日本フィル・第621回東京定期演奏会
昨日は久し振り、と言うか、6月最初のオーケストラ・コンサートを聴いてきました。ほぼ一か月振りのサントリーホール、徐々に出不精になっていく自分にムチ打っての出撃です。
伊福部昭/マリンバと管弦楽のためのラウダ・コンチェルタータ
~休憩~
ストラヴィンスキー/ハ調の交響曲
ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
指揮/井上道義
マリンバ/安倍圭子
コンサートマスター/木野雅之
フォアシュピーラー/江口有香
ソロ・チェロ/菊地知也
日本フィルの2009-2010シーズンも残すところ6月を含めてあと2回となりましたが、最近は極めて個性的な指揮者の客演が続いています。今回は踊る奇才、井上道義の登場。プログラムも踊りやバレエに因んだもので統一され、食欲を誘う陣容です。
冒頭の伊福部作品は、初演者である国際派マリンバ奏者の安倍圭子が繰り返し取り上げてきた作品。何故か私はこれまで接する機会が無く、今回が初体験でした。
いやぁ~、実に面白い音楽です。プログラムに乗った曲目解説によれば、これは伊福部の「春の祭典」の由。単一楽章の作品ですが、全体は冒頭の4音や5音音階に基づいて構成されており、日本古代の巫女の儀式がイメージされているのでは、とのこと。
当然ながら途中にマリンバ・ソロのカデンツァ風部分が挟まれ、フィナーレに向かってトランス状態のマリンバと興奮したオーケストラが陶酔状態にまで高まっていきます。
マリンバはもちろんのこと、オケで使われる打楽器も木質感で統一され、特にソロの低音部がホール空間に響く独特な自然感は、如何にも東洋的かつアイヌ風世界。
伊福部昭にしか書けない音楽、作曲家のエッセンスがギッシリと詰まった30分でした。
演奏の終了と同時に客席から大歓声が起こり、安倍/井上の音楽儀式が圧倒的な成功を収めたことを証明していました。前半からこんなに盛り上がっちゃっていいのかぁ~。
それにしても安倍圭子、井上マエストロより大分歳上だそうですが、集中力と熱狂的なパフォーマンスは見事なものです。そう、年齢を感じさせません。
上下に別々のマレットを装着した撥を手に再登場した井上マエストロ、撥をソリストに手渡してアンコールを促します。
安倍圭子自作のソロ作品「祭りの太鼓」。井上の解説では、安倍がユトレヒトでブラームスやリストに縁の教室でクラスを持った時、自身のアイデンティティーを確認するために創ったものの由。クライマックスでは“どうやって演奏しているのだろう”と、思わず乗り出してしまうほどの妙技を披露してくれました。
聞くところによると、マリンバという楽器は演奏の準備が大変。分解して搬入した楽器をホールで組み立て、それにライトを当てて楽器を温めてホールに馴染ませてからでないと演奏が出来ないそうです。
手間暇のかかるこの特殊な打楽器をソロ楽器として確立させた安倍圭子は、正に打楽器界の女王とでも言うべき存在でしょうね。
オフィシャル・ウェブサイトはこちら。↓
伊福部作品の基本データ、折角ですからプログラムから転記しておきしょう。
楽器編成は、独奏マリンバ、ピッコロ1、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン1、クラリネット2、バスクラリネット1、ファゴット2、コントラファゴット1、ホルン4、トランペット3、トロンボーン2、テューバ1、ティンパニ1、大太鼓、トムトム、キューバン・ティンバレス、ハープ1、弦5部。
演奏時間は約27分。日本初演は1979年9月12日、安倍圭子のソロと山田一雄指揮新星日本交響楽団により、東京文化会館。
後半はストラヴィンスキー作品が2曲、ほぼ続けて演奏されました。前半は指揮棒を使っていたマエストロですが、後半は指揮棒を使わず、独特なミッキー・ダンスで客席を酔わせます。(火の鳥はスコアも見ず)
私にとってはハ調交響曲が大収穫。ストラヴィンスキーが、交響曲にバレエを持ち込んだチャイコフスキーの手法をシッカリと受け継いでいたことに納得しました。
井上の指揮を見ていると、音だけで聞けば素気ない感じさえする交響曲が、極めて多彩な表情をカメレオンの如くに変化させて行く、ストラヴィンスキーの人を食ったような面白さに気付かせてくれるのでした。
好例は第3楽章でしょう。次々と変化する樂想が生き生きと踊り出す見事さ。
マエストロの指揮は、チョッと見た目には無邪気なダンスのように映りますが、実は基本に忠実であることも判ります。
こちらは第1楽章でしょうね。2分の2拍子を基本とした楽章ですが、スコアに「4つに振れ、Battre a 4」と記された箇所(練習番号9の1小節前や、19の2小節目など)では、マエストロは的確に4つ振りで指示を出していました。
最後の火の鳥は、マエストロもオーケストラも、そしてもちろん客席も良く知っている名曲。理屈抜きに豪快なオーケストラ・サウンドを楽しみました。
音はほとんど聴こえませんが、一か所だけ出てくるチェレスタも舞台に乗っていました。
また、子守歌での二度目のファゴットを最初と同様に吹く箇所(練習番号6の2小節目)や、終曲のヴァイオリンのメロディーを支えるハープの上向音を続けて演奏する(練習番号12の3小節目)などの習慣的な変更箇所も、従来通りに演奏していました。
カーテンコールの最後でサッカーボールを蹴る仕草をして見せたミッキー、終演後ひょいと顔を見せたホール前の飯店で、“真ん中のハ調が良かったろう、序ハ急!!” なんてダジャレも健在。ダンスも舌も絶好調のマエストロでした。
いつも、日本フィルの演奏会評楽しみです。遠方でいけないためです。
5月の演奏会評読みました。コバケン、私も大好きですが。朝比奈隆と新日本の関係のように、コバケンと日本フィルがなるのが、お互い幸せなのかな、などど考えてしまいました。2ちゃんねるでの、日本フィル批判、許せない気がしています。これからも、楽しい批評期待しています。
いつも、日本フィルの演奏会評楽しみです。遠方でいけないためです。
5月の演奏会評読みました。コバケン、私も大好きですが。朝比奈隆と新日本の関係のように、コバケンと日本フィルがなるのが、お互い幸せなのかな、などど考えてしまいました。2ちゃんねるでの、日本フィル批判、許せない気がしています。これからも、楽しい批評期待しています。