ロイヤル・アスコット2010・4日目

アスコットも残り2日となりました。4日目はパターン・レースが4鞍組まれています。

第1レースは2歳牝馬戦、アルバニー・ステークス(GⅢ、2歳牝、6ハロン)。2日目のクィーン・メアリーが5ハロン戦だったのに対し、こちらは1ハロン長い6ハロン戦。1頭取り消しがあったものの、クィーン・メアリーを上回る22頭が出走してきました。

4対1の1番人気は、2歳馬最初のパターン・レースであるフィリーズ・スプリント(ナース競馬場のGⅢ)を快勝したラードナファリガ Radharcnafarraige 。もちろんアイルランドからボルジャー師が送り込んできた期待馬です。

ラードナファリガは5戦目のレースですが、まだキャリアの浅い馬も多く、7頭が無敗(と言っても2戦2勝が1頭、他は新馬戦に勝ったばかりですが)です。

勝ったのはそうした1頭、15対2の4番人気に支持されていたメモリー Memory でした。
スタートが悪く、止むを得ず最後方に待機していた同馬、ゴール前2ハロンではとても届きそうにない位置にいましたが、そこから末脚を爆発させての優勝です。

2着は頭差でこれまた追い込んできたマーゴ・ディド Margot Did 、出走馬中唯一の2戦2勝馬です。3着には2馬身半差でアメリカから遠征してきたティズ・マイ・タイム Tiz My Time が飛び込み、本命のラードナファリガも4着と貫禄を示しました。

メモリーは先月のグッドウッドでデビュー戦に勝ったばかり、調教師はリチャード・ハノン、騎手はいつもクールなリチャード・ヒューズです。絶好調ハノン/ヒューズ・コンビは、これで今年のロイヤル・アスコット3勝目。終わってみればハノン厩舎の2歳は強かった、ということでしょうか。

第2レースはキング・エドワード7世ステークス(GⅡ、3歳、1マイル4ハロン)。2週前のダービーと同じ距離。8頭立てですが、ダービー出走組から3頭が出てきました。

中ではエプサムで観衆をアッと言わせたオブライエンの逃げ馬、アット・ファースト・サイト At First Sight が5対2の1番人気。ダービー2着馬への敬意でしょうか。
他には8着のバズワード Buzzword 、ドン尻(12着)に終わったブレット・トレイン Bullet Train も雪辱を期しています。

しかしレースはダービー回避組に軍配が上がりました。優勝はパターン・レース初挑戦のモンテロッソ Monterosso 、7対2の2番人気を集めた期待馬です。
2着は2馬身4分の1差が付いてアークティック・コスモス Arctic Cosmos 、更に2馬身4分の1差でダービー組のバズワード Buzzword の順。1番人気のアット・ファースト・サイトは4着に終わりました。
もう1頭のダービー組、ブレット・トレインは6着まで。

ダービーの再現のようにアット・ファースト・サイトが先頭に立ちましたが、今回はすんなり逃がしてくれません。4番手を進んだモンテロッソがゴール前2ハロンで抜け出し、最後は右に大きく寄れながらも楽勝でした。
ダービーでは7馬身差2着だったアット・ファースト・サイトに対し、勝ったモンテロッソは約5馬身差。単純な計算では測れませんが、今年の3歳馬のレヴェルを考える指標にはなるでしょう。

モンテロッソはマーク・ジョンストン厩舎、鞍上はランフランコ・デットーリ。これで7戦5勝2着2回と堅実な成績で、前走ニューマーケットでのハンデ戦辺りから馬が急成長、ジョンストン師も同馬の素質に自信を深めたようです。

次走は未定ながら、惚れ込んだデットーリはアイルランド・ダービーへの挑戦を進言した模様。

第3レースは、今年の1000ギニー路線の総決算となるべきコロネーション・ステークス(GⅠ、3歳牝、1マイル)。例年なら英愛仏のギニー馬対決が見られるのですが、今年の出走14頭の中に勝馬の姿はありません。
それでも半分の7頭は英愛のいずれかに走っていた馬。英ギニーからは、先頭でゴールしながら失格したジャクリーン・クエスト Jacqueline Quest 、3着のギル・ナ・グレイナ Gile Na Greine 、4着のセント・フロム・へヴン Sent From Heaven 、6着のミュージック・ショウ Music Show が出てきました。

一方愛ギニー組では、英でも走ったミュージック・ショウ(3着)とギル・ナ・グレイナ(17着)の他に、2着のアンナ・サライ Anna Salai 、5着のリリー・ラングトリー Lillie Langtry 、13着のフェイマス Famous の姿があります。

混戦ムードの中、7対2の1番人気に支持されたのは、愛5着のリリー・ラングトリー。以下、ミュージック・ショウとアンナ・サライが並んで2番人気、事実上英ギニー勝馬は4番人気。英で健闘も愛で惨敗したギル・ナ・グレイナは25対1と人気を落としていました。

レースはそのギル・ナ・グレイナが先頭で引っ張り、最後の1ハロンまで先頭。あわや大穴かと思われた時、5番手を進んだ本命リリー・ラングトリーが追い込み、見事人気に応えました。
2着に粘ったギル・ナ・グレイナとの着差は1馬身4分の1、更に2馬身4分の1差3着にジャクリーヌ・クエストが追い込んで英ギニーの面目を保っています。
ミュージック・ショウは4着、アンナ・サライは7着。

リリー・ラングトリーは、エイダン・オブライエン厩舎、ジョニー・ムルタ騎乗の常勝コンビ。GⅠに次ぐGⅠ勝利を重ねてきたオブライエン師にとって、これが今年のロイヤル・アスコット初勝利となります。
4日目にして漸くという感じですが、前日のゴールド・カップ(2着)辺りから幸運の女神が微笑み始めたのでしょうか。大所を本命馬で制する辺りは流石ですね。

オブライエン厩舎は、これがロイヤル・アスコット29勝目。勝ったリリー・ラングトリーは、昨秋のブリーダーズ・カップ遠征で負傷し、調整が遅れていました。
今シーズン漸く体勢が整って臨んだ愛ギニーで5着。コロネーションの勝利によって今後の巻き返しに期待が高まります。

第4レースは一息ついて、リステッドのウルファートン・ハンデキャップ(4歳上、1マイル2ハロン)。15頭立て、13対8の1番人気に支持されたレインボウ・ピーク Rainbow Peak が堂々期待に応えました。

レインボウ・ピークは、マイケル・ジャーヴィス厩舎、ネイル・カラン騎乗。5月19日生まれという奥手のため調教は遅れ勝ちで、4歳になって漸く開花し、次はパターン・レース・クラスに挑戦することになるでしょう。

第5レースは3歳の若駒による長距離レース、クィーンズ・ヴァース(GⅢ、3歳、2マイル)。12頭が出走し、1番人気は2対1と被り気味のミハイル・グリンカ Mikhail Glinka 。9対4のコルシカ Corsica が2番人気で続きます。

逃げたのは、そのコルシカ。5ハロンまでは先頭で引っ張りましたが、最後は脚を失くします。
替って外から先頭に立ったのは、4番手で先行馬をマークして進んだ本命のミハイル・グリンカ。最後は追い込むセオロジー Theology との叩き合いとなり、結果ハナ差でミハイル・グリンカが優勝。
2着セオリーと3着トータル・コマンド Total Command との着差は2馬身半でした。コルシカは4着。

ロシアの作曲家の名前を持つミハイル・グリンカは、二つ前のコロネーションを制したオブライエン/ムルタのコンビ。一気のダブル達成です。
今ロイヤル・アスコットでは有力馬で中々勝てなかった同コンビですが、この日の2勝によって一気に溜飲を下げ、開催リーディングを狙える位置に付けてきました。

ミハイル・グリンカは、今シーズン初戦のバリーサックス・ステークスで大接戦の3着(このときの2着はアット・ファースト・サイト At First Sight)した馬。これがシーズン2戦目ですが、騎乗したムルタによれば将来のゴールド・カップ候補として期待できる素質馬の由。今後は度々その名前を聞く存在に成長するでしょう。

最終第6レースは、ハンデ戦のバッキンガム・パレス・ステークス(3歳上、7ハロン)。26頭立てとこの日一番の多頭数で、1番人気は2頭が並ぶ混戦。その2頭、夫々16着、25着という波乱になりました。

優勝は14対1のトリードウェル Treadwell 。出走馬中唯一の3歳馬というのが話題で、2着はトップ・ハンデのヒマラヤ Himalaya という結果。1・2着馬のハンデ差は、丁度1ストーン(6キロ強)でした。

トリードウェルの調教師はジェイミー・オズボーン、騎手はファーガス・スゥイーニーで、スウィーニーにとってはロイヤル・アスコット初勝利となります。

以上がロイヤル・アスコット4日目のレポートですが、昨日は日本でも話題になっている三浦皇成くんがグッドウッド競馬場で一鞍騎乗しています。
イヴニング開催のキャップクエスト・南アフリカ・フィリーズ・ハンデという7ハロン戦で、シバーン Shibhan という馬に乗りました。

結果は9頭立ての6着でしたが、7番手を進んで最後は平均ペースのまま。元々16対1の最低人気だった馬ですから、6着はまぁまぁの結果でしょうね。
(レースの模様はスポーティング・ライフのホームページで見ることができます)

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