ロイヤル・アスコット2010・初日

今週はロイヤル・アスコット。火曜日から土曜日までの5日間、連日目が離せない熱戦をレポートしていきましょう。

先ず初日の6レース、いきなり第1レースから今開催最大の注目レースで開幕しました。
クィーン・アン・ステークス(GⅠ、4歳上、1マイル)は、直線の1マイル・コースで行われる古馬マイラーのチャンピオン決定戦。それに相応しく3強対決が最大の見どころです。

11対8の1番人気はフランスの、というより世界のチャンピオン牝馬ゴールディコヴァ Goldikova 。前走はロンシャンのトラックレコードを更新して状態はピークにあります。
対するは前走ロッキンジ・ステークスを圧勝し、ハノン師に生涯最良の馬と言わしめたパコ・ボーイ Paco Boy が11対4の2番人気。
更に前年のチャンピオン・マイラー、リップ・ヴァン・ウィンクル Rip Van Winkle がシーズン初登場。実力では人気2頭に負けないものの、休養明けが死角と看做されて4対1の3番人気です。オブライエン師もこの点は認めていました。

10頭立て、飛びだした伏兵カーミング・インフルエンス Calming Influence の逃げをムルタ騎乗のリップ・ヴァン・ウィンクルが2番手で追走する展開。
ゴールディコヴァに騎乗するペリエは、リップ・ヴァン・ウィンクルをピタリとマーク。パコ・ボーイのヒューズ騎手は同馬の定位置である後方待機策、前が開くチャンスをクールに待ちます。

リップ・ヴァン・ウィンクルが仕掛けて一旦は先頭に立ちましたが、ゴールディコヴァが早めに抜け出し、後続との差を広げます。
漸く空いた馬群からパコ・ボーイが突き抜け、ゴールディコヴァを首差まで追い詰めたところがゴール。この2頭から3馬身4分の1遅れて3着にドリーム・イーター Dream Eater が食い込みました。
リップ・ヴァン・ウィンクルは久々が堪えたか、6着敗退。パイプドリーマー Pipedreamer が競走を中止しています。

ゴールディコヴァは、これが9勝目のGⅠ制覇。フレディー・ヘッド調教師は、自身が騎乗してGⅠに10勝したミエスク Miesque よりもゴールディコヴァが上と絶賛しています。

フランス勢がクィーン・アンに勝ったのは4年前のヴァリジール Valixir (ファーブル厩舎)以来のこと。ゴールディコヴァは、このあとジャック・ル・マロワ賞からブリーダーズ・カップ3連覇を目指す計画です。

騎乗したオリヴィエ・ペリエにとってクィーン・アンは初勝利ですが、ロイヤル・アスコットは14勝目となります。
いつもはゲート入りを嫌うゴールディコヴァですが、今日は全く問題無しということで、ペリエも大満足の様子でした。

2着のパコ・ボーイ陣営も結果に失望はしていません。勝った馬の強さを考えれば、負けても失うもの無し。去年のクィーン・アンを同馬で制したリチャード・ハノン師も、今日のレースがパコ・ボーイのベストレースと評価しています。

第2レースはキングズ・スタンド・ステークス(GⅠ、4歳上、5ハロン)。これも直線コースで行われ、グローバル・スプリント・チャレンジの英国編でもあります。

12頭が出走してきましたが、5対2の1番人気は前走テンプル・ステークスに勝ったキングスゲート・ネイティヴ Kingsgate Native 。グローバル・スプリント・シリーズのオーストラリア編に勝って豪州から挑戦してきたニッコーニ Nicconi が10対3の2番人気。

しかし人気の2頭は不発、キングスゲート・ネーティヴは他馬との接触が響いたのか全く伸びず、6着敗退。一方のニッコーニもスタートを失敗して後手を踏み、内を伸びたものの4着が精一杯でした。

勝ったのは、2008年にこのレースを勝ったエキアーノ Equiano 、9対2の3番人気でした。
スタートはやや遅れ気味でしたが、直ぐに遅れを取り戻して先頭に立ち、そのまま逃げ切る快勝です。
2着は1馬身半差でマーカブ Markab 、3着には首差でボーダーレスコット Borderlescott が続きました。

勝ったエキアーノ、一昨年はスペインからの挑戦でしたが、今年はバリー・ヒルズ厩舎所属での復活劇。去年は体調が芳しくなく不振続きでしたが、今年は体調も戻って4戦3勝。本来のスピードを取り戻せばGⅠクラスの実力馬であることを見せ付けました。
鞍上はマイケル・ヒルズ騎手。

なお、敗れたニッコーニはそのまま引退する意向の由。管理するデーヴィッド・ヘイズ師によれば、種牡馬としての期待が大きいとのこと。

第3レースは3歳のマイル・チャンピオン決定戦となるセント・ジェームス・パレス・ステークス(GⅠ、3歳、1マイル)。
1マイルと言っても、クィーン・アンとは違ってカーヴのあるラウンド・コースを使って行われます。

9頭立て。今年の2000ギニーを戦ったメンバーに人気が集まります。即ち、英2000ギニーの覇者マクフィ Makfi と愛2000ギニー馬キャンフォード・クリフス Canfprd Cliffs が譲らず11対4のジョイント・フェイヴァリット。英仏2000ギニーで共に2着したディック・ターピン Dick Turpin とフランスから遠征してきたシユーニ Siyouni が並んで5対1の3番人気。

オブライエン厩舎は3頭出し。主力スタインベック Steinbeck のペースメーカーを務めるはずのインコンパッシング Encompassing がスタートを失敗して出遅れ。止む無くスタインベックがペースを作ります。

しかしここではキャンフォード・クリフスの実力が上。最後方から最後の1ハロンで抜け出してクラシック馬の貫禄を見せ付けました。
2着は1馬身差で又してもディック・ターピンが続き、4分の3馬身差3着には2000ギニー着外だったハーツ・オブ・ファイア Hearts Of Fire が食い込んで厩舎の高評価を証明しました。
人気の一角マクフィは、直線に向いてからの伸びが全く見られず7着敗退。逆に最後で猛烈に追い込み、4着に入ったシユーニの末脚が目立ちましたね。

キャンフォード・クリフスとディック・ターピンは、共にリチャード・ハノン厩舎ですからワン・ツー・フィニッシュ。2000ギニーでの着順を逆転した結果になっています。
勝馬の鞍上は、もちろん主戦のリチャード・ヒューズ。ディック・ターピンにはライアン・ムーアが跨っていました。

第4レースもパターン・レースで、2歳馬によるコヴェントリー・ステークス(GⅡ、2歳、6ハロン)。イギリスではシーズン最初の2歳馬によるパターン・レースです。

当初登録から2頭が取り消して13頭立て。出走馬の内5頭が無敗馬で、1番人気も無敗の1頭ストロング・スート Strong Suite で15対8。3対1の2番人気も1戦1勝のエルザーム Elzaam 、3番人気(9対2)も2戦無敗のゾッファニー Zoffony と続きます。

多頭数ながら結果は順当。本命のストロング・スートが、最後の一歩で2番人気のエルザームをハナ差捉えて優勝。3着がやや狂って2馬身半差でロワイアー Roayh が逃げ残り。ゾッファニーは平均ペースのまま6着に終わりました。

勝ったストロング・スートもリチャード・ハノン/リチャード・ヒューズのコンビで、第3レースのセント・ジェームス・パレスに次いでダブル達成。
このコンビは去年のコヴェントリーをキャンフォード・クリフスで制していますから、2連覇ということになります。
同コンビは去年のロイヤル・アスコット初日もダブル(パコ・ボーイのクイーン・アンとコヴェントリー)でスタートしていますから、縁起の良い開催でしょう。

ハノン厩舎と言えば元々2歳戦に強いことで知られていますが、何故か一昨年まではコヴェントリー・ステークスに縁が薄かったものです(優賞は1989年のロック・シティー Rock City だけ)。
ところが去年と今年で連覇、いままでのことが嘘のような活躍ですな。

勝ったストロング・スートはハナ差ですから、去年のキャンフォード・クリフス(6馬身差)ほどの馬に育つかどうか。現時点では、来年のクラシック云々は早過ぎるような気がします。

さて折角のロイヤル・アスコットですから、去年に続いて他のレースも簡単に結果だけを報告しておきましょう。

第5レースは長距離のハンデキャップ戦、アスコット・ステークス(4歳上、2マイル4ハロン)。
20頭立ての1番人気(7対2)ギマー Ghimaar は4着同着に終わり、勝ったのは17対2の3番人気に支持されたジュニア Junior でした。
セブ・サンダース騎乗での逃げ切り勝ち。デヴィッド・パイプ調教師にとってロイヤル・アスコットでの嬉しい初勝利となります。

ジュニアは障害レースで走っていた馬。6週間前にアガ・カーンから購入したばかりで、ブリンカーを着用したのが功を奏したようです。

第6レースは2歳によるリステッド戦、ウインザー・キャッスル・ステークス(2歳、5ハロン)。
14頭立て。9対4で1番人気のメトロポリタン・マン Metropolitan Man が9着に敗れ、優勝は9対2で2番人気のマリン・コマンド Marine Commando

イギリス北部のリチャード・ファヘイ厩舎所属。騎乗したポール・ハナガンは現時点でリーディング・ジョッキーを走っている若手。ハナガンにとっては、去年のキング・ジョージ5世ステークスに続くロイヤル・アスコット2勝目となりました。

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