２０１０クラシック馬のプロフィール(２)
続いて１０００ギニーに勝ったスペシャル・デューティー Special Duty の血統紹介です。
この牝系は主にアメリカで繁栄しており、これに若干のフランス風味が添えられていると思えば良いでしょう。最近ではイギリスにはあまり馴染のない血統ですね。
父はヘネシー Hennessy 、母はクエスト・トゥー・ピーク Quest To Peak 、母の父がディスタント・ヴュー Distant View という血統。
父のヘネシーについて若干触れると、この馬は早熟でスピード馬。スペシャル・デューティーが生まれる前年の２００６年に死亡しています。
ケンタッキーだけでなく、オーストラリアやアルゼンチンでも供用され、一時期は日本でも種牡馬生活を送っていましたからご存じの方も多いでしょう。日本での代表産駒はフェブラリー・ステークス(ＧⅠ)に勝ったサンライズバッカスでしょうか。
自身２歳時しか競走歴がなく、サイヤーとしてもスピードが売り物の血統と言えるでしょうね。
さて母クエスト・トゥー・ピークは３歳時にアメリカで一度だけレースに使われ、着外に終わった馬。繁殖に上がって最初の産駒がスペシャル・デューティーです。
まだこれからという繁殖成績であるところは、２０００ギニーのマクフィと良く似ていますね。
さて２代母はヴィヴィアーナ Viviana といい、父はヌレエフ Nureyev の１９９０年産。
ヴィヴィアーナはフランスで走った馬で、２０００メートルのリステッド戦に２勝したあとプシケ賞(ＧⅢ、２０００メートル)で２着に入った実績があります。
しかしヴィヴィアーナの名前が世界的になったのは、アメリカで繁殖に上がってから。
彼女の１９９８年生まれの牝馬テーツ・クリーク Tates Creek (父・ラヒー Rahy)が、９ハロンのＧⅠ戦ゲイムリー・ハンデキャップと芝コースのイエロー・リボン・ステークス(１マイル４分の１)に勝って注目されます。
極めつけはその半妹に当たるサイトシーク Sightseek (１９９９年生まれの牝馬、父・ディスタント・ヴュー Distant View)で、彼女は実にアメリカのＧⅠ戦に７勝します。
内訳は、ベルダム・ステークス２回、オグデン・フィップス・ハンデ２回、ディスタッフ・ステークス、ゴー・フォー・ワンド・ハンデ、ラフィアン・ハンデと、７ハロンから９ハロンのグレード・レースです。
スペシャル・デューティーの母クエスト・トゥー・ピークは競走成績こそ貧弱なものの、血統的には名牝サイトシークの全妹(父も母も同じ)という良血馬なのですね。
更に３代母ニジンスキー・スター(１９８０年生まれ、父・ニジンスキー Nijinsky)は、未出走馬ながら娘のウイルスター Willstar がフランスのＧⅠラ・フォレ賞に勝ったエトワール・モンタンテ Etoile Montante の母となって新たな系統を伸ばしつつあります。
そして４代母は、アメリカの競馬ファンのみならず世界の競馬人が名前を忘れないクリス・エヴァート Chris Evert なのですね。
もちろん往年の名テニス・プレイヤーの名を冠した同馬は、テニス界の女王の名に恥じない成績を残し、エイコーン・ステークス、マザー・グース・ステークス、コーチング・クラブ・アメリカン・オークスの所謂ニューヨーク牝馬三冠を制し、その年にはライヴァルであるミス・マスケット Miss Musket とのマッチレースも行われたほどでした。(ハリウッド・スペシャルというタイトルで行われ、クリス・エヴァートが５０馬身差で勝っています)
クリス・エヴァートは１９８８年にアメリカの競馬殿堂入りを果たし、競馬史に燦然と輝く名馬として賞賛されていることは、多少とも競馬を齧ったことがあるファンはご存じのはず。
因みに、クリス・エヴァートと同時代のアメリカ三冠馬セクレタリアト Secretariat との間に生まれた仔馬はシックス・クラウンズ Six Crowns と名付けられました。シックス・クラウンズは残念ながら無冠に終わりましたが、それでも５勝、華やかな血統が期待されて種牡馬となりました。
母クリス・エヴァートと息子のシックス・クラウンズは供用されていたスリー・チムニーズ・ファームの墓地で並んで埋葬されていますから、競馬ファンは一度訪れてみるのも一興ではないでしょうか。
残念ながらこの牝系は未だ日本には深い繋がりが無いようですが、スペシャル・デューティーがニューマーケットに旗を立てたように、いずれ日本でも知られる時が来るかもしれません。
ファミリー・ナンバーは、２３-b 。
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