2010クラシック馬のプロフィール(8)

ロイヤル・アスコットが忙しくて遅れていましたが、先週行われたフランス・オークス馬のプロフィールを紹介しましょう。ディアーヌ賞の勝馬、サラフィナです。

サラフィナ Sarafina は、父リフューズ・トゥー・べンド Refuse To Bend 、母サナリヤ Sanariya 、母の父ダルシャーン Darshaan という血統。
オーナーであるアガ・カーンが大切に育てている牝系の一つですね。

アガ・カーンの持ち馬は、牝馬に優れたものが多く目立ちます。一般的な競馬ファンの目には、そろそろ牡馬の大物を出して欲しいと映るかも知れませんが、当のアガ・カーンはそうした意見には目もくれません。
サラブレッドの生産者として、牡馬よりも牝馬の方が何倍も大切だということを熟知しているからですね。たとえ優れた牡馬を競売で手放しても、牝馬だけは大切に自分の牧場の財産として次に繋げていく。それこそが、この世界で成功する秘訣だろうと思います。

さてサラフィナの母であるサナリヤ(1996年生まれ)は、もちろんアガ・カーンの生産馬で氏の勝負服で走った馬。競走歴は3歳のみで、5戦して2着1回という平凡な記録しか残していません。一度ある2着は、イギリスのヤーマス競馬場で行われた1マイル2ハロンの未勝利戦でのもの。

繁殖に上がったサナリヤの成績は次の通りです。

2001年 サナダ Sanada 牝・鹿毛(父プリオロ Priolo) 勝馬
2002年 サナゴラ Sanagora 牝・鹿毛(父ムジャディル Mujadil) 勝馬
2003年 サナヤ Sanaya 牝・鹿毛(父バラシア Barathea) 14戦4勝 ドバイのリステッド勝馬、サン=タラリ賞2着、レゼルヴォアール賞・ペネロープ賞・クレオパトラ賞各2着、フィユドレール賞3着
2004年 不受胎(ナイト・シフト Night Shift)
2005年 サンジダ Sanjida 牝・鹿毛(父ポリッシュ・プレセデント Polish Precedent) 勝馬 ペネロープ賞・クレオパトラ賞各3着
2006年 サナビラ Sanabyra 牝・青毛(父カヤージ Kahyasi) 未出走
2007年 サラフィナ 2010年の仏オークス馬
2008年 サンダジール Sandagir 牡(父ドクター・フォン Dr Fong) 現時点で未出走

以上、サラフィナはサナリヤの6番仔に当たります。6年連続で牝馬というのが特徴的な点で、姉のサナヤはサラフィナが勝ったサン=タラリ賞(GⅠ)で2着していますし、サンジダも2000メートル前後のオークス・トライアルで入賞実績があります。牝馬のクラシックに縁の深いファミリーであると申せましょう。

サラフィナの2代母はサナミア Sanamia (1987年生まれ、父トップ・ヴィル Top Ville)。彼女もまたアガ・カーンの生産馬で、勝馬でありリステッド戦での入着実績もあるそうです。(詳細は不明)

サナミアの産駒は、サラフィナの他には現在までのところ目立った活躍馬も繁殖成績も見出せません。まだまだこれからでしょうか。

3代母サンタリナ Santalina (1974年生まれ、父レルコ Relco)は、フランスで2400メートルのリステッド戦(ジュベール賞)に勝った馬ですが、この馬はアガ・カーンの持ち馬ではありません。
記録が手に入らないので断言はできませんが、アガ・カーンは彼女の娘サナミアを購入して、自身の基礎牝馬の1頭に加えたのでしょう。

更に4代母のスルスム・コルダ Sursum Corda にまで遡ると、彼女の1978年の娘サナタ Sanata はオーストラリアのGⅠ馬ニュー・ポート New Port の祖母になっていますし、1981年の娘スレーヤ Sureya からはトルコの2000ギニーに勝ったトポール Topor という馬も出ています。

しかし何よりスルスム・コルダの1982年生まれの牡馬シュメール Sumayr がパリ大賞典とドイツのオイロパ賞に勝ち、その年の凱旋門賞で4着したことを大書すべきでしょう。

サラフィナの5代母アド・アルティオラ Ad Altiora は、仏1000ギニー馬アルティッシマ Altissima を出していますし、この直系からはブリーダーズ・カップのアルカンギュー Arcangues を筆頭に、仏セントレジャー馬アジャン・ドゥーブル Agent Double 、仏ダービー2着のエア・ド・クール Air de Cour 、アコマ Acoma 、アシュモア Ashmore などの優れた競走馬が輩出しています。

アガ・カーンが目を付けたのも、恐らくクラシックに縁の深いフランス屈指のファミリーに着目したからこそ。今年の仏オークスを制したサラフィナも、次世代のアガ・カーン・ファミリーを担う1頭として大切に手元に置かれていくでしょう。

ファミリー・ナンバーは8-f 。

折角の機会ですから、サラフィナの父リフューズ・トゥー・べンドについても若干。

2000年生まれの同馬は、アイルランド産のサドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells 産駒。2歳時にナショナル・ステークス、3歳時に2000ギニー、4歳時にクィーン・アン・ステークスとエクリプス・ステークスと、合計4つのGⅠ戦に勝ったクラシック馬で、1マイルから2000メートルにかけて活躍しましたが、成績にはムラが目立ちました。
(無敗で臨んだダービーは大本命になりながら、13着に惨敗)

種牡馬として今年は3年目ですが、現時点ではサラフィナが最高傑作と言えましょう。他ではノーブレス・ステークスを2連覇したグレース・オマリー Grace O’Malley とドイツ・1000ギニーで3着したネオン・ライト Neon Light が目立つ程度です。

サラフィナのクラシック制覇で注目を集めることができるか・・・、というところでしょうか。

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