続きます。
キャンフォード・クリフスの今後、リップ・ヴァン・ウィンクルの巻き返し、ハノン厩舎のパコ・ボーイ Paco Boy とディック・ターピン Dick Turpin 等々、最も熱い路線になることは間違いないでしょう。
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