強者弱者(128)
紫陽花
紫陽花の花咲く、春の花としては強く盛夏の花としては弱く、情調最も初夏の花にかなへり。楓の若葉涼しき縁に紫陽花の色を眺め、新茶の香ゆかしきを味うて初めて夏の思ひあり。箱根、天城などの谷に野生の紫陽花を見る可し。ひなびたれども自らなる風情あり。
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梅雨時の花、アジサイの話題です。「あじさい」を漢字で書くと「紫陽花」ですが、これは平安時代の学者が日本の植物に漢名を当てて生まれたものだとされています。
しかし後の世になって牧野富太郎たちが検証した結果、これが間違いであることが判明しました。「あじさい」と漢名の「紫陽花」とは別ものなのですね。
とは言っても長年の慣習ですから、固いことを言わずに紫陽花=あじさい ということにしておきましょう。
「あじさい」は中々に奥が深く、現在最も普通に見るボール状の豪華なものは日本のガクアジサイをヨーロッパで品種改良したもので、セイヨウアジサイという和名で正式に登録されています。
ここに出てくる「野生の紫陽花」が何であるのか、この文章だけからは判断できませんが、恐らく山地に多いヤマアジサイという種類ではないかと思われます。
ガクアジサイとヤマアジサイの区別は葉で判断するのが良いようで、光沢があるのが「ガク」、無いのが「ヤマ」。ま、相対的な比較ですから、これだけでは難しいですけどね。
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