強者弱者(121)
栗の花
梅雨期の空にふさはしきは栗の花なり。たまたま五月雨の晴れて薄暑身にせまる日、渋谷、目黒あたりの岡に此花の白く碧空に浮き出でたる、色彩まづしけれどまた自らなる趣あり。或る時、栗林を穿つ郊外の道、柴戸のほとりに散りしきたる栗の花を掃き集むる童をとらへて、これを何にするぞと問へば、蚊いぶしにすなりと答へき。
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私にとっては非常に興味深い文章です。目黒は栗飯の名所だったという話はシリーズ()にも登場しますが、渋谷の岡にも栗林が広がっていたのですね。
栗の花と言えば、我々蝶好きにとってはゼフィルスが吸蜜に訪れる花として見逃せません。特にアカシジミ、ウラナミアカシジミが好むようですが、ミドリシジミ、オオミドリシジミ、ミズイロオナガシジミもやってきます。
恐らく100年前の目黒や渋谷には多数のゼフィルスが見られたことでしょう。
更に驚きは、栗の花を集めて蚊いぶしにするという行です。東京だけの習慣なのか全国的に知られていたことなのか、生活の知恵として現在でも受け継がれている地方があるのでしょうか。
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