2010クラシック馬のプロフィール(6)

今回はオークス馬、スノー・フェアリーを取り上げます。2歳時の評価はそれほど高くなかった牝馬で、レースホースにも簡単なプロフィールしか掲載されていません。彼方此方調べましたが、あるいは漏れがあるかも知れませんので、最初にお断りしておきます。
スノー・フェアリー Snow Fairy は、父インティカブ Intikhab 、母ウッドランド・ドリーム Woodland Dream 、母の父チャーンウッド・フォレスト Charnwood Forest という血統。
インティカブもチャーンウッド・フォレストもクイーン・アン・ステークス(ロイヤル・アスコットの1マイル戦)の勝馬ですから、一見するとマイラーという印象です。
しかし血統の面白さは牝系を詳しく検討すること。そこからスノー・フェアリーがオークスに勝つ要因を探そう、と思います。
スノー・フェアリーの母ウッドランド・ドリームはアイルランドで走った馬で、詳しい成績は手元にありませんが、7ハロンでの勝鞍があるようです。スノー・フェアリーは、その初仔。
2代母ファンタジー・ガール Fantasy Girl (1994年生まれ、父マージュ Marju)も競走馬としては凡庸で、9戦して未勝利でした。
ウッドランド・ドリームは、彼女の4番仔に当たります。ファンタジー・ガールの産駒は何故か牝馬が少なく、彼女の娘は現在までのところウッドランド・ドリームの他にもう1頭を数えるだけのようです。
ファンタジー・ガールの産駒では、2000年生まれのビッグ・バド・ボブ Big Bad Bob (父ボブ・バック Bob Back)が最も走っていて、22戦8勝で種牡馬になりました。
ビッグ・バド・ボブはイギリスで1マイルのリステッド戦(オータム・ステークス)、フランスでもリステッド戦(2000メートルのリッジウェイ賞)に勝ち、ドイツではフュルステンプルグ・レンネン(GⅢ、2000メートル)に勝ってパターン・レース馬となった他、ダービー・トライアルの一つであるディー・ステークス2着という実績もあります。
このときディー・ステークスに勝ったクリス・キン Kris Kin が後にダービー馬になりますが、ビッグ・バド・ボブはダービーには出走していません。
ビッグ・バド・ボブの父ボブ・バックは、インティカブと同じロベルト Roberto 系ですから、スノー・フェアリーとは血統的に極めて近い関係にあると申せましょう。
スノー・フェアリーの3代母パーシャン・ファンタジー Persian Fantasy (1989年生まれ、父パーシャン・ボールド persian Bold)は、11戦2勝。リステッド戦で2着に入ったことのある程度の成績でした。
ファンタジー・ガールは、彼女の初仔に当たります。
パーシャン・ファンタジーの産駒は、ファンタジー・ガールとは逆で牝馬が多いのですが、私が調べた限りでは特に優れた競走馬も繁殖牝馬も出ていないようです。ただ未だ馬が若いので、活躍はこれからと言えるでしょう。
この牝系を更に遡ると、4代母ゲイ・ファンタジー Gay Fantasy からはトルコでGレース勝馬となったラッキー・ゲスト Lucky Guest やチェスター・カップ(2マイル以上の長距離レース)に勝ったファンタジー・ヒル Fantasy Hill が出ており、そこそこのステイヤーを生んできたファミリーであることが判ってきます。
決定的なのはスノー・フェアリーの5代母に当たるミス・アップワード Miss Upward 。
彼女の娘ミス・ペタード Miss Petard はリブルスデール・ステークス(GⅡ、1マイル半)に勝った名牝で、その娘レジュヴネイト Rejuvenate も長距離戦のミュジドラ・ステークスとパーク・ヒル・ステークスに勝っていますし、別の娘キス Kiss からは同じくパーク・ヒルを制したケイシー Casey が出ているという具合。
またミス・アップワードの別の娘シーア・オーダシティー Sheer Audacity は、1999年のダービー馬オース Oath の母でもあります。
屋上屋を重ねれば、スノー・フェアリーの9代母(カレッタ Caretta)は、凱旋門賞、ヴェルメイユ賞、仏1000ギニーに勝った名馬スリー・トロイカス Three Troikas の6代母でもあるのですね。
以上、スノー・フェアリーは、直近にこそAクラスの馬は見当たりませんが、長年に亘ってクラシック距離、長距離での活躍馬を輩出してきたファミリーに属していることが判ります。
ファミリー・ナンバーは1-K 。
序でに日本との繋がりを見てみましょうか。
5代母ミス・アップワードから出たケイシーがパーク・ヒル・ステークスに勝ったことを紹介しましたが、このケイシーが後に日本で繁殖牝馬となり、京都新聞杯と京阪杯に勝ったテンザンセイザを出しているのです。
更に、キスの別の娘ゲイアティー・ガール Gaiety Girl も日本に輸入されてポンテローザなどを出していることも付け加えておきましょう。
最後にスノー・フェアリーの父インティカブについて。
インティカブ自身はクィーン・アン・ステークス(1マイル)を圧勝して種牡馬になりましたが、産駒は必ずしもマイラーとは限りません。
スノー・フェアリーが登場するまでの代表産駒はマイラーのレッド・エイヴィー Red Evie (ロッキンジ・ステークス)であったことは事実ですが、長距離のハンデ戦に勝っているレグ・スピンナー Leg Spinner (セザレウィッチ・ハンデ)、ムダーウィン Mudawin (イボア・ハンデ)なども出しているのですね。
ことクラシックに関しても、仏1000ギニー2着でスプリンターだったトゥーピー Toupie がいる一方で、仏オークス3着のパイタ Paita も出しています。
配合する牝馬によって、その産駒が得意とする距離は多様となるサイヤーの一例でしょう。

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