エクリプス・ステークス
昨日の土曜日は、ヨーロッパ3場でパターン・レースが行われました。いよいよ夏競馬の本格的なスタートです。
まずはサンダウン競馬場の中距離GⅠ、エクリプス・ステークス(GⅠ、3歳上、1マイル2ハロン7ヤード)から。
去年はシー・ザ・スターズ Sea The Stars とリップ・ヴァン・ウィンクル Rip Van Winkle の対決で沸いたエクリプスですが、今年は多数登録していたオブライエン厩舎が最終的に1頭に絞り込んでしまったため、量的にも質的にも寂しいGⅠ戦になってしまいました。
6頭がスタートに向かいましたが、マワテーク Mawatheeq がゲートインを拒否、同馬の発走除外により5頭立てのレースとなってしまいます。
出走馬中GⅠ馬は2頭、去年のチャンピオン・ステークスに勝ったトゥワイス・オーヴァー Twice Over が13対8の1番人気。
もう1頭のGⅠ馬は、今年3月にドバイのシーマ・クラシックを制したダー・レ・ミ Dar Re Mi 。これが4か月振りの実戦とあって7対2の2番人気です。
これといった逃げ馬不在。スローペースが予想される中、仕方なくダー・レ・ミが先頭に立ち、トゥワイス・オーヴァーが並ぶように追走する展開で始まりました。
早めにダー・レ・ミを交わして先頭に立ったトゥワイス・オーヴァーが一旦は3馬身ほど他馬を引き離しましたが、最後の直線で33対1の最低人気スライ・プートラ Sri Putra の猛追でリードを無くしながらも半馬身凌いだところがゴール。
3着には更に半馬身差でオブライエン厩舎のヴァイカウント・ネルソン Viscount Nelson が入りました。ダー・レ・ミは更に5馬身離されて4着敗退。
2着のスライ・プートラは、前々走アール・オブ・セフトン・ステークス(GⅢ)に勝ったものの前走のブリガディア・ジェラード・ステークスではドン尻負けしていた馬。
また3着のヴァイカウント・ネルソンはオブライエンが唯1頭出走に踏み切った、出走馬中唯一の3歳馬で、クラシックに3戦連続で出走していた馬です(1000ギニー着外、愛2000ギニー3着、仏ダービー5着)が、一息足りない成績。
勝ったトゥワイス・オーヴァー自身も、去年のエクリプスは10頭立て7着でした。
以上から判断して、今年のエクリプス・ステークスのレヴェルは必ずしも高いとは言えないでしょう。
トゥワイス・オーヴァーはヘンリー・セシル師の管理馬、鞍上はトム・クイーリー。オーナーはカーリッド・アブダッラー。
アブダッラーにとっては1986年のダンシング・ブレイヴ Dancing Brave 以来の2勝目。クイーリー騎手はエクリプス初制覇です。
セシル師にとっては何と32年振り、4度目のエクリプス制覇となります。1969年のウルヴァー・ホロウ Wolver Hollow 、1976年のウォロウ Wollow 、1978年のガンナー・ビー Gunner B に次ぐもの。
ウルヴァー・ホロウに騎乗したのは伝説的名手レスター・ピゴット、ウォロウはランフランコの父であるジャンフランコ・デットーリの騎乗で、そしてガンナー・ビーにはジョー・マーサーが騎乗していました。
マーサーはブリガディア・ジェラードとのコンビで知られたジョッキーで、何ともセクシーな声が魅力的でしたっけ、ね。
いずれにしても紆余曲折を経、癌闘病中の師に暖かい拍手が贈られたのは当然のことでしょう。
サンダウンの第1レースは、ザ・スプリント・ステークス(GⅢ、3歳上、5ハロン6ヤード)。
1頭取り消しが出て、6頭立てで行われました。
スタート良く飛び出したボウルド・ムーヴァー Bould Mover が強いペースで引っ張り、内を進んだグループ・セラピー Group Therapy との一騎打ちに見えた場面もありましたが、最後方に待機した1番人気(15対8)のトリプル・アスペクト Triple Aspect の末脚が切れ、グループ・セラピーに半馬身差を付けて優勝。
3着は更に2馬身4分の1差でボウルド・ムーヴァーが粘り込みました。
勝馬の調教師はウイリアム・ハッガス、勝利騎手はライアム・ジョーンズ。
4歳馬トリプル・アスペクトは、これが6勝目。2歳時にシャンティーでアレンベルク賞(GⅢ)に勝っており、パターン・レースは2勝目となります。
去年のこのレースはイアリソス Ialysos の2着していましたから、2年越しの勝利でもありました。
所変って、ヘイドック競馬場ではランカシャー・オークス(GⅡ、3歳上牝、1マイル3ハロン200ヤード)が行われました。オークスとは言っても古馬にも開放された一戦です。
2頭が取り消し、10頭立て。3歳馬の出走は2頭だけでしたが、結果も古馬が貫禄を見せ付けています。
優勝は7対2で2番人気のバーシバ Barshiba 。4分の3馬身2着に3対1の1番人気に支持されたポリーズ・マーク Polyy’s Mark が入り、更に1馬身半差3着にレディー・ジェーン・ディグビー Lady Jane Digby の順。
勝ったバーシバは、デヴィッド・エルスワース厩舎所属。騎乗したヘイリー・ターナーは女性騎手です。
スタートして直ぐに先頭に立ち、巧みなペース配分で逃げ切ってしまいました。
最後は入れ替わり立ち替わり後続馬が追い上げましたが、錚々たる男性騎手を寄せ付けなかった剛腕は確かなものです。
海を渡ってフランスは、ロンシャン競馬場。この日のパターン・レースは2鞍です。
まずダフニス賞(GⅢ、3歳牡せん、1800メートル)は6頭立て。1番人気は、デュプレ厩舎のメロン・マルティニ Mellon Martini の13対10でした。
スタート良く飛び出した3対1のエメラルド・コマンダー Emerald Commander 、一旦ピンク・ジン Pink Gin の2番手に控え、ゴール前300メートルで先頭を奪い返しての快勝です。
本命メロン・マルティニはやや癖が悪く、最後方からしかケイバ出来ないタイプ。最後でウェルシー Wealthy と共に強烈に追い込みましたが、半馬身及ばず2着。写真判定の結果、メロン・マルティニとウェルシーは同着という結果になっています。
英国からの挑戦で勝ったエメラルド・コマンダーは、ゴドルフィンの馬。サイード・ビン・スロール師が管理し、デットーリが騎乗していました。
ゴドルフィンとしては2003年に続く2勝目ですが、総帥であるシェイク・モハメド殿下の所有としては1991年、1992年、2002年、2009年に続く通算6勝目でもあります。
固い馬場が苦手な同馬にとって、この日の朝の雨が味方したとも言えましょうか。ゴドルフィンにとっては相性の良いレースです。
エメラルド・コマンダーはかつてリチャード・ハノン厩舎に所属していましたが、秋にゴドルフィンにトレードされ、クリテリウム・インターナショナルで2着(勝馬はヤン・フェルメール Jan Vermeer)していた馬。
今シーズンはポール・ド・ムーサック賞(GⅢ)で3着し、これがシーズン2戦目でした。
最後はポルト・マイヨー賞(GⅢ、3歳上、1400メートル)。11頭立ての1番人気は、3歳牝馬のジョアンナ Joanna の6対4。
最後は3頭の大接戦となりましたが、ジョアンナが見事期待に応えて勝利をもぎ取っています。
2着は首差でサリュー・ラフリケーン Salut L’Africain 、3着も首差でラヴレース Lovelace の順。
レースは、2頭出走していた3歳馬のもう1頭で3番人気のポエツ・ヴォイス Poet’s Voice が逃げましたが、直線で失速。替って最後方から進んだジョアンナが、直線早めに追い上げてのタイミング良い勝利でした。
馬主ハムダン・アル・マクトゥーム、調教師ジャン=クロード・ルジェ、騎手クリストフ・スミオンの3者にとってこのレース初優勝です。
ジョアンナは、2歳時マルセル・ブーサック賞で3着。今シーズンはアンプルーダンス賞に勝った後、フランス1000ギニーで3着し、前走サンドリンガム賞に優勝。極めて堅実な成績を残しています。
今シーズンの4戦は、いずれもスミオンが手綱を取っている牝馬。
今年のRoyalAscotのTheQueen’s vase (G3)でGOS君の担当馬MIKHAIL GLINKAが勝ったそうです。YEATS引退の後気が抜けていたようですが。
最終日第一レースには娘の担当馬ESKIMOが出走。
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