ロイヤル・アスコット2011・初日

2011年ロイヤル・アスコットが開幕しました。6月第3週の火曜日から土曜日までの5日間、世界最高レヴェルの競馬が連日のように行われます。正に競馬の祭典。
初日の昨日は、エリザベス女王陛下も参列してゴールド・カップを4連覇したイェーツ Yeats 像の除幕式なども行われたようで、華やかさは弥増しに高まっていたようです。↓

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一日6レース、特に初日はGⅠ戦がいきなり3連発で、Gレース4鞍という豪華版。G以外のレースも簡単に結果だけ触れながら、レース順にレポートして行きましょう。
GⅠ3レースの話題、夫々一言で表現すれば、クイーン・アンはゴールディコヴァとキャンフォード・クリフスの対決、キングズ・スタンドはオーストラリア馬が勝つか、セント・ジェームス・パレスはフランケルがどのように勝つか、ということ。
初日の馬場状態は good 、前日には雨も降り、所により good to soft とパーフェクトなコース条件でした。

さて、

第1レースはクイーン・アン・ステークス Queen Ann S (GⅠ、4歳上、1マイル)。アスコットの1マイル戦は二つのコースがありますが、こちらは直線だけの1マイル戦です。
7頭立て。冒頭に記したように、GⅠに13勝の女傑ゴールディコヴァ Goldikova 対、英国の最強古馬マイラーであるキャンフォード・クリフス Canford Cliffs が最大の見どころ。人気はゴールディコヴァが5対4で1番人気、キャンフォード・クリフスが11対8で続きます。
ゴールディコヴァは去年のこのレースでハノン厩舎のパコ・ボーイ Paco Boy を破って優勝しましたが、ハノン陣営はキャンフォード・クリフスでの雪辱に強気。2年連続での陣営対決でもありました。

レースはゴールディコヴァのペースメーカーを務めるフラッシュ・ダンス Flash Dance が飛ばし、マイル戦に戻ってきたオブライエン厩舎のケープ・ブランコ Cape Blanco (3番人気)がこれに絡むハイペースの展開。
勝負所、先ず内からゴドルフィンのリオ・デ・ラ・プラタ Rio de La Plata が抜け出しますが、2強がスパートしてあっという間に先頭に立ちます。そこからは両雄の壮絶な叩き合い。
やや後ろから、一歩仕掛けを遅らせたキャンフォード・クリフスが最後は死闘を制してゴールディコヴァに1馬身差を付けていました。外から生涯最高のレースをしたシティースケープ Cityscape が追い込んで1馬身4分の3差3着。
以下、リオ・デ・ラプラタ4着、ランソム・ノート Ransom Note 5着、ケープ・ブランコ6着の順。

キャンフォード・クリフスは、2歳時にコヴェントリー・ステークス、3歳時にはセント・ジェームス・パレス・ステークスを制しており、これで3年連続でロイヤル・アスコットでの勝利。圧巻のハット・トリックでした。
勝利騎手リチャード・ヒューズは、“自分が乗った生涯最強の馬” と絶賛。
管理するリチャード・ハノン師によれば、同馬は既に来シーズンからクールモアで供用されることが決まっており、次走はクールモアと相談して決める由。順当にサセックス・ステークスに向かうか、ヨークのジャドモント・インターナーショナルで1マイル半に挑戦するかが思案の為所だそうです。

一方敗れたゴールディコヴァのフレディー・ヘッド師は敗因無し。14勝目のGⅠは逃しましたが、ここは勝者を讃えています。
このあとはドーヴィルのジャック・ル・マロワ賞に向かい、もちろん最終目標はブリーダーズ・カップ・マイルの4連覇です。

こうしてマイルの頂上対決は幕を下ろしました。4着馬の調教師スロールが漏らした、“これは世界最高のマイル戦” という述懐こそ真実でしょう。

余談として、ゴールディコヴァに騎乗したオリヴィエ・ペリエは、検量後にブーツを取り換えた廉で650ポンドの罰金を科せられています。それだけレース前からエキサイトしていたということでしょうか。

第2レースはキングズ・スタンド・ステークス King’s Stand Stakes (GⅠ、3歳上、5ハロン)。直線コースで行われる電撃の最短距離戦。
19頭の国際的なスプリンターが揃い、1番人気はスタウト/ムーア・コンビのキングスゲート・ネイティヴ Kingsgate Native で11対2。オーストラリアの強豪スター・ウィットネス Star Witness が6対1の2番人気で続きます。

しかし優勝は7対1の3番人気に支持されていたプロヒビット Prohibit 、堅実さで鳴らすタフな6歳せん馬です。半馬身差2着に2番人気のスター・ウィットネスが入り、更に半馬身差で香港(南アフリカ産)馬のスイート・サネット Sweet Sanette が続き、ハイペースで逃げた「ブダペストの弾丸」オーヴァードーズ Overdose は4着。
1番人気のキングスゲート・ネイティヴは6着に終わりました。

勝ったプロヒビットは、ロバート・カウエル厩舎。25~30頭を管理する小厩舎にとっては生涯最高の一日となりました。ロイヤル・アスコットに出走させることだけでも栄誉なこと、まして優勝、しかもGⅠ戦ということで、カウエル師は完全に舞い上がっていました。
騎乗したジム・クロウリーにとっても特別な一日。ロイヤル・アスコットでの初勝利ですが、クロウリーはアスコット競馬場と道路一つ隔てた病院で産まれた由で、正に因縁のアスコットではあります。

プロヒビットは4週間で4回使うほどのタフな馬。馬自身、走ることが大好きなのだそうです。ここ2戦はGⅡで入着、今日はスタートが完璧で、初のGⅠ制覇を成し遂げました。
陣営の見解では5ハロンがベスト、ちょっと伸びてもダメなのだそうで、次走はナンソープ・ステークスになります。

2着惜敗のオーストラリア馬、本来は6ハロンがベストということで、土曜日のゴールデン・ジュビリーを狙う旨の発表がありました。

第3レースがセント・ジェームス・パレス・ステークス St James’s Palace S (GⅠ、3歳、1マイル)。こちらはコーナーを回るマイル・コースが使われます。
9頭立て。日本からもグランプリボスの参戦で注目が集まっていました。人気は無敗のクラシック馬フランケル Frankel が断然で、3対10という一本被り。2番人気のドイツ2000ギニー馬エクセレブレーション Excelebration は10対1と2桁ですから、その人気の圧倒的だったことが知れるでしょう。
因みにグランプリボスは16対1、6番人気は未知の魅力と取られていたのでしょう。

レースはフランケルのペースメーカーを務めるリルーテッド Rerouted が2番手以下を大きく引き離して飛ばす展開。グランプリボスは最初、2番手に付けていました。
しかしそれも束の間、直線入り口では早くも先頭を奪ったフランケルが独走態勢。しかしそこからは意外に伸びず、2000ギニーのような圧勝にはなりませんでした。

映像を見る限りではバテたようにも思える中、オブライエン/ムーアのゾッファニー Zoffany がフランケルを追い詰めましたが、結局は4分の3馬身届かず、フランケルの連勝記録は7に伸びました。更に1馬身半差3着に2番人気のエクセレブレーション。
対決が期待されたドリーム・アヘッド Dream Ahead は5着、ウットン・バセット Wootton Bassett は7着敗退です。グランプリボスは更にその後、ブービーの8着でしたが、勝馬からは27~28馬身離されていました。やはりアスコットの急坂の昇りは、スタミナの無い馬には余程堪えたのでしょう。

フランケルを管理するヘンリー・セシル師、騎乗したトム・クィーリー騎手も、最後に詰め寄られたことは心配していない様子。クィーリーはバテたのではないと明言していますし、セシル師も控える競馬が出来たのは収穫、と前向きです。
次走はサセックスかジャドモント・インターナショナル、師は1マイル半にも自信を深めたようですが、最終決定はオーナーのアブダッラー殿下が下すことです。

2着健闘のゾッファニーはこれまで7ハロンで戦ってきた馬。1マイルは初挑戦でしたが、結果に満足したオブライエン師はマイルにも自信を得、次走はサセックスと宣言しました。

第4レースはコヴェントリー・ステークス Coventry S (GⅡ、2歳、6ハロン)。今シーズン最初の2歳馬によるG戦です。もちろん直線コース。
23頭立てという多頭数でしたが、結果は順当。4対1の1番人気に支持されたパワー Power が期待に応え、首差2着にローマン・ソルジャー Roman Soldier 、1馬身4分の1差3着にセント・バース St Barths の順。
2番人気のメーズマー Mezmaar は10着、3番人気のゲートポスト Gatepost は5着と夫々敗退でした。

勝ったパワーはエイダン・オブライエンの管理馬、鞍上は今ロイヤル・アスコットでもオブライエンと多くコンビを組み、開催リーディングが期待されているライアン・ムーア。ムーアにとっては順当な2011ロイヤル・アスコット初勝利です。
同馬はオアシス・ドリーム Oasis Dream 産駒、これで3戦無敗となります。デビューはカラーの6ハロン戦でしたが、前走カラーのリステッド戦は5ハロン。ムーア騎手は距離が伸びても問題なしと進言していますから、来年のクラシックにも期待がかかります。オブライエン師によれば、既に完成された馬とのこと。
ブックメーカーも直ぐに反応し、来年の2000ギニーに12対1のオッズが出されました。某ブックメーカーの代表は、今シーズンこれまでに走った最良の2歳馬と評価しています。

次走はカラー競馬場のフェニックス・ステークスが予定されている由。オブライエン厩舎の2歳馬がロイヤル・アスコットで勝ったのは、2007年のヘンリーザナヴィゲイター Henrythenavigator 以来のことです。

残り2レースはパターン・レースではありませんが、簡単に…。

第5レースはアスコット・ステークス Ascot S (ハンデ、4歳上、2マイル4ハロン)。マラソンのハンデ戦。
18頭立て。11対2のヴェイルド Veiled が優勝。騎乗したエディー・エイハーン騎手は、予定されていたキーレン・ファロンが首の負傷のため乗り替わったもの。
調教師のニック・ヘンダーソンは主に障害戦で活躍しているトレーナーです。

第6レースはウインザー・キャッスル・ステークス Windsor Castle S (リステッド、2歳、5ハロン)。
24頭立て。9対4の1番人気に支持されたフレデリック・エンゲルス Frederick Engels が順当勝ち。デーヴィッド・ブラウン厩舎、ジョニー・ムルタ騎乗。

以上、初日は期待された馬が人気通りの走りを見せ、所謂サプライズはありませんでした。それだけに、ブックメーカーにとっては辛い一日だったようです。

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