ヴェーガ、二冠!

エプサムでムーア騎手のクラシック・ダブルに沸いた翌日の日曜日、シャンティーからもダブル達成のニュースが飛び込んできました。

ジョッケ=クラブ賞(GⅠ、3歳、2100メートル)。フランス・ダービーとして知られるレースですが、2005年から距離が短縮され、イギリスと同じ意味合いでは比較できません。
それでもクラシックはクラシック、エプサムの後を受けていくつかの注目点がありました。

一つは二日間でオークス/ダービー・ダブルを達成したライアン・ムーアが、3日連続クラシックの偉業に挑んだこと。3番枠を引いたアイス・ブルー Ice Blue は13対2の3番人気です。

もう一つは日英ダービーを制したキングズ・ベスト King’s Best の産駒。1番枠を引いたシモン・ド・モンフォール Simon De Montfort がその馬ですが、残念ながら同馬は直前に出走を取り消してしまいました。レース前、シャンティー地方に雷を伴った豪雨があったためにザルー二調教師が決定したのですが、これは残念なことでした。

登録した23頭のうち、上記のように1頭が取り消して22頭立て。この頭数は、距離が2100メートルに変更されて以降では最も多いメンバーとなります。ここ3年は内枠から勝馬が出ており、外枠不利は否めないところでしょう。

1番人気(3対1)に推されたのは、ダンテ・ステークスで後にダービーを勝つことになるワークフォース Workforce を破ったオブライエン/ムルタ・コンビのケープ・ブランコ Cape Blanco 。2番人気(48対10)にはトライアルを圧勝して大物という評判のプランテール Planteur が挙がっていました。ケープ・ブランコは7枠、プランテールは10枠と、枠の問題は無さそう。

レースはヴィヴル・リーブル Vivre Libre の逃げで始まり、不利な外枠(20番枠)から好スタートを切ったロぺ・デ・ヴェーガ Lope De Vega がサッと内に切れ込んで好位をキープします。
本命ケープ・ブランコは8番手、フランスの期待プランテールは3番手追走という展開。

直線、満を持していたロぺ・デ・ヴェーガが仕掛けると、反応は一瞬にして一方的でした。騎乗していたマクシム・グィヨンも後続が何も追ってこないのでビックリしたほど。

3番手を追走したプランテールが3馬身離されて2着。更に4分の3馬身差3着に同じく先行したパーン・ペルデュ Pain Perdu が入り、以下ベーカバッド Behkabad 4着、オブライエンの人気の無い方のヴァイカウント・ネルソン Viscount Nelson が5着の順。

本命ケープ・ブランコは、直線で外に出す時に他馬と接触して伸びず10着惨敗。ムーア騎乗のアイス・ブルーは4番手を進み、一旦は3番手に上がるもそこまで、結果7着に沈みました。
結果論ですが、上位3頭はいずれも先行した馬。枠順よりも道中の位置取りが明暗を分けた形になったようです。

ロぺ・デ・ヴェーガのオッズは102対10。2冠の権利がありましたが、血統面と枠順が嫌われて人気を落としていたのかも知れませんね。

勝ったロぺ・デ・ヴェーガは言うまでもなく仏2000ギニーも勝って二冠達成。管理するアンドレ・ファーブル師にとって仏ダービーは、1997年のパントル・セレーブル Peintre Celebre に続いて2勝目。
鞍上マクシム・グィヨンは売り出し中の若手、もちろん仏ダービーは初制覇で、クラシックも同馬の仏2000ギニーに続いて2勝目となります。

仏2000ギニーに勝った時点では、ロぺ・デ・ヴェーガのスタミナについて、ファーブル師は問題なし、グィヨンはやや疑問という見解でした(クラシック馬のプロフィール参照)。
しかし実際はファーブル師も半信半疑だったようで、この日の圧勝は意外だった様子。ロぺ・デ・ヴェーガはレースではエキサイトするタイプで、血統よりもむしろ心配はそこにあったようです。

ロぺ・デ・ヴェーガの今後についてファーブル師は、馬の気性から海外遠征は避けたい由。4歳も現役に留める予定なので、古馬になって落ち着いてからイギリス遠征を計画したいとのコメントを発表しています。

ロぺ・デ・ヴェーガのオーナー、ドイツ人のディートリッヒ・フォン・ベティヒャー氏は、ハリケーン・ラン Hurricane Run で仏ダービーに頭差で惜敗したことがあります。そのとき勝ったのがロぺ・デ・ヴェーガの父シャマーダル Shamardal 。何とも皮肉な結果になった仏ダービーでした。
(シャマーダルで仏ダービーを制したデットーリ騎手、今回は3着でしたね)

さてフランス・ダービー当日は、他にもパターン・レースが4鞍も組まれていました。長くなりますので簡単にレポートしていきましょう。レースの行われた順に取り上げます。

ロヨーモン賞(GⅢ、3歳牝、2400メートル)。クラシック・ジェネレーション、3歳牝馬のステイヤーを探すレースです。

9頭が出走し、9対5の1番人気はパール・アウェイ Pearl Away 。そのパール・ウェイが逃げ粘るところを最後方から大外を回って差し切ったのがレディーズ・パース Lady’s Purse でした。
パール・アウェイは4分の3馬身捉えられて2着、更に2馬身半差3着にネヴァー・フォーゲット Never Forget の順。

勝馬のオッズは9対1、調教師はアンリ=アレックス・パンタルという方。騎手は、このあと仏ダービーを制することになるマクシム・グィヨンでした。馬主はシェイク・モハメド殿下。

レディーズ・パースは2歳時には1戦未勝利でしたが、3歳になってから3連勝。初めてのパターン・レース挑戦での優勝です。いわゆる上がり馬。

ダービーの前に行われたサンドリンガム賞(GⅡ、3歳牝、1600メートル)。仏1000ギニーの再戦という性格のレースで、11頭立て。

人気は仏1000ギニーを先頭でゴールしながら6着に降着されたリリサイド Liliside で9対5。
しかし勝ったのは、逃げるリクシロヴァ Lixirova を3番手でマークしていたジョアンナ Joanna (14対5)。2着以下は混戦で、ドイツ1000ギニーに勝ったカリ Kali が2馬身差。以下、短頭差3着にエヴァポレーション Evaporation 、ハナ差で4着にカーティカ Kartica の順。
本命に期待されたリリサイドは、勝馬をマークしながらも内ラチで前が開かず5着敗退に終わりました。

ジョアンナは鞍上のスミオン騎手が左右を見回すほどの余裕ある楽勝。シーズン初戦でクラシック2冠のスペシャル・デューティー Special Duty を破っていますから(アンプルーダンス賞)、実に堅実、仏1000ギニーは繰り上がり3着していた馬です。

管理するジャン=クロード・ルジェ調教師は、去年のホームバウンド Homebound に続いてサンドリンガム2連覇。スミオンもこのレース2勝目(2002年のスプリング・スター Spring Star)です。

続いてはダービーの後で行われたシャンティー大賞典(GⅡ、4歳上、2400メートル)。古馬によるクラシック距離の一戦です。

出走馬は5頭。1番人気は2連勝中のプーヴォアール・アブソリュー Pouvoir Absolu でしたが、勝ったのは58対10に支持されたアライド・パワーズ Allied Powers 。英国のマイケル・ベル厩舎が送り込んできた5歳馬です。

2着は1馬身差でドイツのティモス Timos 、ハナ差3着に本命プーヴォアール・アブソリューの順。

レースは先ずティモス、続いてロアタン Roatan が先行し、勝ったアライド・パワーズは最後方からの追い込み。前走(デドーヴィル賞でも優勝)と同じイオリッツ・メンディザヴァル騎手の、同馬を知り尽くした好騎乗が光りました。

マイケル・ベル師にとってこの勝利は記念の1000勝目。フランスに遠征する機会は少ないのですが、アライド・パワーズは師に最初のロンシャンでの勝利、シャンティーでの初勝利をプレゼントした忘れられない馬になるでしょう。

アライド・パワーズは、このあとサン=クルー大賞典かアスコットのハードウィック・ステークスを目指す由。

最後はスプリンターによるグロ=シェーヌ賞(GⅡ、3歳上、1000メートル)。

10頭が出走し、イーヴンの圧倒的1番人気に推されたのは2008年の勝馬マルシャン・ドール Marchand D’or 。

しかし本命馬はここでも敗れ、優勝は68対10のプラネット・ファイヴ Planet Five でした。2着は短首差接戦で3歳牝馬のピカディリー・フィリー Piccadilly Filly が入り、マルシャン・ドールは半馬身届かず3着。

逃げて粘り、ゴール寸前で勝を逸したピカディリー・フィリーは、イギリスから挑戦してきたエドワード・クレイトン師の管理馬。惜しい所で金星を逃しました。

マルシャン・ドールは、今シーズンからデルザングレ厩舎に転じ、復調の兆しが見えたばかり。今回も定位置の最後方からの末脚に賭けましたが、最後の300ヤードで凄い脚を使ったものの、時既に遅しの感。次に期待しましょう。

勝ったプラネット・ファイヴは、6番手の内から抜け出しての優勝。パターン・レース2度目の挑戦での勝利です。鞍上はクリストフ・ルメール。

同馬を管理するパスカル・ベイリー師にとって、この優勝は特別な感慨があります。何故ならプラネット・ファイヴは、師が調教した名牝シックス・パーフェクションズ Six Perfections の初仔(牡馬)だから。
シックス・パーフェクションズは英愛1000ギニーで共に2着したあと、ジャック・ル・マロワ賞とブリーダーズ・カップ・マイルを制した名マイラーでした。

シックス・パーフェクションズの血をひくプラネット・ファイヴ、チャンピオン・スプリンターの座を目指して、このあとはドーヴィルのモーリス・ド・ギースト賞を目指す予定だそうです。

以上、日曜日のシャンティー競馬場でした。

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