ロイヤル・アスコット2010・千秋楽

あっという間の5日間でした。ロイヤル・アスコットの最終日です。この日も6レースですが、パターン・レースは第2・3レースの二鞍。レース順に見ていきましょう。

第1レースはリステッド戦のチェシャム・ステークス(2歳、7ハロン)。12頭が出走し、1番人気は前日にダブルを達成したオブライエン/ムルタ・コンビのジャッカルー Jackaroo の9対4。

しかし本命は7着に終わり、優勝は7対1のザイダン Zaidan でした。クライヴ・ブリテン厩舎所属、セブ・サンダースの騎乗で、ドンカスターのデビュー戦に続き2連勝。早くも来年の2000ギニーに25対1のオッズが提示されています。
ところがブリテン師、狙いたいのはケンタッキー・ダービーとのことです。

第2レースは古馬によるクラシック距離の一戦、ハードウィック・ステークス(GⅡ、4歳上、1マイル4ハロン)。先日、今年のダービー馬ワークフォース Workforce が愛ダービーをパスして直接キング・ジョージに向かうという発表がありましたが、ここは3歳チャンピオンを迎え撃つ古馬の代表を決めるレースとでも申せましょう。

1頭取り消して11頭立て。8対11の1番人気に支持されたのは、今シーズン2連勝と絶好調の4歳馬ハービンジャー Harbinger です。

直線入口で先頭のバーシバ Barshiba を6番手から追い上げたハービンジャー、最後は後続をグイグイと引き離し、ここでは格が違うとばかりの圧勝劇を演じました。
2着は3馬身半差で2番人気のダーカン Durcan が順当に入り、3着には更に6馬身もの大差が付いてバーシバが粘り込みます。

ハービンジャーは繰り返すまでもなくサー・マイケル・スタウトの管理馬、ライアン・ムーア騎乗です。
先に紹介したとおり、今シーズンは4月にジョン・ポーター・ステークス(ニューバリー)、5月にはオーモンド・ステークス(チェスター)と連勝しながら成長の度を加えており、GⅠクラスでどこまで戦えるかは興味津々ですね。当然、来月のキング・ジョージが目標でしょう。

第3レースは開催最後のGⅠ戦、ゴールデン・ジュビリー・ステークス(GⅠ、3歳上、6ハロン)。初日のキングズ・スタンド・ステークス同様、グローバル・スプリント・チャレンジの一環でもあります。

ここは2頭の3歳馬を含め、24頭が出走してきました。1番人気は2頭が並び、去年のジュライ・カップの覇者フリーティング・スピリット Fleeting Spirit と、今年3月にオーストラリアからアイルランドのエイダン・オブライエン厩舎に移籍してきた噂の快速馬スタースパングルドバナー Starspangledbanner が共に13対2で譲りません。

アスコットの直線コースでの多頭数は、ほとんどが内外の二つのグループに分かれます。これも見事に真っ二つの馬群に割れ、スタンド側で終始先頭を突っ走ったスタースパングルドバナーが一気に押し切ってしまいました。
2着は1馬身4分の3差で3歳のソサエティー・ロック Society Rock が飛び込んで観衆の度肝を抜き、3着は頭差でアメリカから遠征してきたキンセイル・キング Kinsale King の順。
人気の一角フリーティング・スピリットは、スタンドから遠い側の先頭でゴールインしましたが、惜しくも4着に終わりました。

前述したように3月に転厩したスタースパングルドバナー、新天地最初のレースとなった5月のデューク・オブ・ヨーク・ステークスこそ5着でしたが、厩舎での調教は驚きの連続。1ハロンを10秒を切る快速に、流石のオブライエン師も“こんなスピード馬、見たことない” と唖然としたとか。
今日も鞍上ジョニー・ムルタは馬を止めるのに苦労したほどです。パラシュートを開かなきゃならんぞ・・・。

同馬の父ショワジール Choisir もオーストラリアの快速馬で、自身2003年にロイヤル・アスコットに遠征してゴールデン・ジュビリーを制しています。即ち、今年のゴールデン・ジュビリーは馬版の父子制覇。
ショワジールにも騎乗したムルタ騎手は、“スタースパングルドバナーは、父親そっくりの強くて大きい馬” と懐かしげでした。

スタースパングルドバナーがオーストラリアでは1マイルもスピードで押し切ってしまうという話、オブライエン師は“信じられん” と絶句するばかりですが、当面はニューマーケットのジュライ・カップを目指す意向。
オブライエン師にとって31勝目のロイヤル・アスコット、驚きの連続でした。

また3着に食い込んだキンセイル・キングを管理するのは、カリフォルニアの調教師カール・オキャラガン。名前で判るようにアイルランド出身ですが、一時ホームレスだったこともあるユニークな存在。
“初遠征、初芝コースでの3着は勝ち同然” と喜びを隠せません。再度ニューマーケットに挑戦する意気込みでしたね。

パターン・レースはこれで終了、残り3レースは個人タイトル争いに興味が移ります。

第4レースは短距離のハンデ戦、ワーキンガム・ステークス(3歳上、6ハロン)。
27頭の大混戦となりましたが、9対2の1番人気に支持されたラディーズ・ポーカー・トゥー Laddies Poker Two が見事人気に応えてました。
例によって内外に大きく割れたレース、ここもスタンド側の馬が有利だったようです。

勝った5歳牝馬のラディーズ・ポーカー・トゥーは、何と2008年10月8日以来、610日振りのレースでの勝利。正に大きな賭けに勝ったことになります。

調教師はジェレミー・ノセダ、騎手はジョニー・ムルタ。ムルタ騎手は3日目まで勝ち運に恵まれませんでしたが、前日と今日の二日連続でダブル達成。この時点で一気に開催リーディングのトップに躍り出ました。

第5レースもハンデ戦、デューク・オブ・エディンバラ・ステークス(3歳上、1マイル4ハロン)。
17頭が出走し、スタウト/ムーア・コンビのインポージング Imposing が7対4の1番人気に支持されていました。

しかし結果はインポージングの猛追も首差及ばず2着、優勝は16対1の5歳牝馬キル・リアレーグ Cill Rialaig でした。
調教師はハギー・モリソン、騎手はスティーヴ・ドラウン。

そしてフィナーレはクイーン・アレキサンドラ・ステークス(4歳上、2マイル5ハロン159ヤード)。ほぼ4600メートルのマラソン・レースで、こんな長い距離のレースは日本にはありません。

18頭立ての1番人気(4対1)はセントリー・デューティー Sentry Duty でしたが、6着敗退。優勝は障害レースにも走っている10対1のバーゴ Bergo でした。ゴールド・カップも障害・平場の両刀使いが勝ちましたが、英国ではこういう馬をダブル・パーパス Double Purpose と読んでいますね。

バーゴを管理するのはゲーリー・ムーア師。チャンピオン・ジョッキー、ライアン・ムーアの父君に当たります。小さい厩舎ですからロイヤル・アスコットに出走させることは少なく、これが目出度くもロイヤル・アスコット初勝利となりました。

騎乗したのは、嬉しいことに息子のライアン・ムーア、正に人版の父子制覇です。更にムーア騎手にとっての喜びは、最後の最後で開催リーディング・ジョッキーを獲得したことでしょう。

2010年ロイヤル・アスコットの騎手部門は、最終日にジョニー・ムルタとライアン・ムーアが4勝で並びました。この場合は2・3着の回数でチャンピオンが決定するルール。2着はムルタの4回に対し、ムーアの5回が勝っていたのでムーアが栄冠に輝いたのです。
以下3勝で並んだのは、リチャード・ヒューズ、ランフランコ・デットーリの2人。

一方調教師部門は3勝で並んだリチャード・ハノンとエイダン・オブライエンでしたが、同様に2着の回数(ハノン5回、オブライエン3回)でハノン師が開催リーディング・トレーナーの座を射止めました。

以上、2010年ロイヤル・アスコットの全てでした。

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