強者弱者(117)


 雨歇みて暑気遽に加はりし日の夕、市に蛍を見る。蛍は年によりて、外壕、内壕に夥しく生ずることあり。郊外といはず、熱閙のただなかにこの光を見る。東京は流石に新しく打ち建てられし都なり。
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「歇む」は、「やむ」。現在は「止む」を使うのが普通ですが、この方が自然に「やむ」感じがしませんか。
「熱閙」は、「ねっとう」と読み、人が混み合って騒がしい様を言います。
100年前の東京には蛍は珍しくありませんでした。拙宅の近所にもかつて小川が流れていて、古老に聞くと、夏は蛍がたくさんいた由。現在は小川そのものが暗渠になってしまいました。
蒸し暑い夜こそ蛍。本来湿地の多い東京は、蛍の絶好の生息地だったことが判ります。

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