愛2000ギニーは英国へ

昨日のカラー競馬場、先ずはアイルランド2000ギニー(GⅠ、3歳、1マイル)の結果から。

枠順発表で紹介したように13頭が出走、9対4で1番人気に支持されたのは英2000ギニーで3着したキャンフォード・クリフス Canford Cliffs でした。

そして結果も順当。中団待機策から末脚を爆発させたキャンフォード・クリフスが、フリー・ジャッジメント Free Judgement に3馬身差を付けて圧勝しています。更に1馬身半差3着にオブライエン(6頭出し)軍団からヴァイカウント・ネルソン Viscount Nelson が入り、以下スタインベック Steinbeck 、エクステンション Xtension の順。

勝ったキャンフォード・クリフスは、2歳時にロイヤル・アスコットでコヴェントリー・ステークスを6馬身で圧勝した時からスピードがあり過ぎと判断され、1マイルのスタミナには疑問が持たれていました。更に血統のスペシャリストもスプリンター系と評価。
先の2000ギニーでも直線で寄れる場面もあり、今回も死角があるとすれば距離との見方が大勢でした。

しかし同馬を管理するリチャード・ハノン師はキャンフォード・クリフスのスタミナには自信を持ち、繰り返し1マイルの適性を強調してきたものです。今回は師の確信を実証した形。

騎乗したリチャード・ヒューズも馬を馬群に沈めてリラックスさせ、最後の瞬発力を温存した騎乗が冴えていました。ニューマーケットとは違って寄れることもなく、直線を真っ直ぐに駆け抜けての快勝です。

5着に入ったエクステンションとの比較で見ても、ニューマーケットでは1馬身差だったものがカラーでは5馬身差に広がっていますから、キャンフォード・クリフス自身の成長も大きいでしょう。

繰り返しになりますが、ハノン厩舎は今年の2000ギニー戦線で英が2・3着、仏が2着、そして愛で優勝。理想的な筋書きになっています。
ハノン師にとって愛2000ギニーは、1987年のドント・フォゲット・ミー Don’t Forget Me 、1990年のチロル Tirol に続いて3勝目。

ハノン厩舎の面白いところは、キャンフォード・クリフスにしてもディック・ターピン Dick Turpin (英仏共に2着)にしても、また古馬のパコ・ボーイ Paco Boy (ロッキンジ・ステークス)にしても、皆7ハロン向きの馬と言われてきたこと。
ハノン師ほどの名伯楽が、“この馬は1マイルは大丈夫” と言えば、その馬はマイラーなのですね。血統論者たちはグーの音も出ません。

キャンフォード・クリフスは、このあとロイヤル・アスコットでセント・ジェームス・パレス・ステークスに向かう予定。ここでマクフィ Makfi との再対決が実現するでしょう。
アスコットにはこの日2着のフリー・ジャッジメント(ボルジャー厩舎)も、シーズン初戦としては好走だったスタインベック(オブライエン厩舎)も出走するそうですから、正に頂上対決が見られそうです。

土曜日のカラーは、他にパターン・レースが二鞍組まれていました。

スプリント路線のグリーンランズ・ステークス(GⅢ、3歳上、6ハロン)は11頭立て。

このレースは歴史的にイギリス勢が強く、今年も前走サースクでの勝ちっ振りの良さが買われて1番人気(10対3)に支持された英国のマーカブ Markab が快勝して伝統を守りました。
2着は2馬身差でスネーフェル Snaefell 、3着には更に3馬身で3歳のアルフレッド・ノーベル Alfred Nobel の順。

勝ったマーカブは、ヘンリー・キャンディー厩舎の7歳馬。騎乗したパット・コスグレーヴは終始好位で競馬し、同馬のシーズン2連勝を引き出しました。次走はロイヤル・アスコットのキングス・スタンド・ステークスの由。

愛2000ギニーから35分後に行われたトライ・エキストリアン・ステークス(GⅢ、4歳上牝、1マイル)。去年まではリッジウッド・パール・ステークスとして行われていたレースです。出走条件に変更はありません。

今年は9頭が出走し、ここでも1番人気(8対15)に推された馬が勝っています。この日のパターン・レースは、3レースとも1番人気が勝つ順当な結果でした。

勝ったのはクラシックに勝ったばかりのハノン厩舎、ヒューズ騎乗のシャムワリ・ロッジ Shamwari Lodge 。2着は1馬身半でインディアナ・ギャル Indiana Gal 、3着は短頭差でアナべルズ・チャーム Annabelle’s Charm の順。

この馬もこれで今シーズン3戦3勝と絶好調です。
愛2000ギニーでは強烈な差し脚で快勝したヒューズ騎手、ここでは全く逆の先行策で、熾烈な2着争いを尻目にまんまと逃げ切ってしまいました。

さてこの日はアイルランドで英国勢が大暴れでしたが、自国イギリスでもパターン・レースが行われています。ヘイドック競馬場のテンプル・ステークス(GⅡ、3歳上、5ハロン)。

1頭取り消して9頭立てでしたが、さすがにGⅡクラスということで錚々たるメンバーが揃いました。3歳上のレースながら、3歳馬の出走はありません。

1番人気は3対1で2頭が分け合いました。今シーズンはニューマーケットで2連勝と調子の戻ったエキアーノ Equiano と、種牡馬生活から現役に復帰してきたキングスゲート・ネイティヴ Kingsgate Native

レースは、この2頭に7対2で3番人気だったボーダーレスコット Borderlescott の三つ巴。例によって最初から飛ばしたエキアーノを、ゴールまであと100ヤードの地点で半馬身差交わしたキングスゲート・ネイティヴが優勝。4分の3馬身3着にボーダーレスコットと順調に納まりました。
去年の勝馬ルック・ビジー Look Busy も連覇を狙いましたが、今回は6着と不発。

勝ったキングスゲート・ネイティヴは、2歳時にナンソープ・ステークスで古馬を一蹴したあと現オーナーであるチーヴリ・パーク・スタッドが種牡馬目的で購入した経緯のある馬。
3歳で競走生活を終えて種馬になりましたが、最初の20頭が不受胎だったことが判明。4歳シーズンの途中から現役に戻っていました。
そして去年の12月に去勢、テンプル・ステークスはシーズン初戦であり、「せん馬」としての初レースでもあります。

同馬を管理するのはサー・マイケル・スタウト師。鞍上はもちろんチャンピオン・ジョッキーのライアン・ムーアです。
80年代は多くのスプリンターを擁したスタウト厩舎としては、久し振りのスプリンターの大物。今回の復活劇は、「スタウト再生工場」の異名をとるスタウト翁の面目躍如と言えましょう。

このあとはロイヤル・アスコット。キングズ・スタンド・ステークスかゴールデン・ジュビリーを狙うでしょう。ひょっとすると中3日で両方のGⅠ戦を使う可能性もあり、か。

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