2010クラシック馬のプロフィール(9)

先週のアイルランド・ダービーは、オブライエン厩舎のワン・ツー・スリーに終わりました。今回は、ムルタ騎手が見事に的中させた優勝馬ケープ・ブランコを取り上げます。

ケープ・ブランコ Cape Blanco は、父ガリレオ Galileo 、母ローレル・ディライト Laurel Delight 、母の父プレシディウム Presidium という血統。

母ローレル・ディライトは1990年生まれの栗毛馬。現役時代は25戦4勝という成績でしたが、内容を詳しく紹介する必要があるでしょう。

現役時代はジャック・ベリー厩舎に所属し、2歳時は7戦2勝2着1回3着1回。勝鞍は5月ウォーリックの新馬戦と9月ウルヴァーハンプトンのナーザリー、いずれも5ハロンのレースでした。(6ハロン戦を一度だけ経験)

3歳時は4戦して未勝利2着2回に終わりますが、これまた全て5ハロンのレースでした。
4歳時にも全て5ハロンで4戦し1勝2着1回という成績でしたが、実は4歳の春にセルカーク Selkirk に種付けし、受胎してのレースだったのです。

彼女の競走馬としての能力は母になってからが最も充実していました。ニューキャッスルのゴスフォース・パーク・カップで2着したあと、7月のヨークでハンデキャップ戦に勝利します。
このあと生涯に一度だけパターン・レースに挑戦、グッドウッドのキング・ジョージ・ステークスでは能力を発揮できず着外に終わりました。

翌年(1995年)セルカークのセルカークの牝馬を出産しますが、1996年には再びベリー師の下で競走馬として復帰し、6歳時は8戦1勝3着2回。この6戦も全て5ハロンのスプリントでした。
更に7歳の春にはエンペラー・ジョーンズ Emperor Jones を受胎したまま出走して2戦未勝利、6月20日のレースを最後に完全に競走馬からは引退します。

彼女の繁殖成績の概要は以下の通り。

1995 ローレル・プレジャー 牝(父セルカーク) イギリスとスウェーデンで勝馬
1998 スパスキー Spassky せん(父エンペラー・ジョーンズ) 3勝馬
1999 ミスター・オブライエン Mr. Obrien せん(父ムカダーマー Mukaddahmah) 25戦8勝、アメリカでディクシー・ステークス(GⅡ、9ハロン)に勝った他、11ハロンのGⅠ戦(ユナイテッド・ネイションズ・ハンデ)で2着の実績
2000 コー・タオ Koh Tao 牝(父タートル・アイランド Turtle Island) 未出走
2002 フォレスト・ディライト Forest Delight 牝(父シンコウフォレスト Shinko Forest) 未勝利
2003 ローレル・ラッシー Laurel Lassie 牝(父シンコウフォレスト) 不明
2004 シンコウ・ディライト Shinkoh Delight 牡(父シンコウフォレスト) 不明
2005 サファリ・タイム Safari Time 牝(父デーンタイム Danetime) 未勝利
2006 ケープ・ブランコ

母ローレル・ディライトはタフなスプリンターという競走実績ですが、産駒はミスター・オブライエンにしても本稿のケープ・ブランコにしても、父馬の距離適性を柔軟に反映する傾向があるようです。

2代母はフードロイヤー Foudroyer (1980年生まれ、父アルタイウス Artaius)。競走馬としては2戦しただけですが、代表産駒として挙げられるのがパリス・ハウス Paris House でしょう。

パリス・ハウスもジャック・ベリー調教師が手がけた馬で、2歳時にGⅡのフライング・チルダース・ステークス(ドンカスターの5ハロン)に勝ってパターン・レース勝馬となります。
3歳時の勝鞍はリステッド戦だけでしたが、4歳時はパレス・ハウス・ステークス(ニューマーケットのGⅢ)とテンプル・ステークス(サンダウンのGⅡ)のパターン・レースに連勝しました。
他にもナンソープ・ステークスで2着2回という実績を残し、ニュージーランドで種牡馬入りした典型的なスプリンター、古馬になって充実するタイプと言えましょう。

フードロイヤーの産駒は、ベリー師が手掛けたパリス・ハウス、ローレル・ディライトの他にもマカウ Macau 、ぺティテッセ Petitesse などスプリントの距離で活躍した馬が目立ちます。
フードロイヤーはその後インドに輸出されましたが、彼の地での成績は調べが付きませんでした。

更に遡って3代母フードル Foudre は1マイル4分の1戦に勝った平凡な馬。彼女のフードロイヤーの他に残した唯一の馬は中距離のステイヤーだったマル・ハウス Mull House 。

ケープ・ブランコの4代母ライテッド・ランプ Lighted Lamp は優秀な繁殖牝馬で、多数の優れた競走馬を輩出しています。
ステイヤーのトーラス Torus (愛セントレジャー2着) 、7ハロンから10ハロンまでに活躍したライテッド・グローリー Lighted Glory (サン=タラリ賞2着)、優れたステイヤーのキング・リュティエ King Lutier (ケルゴレー賞勝馬)等々。

ライテッド・ランプからは、ヨークシャー・カップの覇者マウンテン・キングダム Mountain Kingdom や、2000メートルのGⅠ馬クール Cool (マンハッタン・ハンデ勝馬)が出ていることにも注目すべきでしょう。

以上、ケープ・ブランコの牝系は、一見するとスプリンター牝系のようにも見られるのですが、その内容を精査するとスタミナも十分にあり、たとえスプリンターでも息長く活躍するタイプが多いことに気が付きます。

ケープ・ブランコはスタミナの源とも呼べるガリレオ(英・愛ダービー、キングジョージと連勝)の仔。これまで唯一の敗戦は、能力をほとんど出せなかった仏ダービーだけ。
その血統から判断すれば、古馬になってからも着実に成長していくタイプであろうことが予測されます。

ファミリー・ナンバーは、1-S 。ダービー馬ロイヤル・パレス Royal Palace の牝系でもあるのですね。

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