強者弱者(116)

入梅

 入梅、陰雨連日、人の頭脳を圧すること甚し。たまたま晴れて暑気遽に上昇したる日など、殆ど堪え難き心地す。一年の中にて最も不愉快なる日を挙げんか二月の初旬と六月の中旬とを推すべし。
 卯の花咲く、青梅街道、甲州街道など籬に沿うて至る処に此花を見るべし。雨の間あひ、暫しと立ち出づる夕暗のうち、しらしらと咲き出でたるに、蛾の幾つとなく慕ひよれるなかなかに風情あり。

          **********

今年は梅雨入りが遅れているようですが、一年でも一番嫌な季節がやってきました。

卯の花に蛾が集まる情景は、最早東京では見られなくなってしまいました。ほとんどの都会人は蛾を嫌がりますが、この昆虫ほど都市化の影響をモロに被っている生物はいないのじゃないでしょうか。

蛾は蝶と違って情報源が月。近代の都会は照明が発達したお陰で、蛾にとって大切な月や星の存在が覆い隠されてしまいました。残念なことです。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください