ロイヤル・アスコット11・千秋楽

今年のロイヤル・アスコットも、昨日目出度く千秋楽を迎えました。前日のレポートの通り、最終日の馬場は soft 。時折ザッと降る雨で、泥濘状態の個所もあったようです。
雨の模様は↓から。女王陛下お出ましの時刻には強い陽射し、正に This is England です。ところでエリザベス女王は5日間皆勤賞。英国は開催期間中は祝日でも何でもなく、競馬が王侯貴族のスポーツであることを改めて思う日々でもありました。

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フィナーレのパターン・レースは2鞍だけ。我々の感覚ではアンチ・クライマックスのようにも思えますが、最終日は個人タイトル争いにも注目が集まります。

さて第1レースはパターン戦ではなく、リステッドのチェシャム・ステークス Chesham S (リステッド、2歳、7ハロン)。
5対2の1番人気に支持されたメイビー Maybe が期待に応えて優勝。牡牝混合戦ですが、メイビーはガリレオ Galileo の牝馬。エイダン・オブライエン厩舎、ライアン・ムーア騎乗で貴重な1勝になりました。
早くも来年の1000ギニーに8対1のオッズが出されています。

第2レースは開催最後から二つ目のパターン戦、ハードウィック・ステークス Hardwicke S (GⅡ、4歳上、1マイル4ハロン)。去年はハービンジャー Harbinger が勝ってキングジョージも圧勝。その意味でも注目されますが、今年は残念ながらスタウト厩舎からの出走馬はありません。

1頭取り消して9頭立て。4対6の1番人気に支持されたアウェイト・ザ・ドーン Await The Dawn が見事に期待に応え、2着に逃げ粘ったハリス・トゥイード Harris Tweed を3馬身差突き放しての圧勝です。更に2馬身半差3着にドランクン・セイラー Drunken Sailor 。2番人気のポエト Poet は8着と奮いませんでした。

アウェイト・ザ・ドーンは、前走(5月のチェスター競馬場)ハックスレー・ステークス(GⅢ)でも力の違いを見せ付けていた馬。今シーズン2戦2勝でキングジョージに向けた新たなスター誕生です。
同馬はエイダン・オブライエン厩舎、ライアン・ムーア騎乗。ということは、第1レースのチェシャム・ステークスに続きこの日早々とダブル達成。オブライエン師にとっては、2008年のマッカーサー Macarthur に続くハードウィック2勝目となります。

師によると、アウェイト・ザ・ドーンはジャイアンツ・コーズウェイ Giant’s Causeway の仔、父と同じブリーダーズ・カップ・クラシック(父は惜敗)を目指す意向で、BCクラシック制覇の夢は捨てていないそうです。
陣営には強豪が揃い、次は未定。一応エクリプスにはソー・ユー・シンク So You Think 、キングジョージにはセント・ニコラス・アビー St Nicholas Abbey を考えているようですが、アウェイト・ザ・ドーンのキングジョージを含めて、現在は白紙状態とのこと。

第3レースは開催最後のパターン・レース、最後のGⅠでもあるゴールデン・ジュビリー・ステークス Golden Jubilee S (GⅠ、3歳上、6ハロン)。初日のキングズ・スタンド・ステークスが5ハロンだったのに対し、こちらは6ハロン。両方のレースに出走する馬も毎年のように見受けられます。

1頭取り消して16頭立て。キングズ・スタンド組からは2着のスター・ウィットネス Star Witness 、6着のキングスゲート・ネイティヴ Kingsgate Native 、11着のムシュー・シュヴァリエ Monsieur Chevalier が再挑戦してきました。
3対1の1番人気は、パターン・レース3連勝中でアイルランドから挑戦してきたビウィッチド Bewitched 。キングズ・スタンドほどではないにしても、豪・愛・仏からの遠征組も目立つ国際的な顔ぶれです。
しかし優勝はキングズ・スタンド(カウエル厩舎のプロヒビット Prohibit)に続いて英国組でした。

短距離の直線コースは内外二つのグループに分かれるのが常で、このレースも有利なスタンドから遠いグループが上位を占める結果に。
キングズ・スタンド2着でオーストラリアを代表する快速馬スター・ウィットネスは、不利とされる11番枠から出て直ぐに内に進路を変え、ゴール前では先頭。しかしそこからは重馬場に脚を取られて一杯となり、同じグループの2頭に交わされてしまいます。

結局勝ったのはジェームズ・ファーンショウ厩舎、パット・コスグレーヴ騎乗のソサエティー・ロック Society Rock で、半馬身差2着にハノン厩舎のムシュー・シュヴァリエ、更に1馬身4分の1差でスター・ウィットネスが3着でした。
以下、これもオーストラリアからの挑戦で3歳馬のエルザーム Elzaam 4着、アブダッラー所有のベイテッド・ブレス Bated Breath が5着。本命ビウィッチドは良い所なく14着敗退です。

ソサエティー・ロックは去年のゴールデン・ジュビリーの2着馬。そのあとジュライ・カップで7着凡走し、今シーズンも本来のスピードが見られず、この日は25対1と大きく人気を落としていました。忘れられた馬の復活と言えるでしょう。
父はロック・オブ・ジブラルタール Rock Of Gibraltar 。前日の重馬場でもロック・オブ・ジブラルタール産駒が勝っています(アルバニー・ステークスのサミター Samitar)し、牝系も重得意の馬が多い血統。馬場が味方したという見方もできると思います。

ファーンショウ師はこれまでもマーカブ Markab (スプリント・カップ)やボーダーレスコット Borderlescott (ナンソープ・ステークス)など名スプリンターを調教してきましたが、何故かロイヤル・アスコットのGⅠスプリントには縁がありませんでした。念願のゴールデン・ジュビリーです。

そのファーンショウ師がスプリントに強い所を見せ付けたのが、第4レースのワーキンガム・ステークス(ハンデ、3歳上、6ハロン)。
25頭立て。1番人気のフーフ・イット Hoof It が7着に敗れ、15対2のディーコン・ブルース Deacon Blues が優勝。騎手はジョニー・ムルタでしたが、勝利調教師のジェームス・ファーンショウはスプリント戦のダブル達成。

第5レースはデューク・オブ・エディンバラ・ハンデキャップ Duke of Edinburgh H (ハンデ、3歳上、1マイル4ハロン)。
16頭立て。ここも1番人気のモーダン Modun が13着と大敗し、12対1のフォックス・ハント Fox Hunt が優勝。マーク・ジョンストン厩舎、シルヴェストル・デ・スーザ騎手は、4日目のクィーンズ・ヴァーズに続くロイヤル・アスコット2勝目。因みにデ・スーザ騎手はブラジル出身の若手。

2011ロイヤル・アスコットのフィナーレは、恒例のマラソン、クイーン・アレクサンドラ・ステークス(4歳上、2マイル5ハロン159ヤード)。
17頭立て。1番人気エルヤーディ Elyaadi は2着に終わり、優勝は11対2のスウィングキール Swingkeel 。ジョン・ダンロップ厩舎、テッド・ダンカン騎乗でした。

以上、5日間に及ぶロイヤル・アスコットの全レポートでした。

開催のリーディング・トレーナーは、千秋楽のダブルが大きく貢献したアイルランドのエイダン・オブライエン師。今日のダブルに加え、初日のコヴェントリーと3日目のゴールド・カップを加えた4勝でトップ。リチャード・ハノン師の3勝を抑えました。

リーディング・ジョッキーは、オブライエン厩舎とチームを組んだライアン・ムーア。ゴールド・カップこそスペンサーに譲りましたが、開催3勝でリチャード・ヒューズ騎手と同数。しかし2着の数が5回で、ヒューズ騎手の4回を抑え、2年連続のリーディング獲得となりました。

ゴドルフィンのスロール師が語ったように、ロイヤル・アスコットは毎日行われているわけではありません。今年が終われば来年の6月まで無く、更に再来年と引き継がれて行きます。
1年1年を、1レース1レースを大切に闘っての積み重ねが歴史となるのです。
残念ながら日本調教馬や日本の騎手がロイヤル・アスコットに勝ったことはありません。今年はグランプリボスが出走しましたが、結果は出せませんでした。
しかしこの経験を活かし、毎年地道に挑戦していく姿勢が大切。日本の賞金が英国より遥かに高いのが大きな壁ですが、関係者にはお金だけではない何かを求め続けてもらいたいと思うのです。

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1件の返信

  1. n40 より:

    はじめまして。
    いつも楽しく拝読させていただいています。
    さて、「日本の関係者がロイヤル・アスコットに勝ったことはありません」
    と書かれていますが、日本人所有馬に限っていえば、
    1972年:山本慎一氏所有のエリモホーク
    1973年:吉田善哉氏所有のLassalle
    1992,93年:浅川光男氏所有のドラムタップス
    が、ゴールドカップに勝利していますね。
    ちょっと、気になりましたので。

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