ジャン・プラ賞

先週末のフランス。土曜日はロンシャン競馬場でパターン・レースが行われましたが、日曜日はシャンティー競馬場に場所を替えて3鞍のパターン・レースが行われています。

メインはジャン・プラ賞(GⅠ、3歳、1600メートル)。せん馬には出走権がなく、牡馬と牝馬のためのマイル戦。両性ギニーの再戦となるGⅠ戦ですが、今年出走してきた8頭は全て牡馬。牝馬の参戦はありませんでした。

1番人気はフランス・クラシックの2冠馬ロぺ・デ・ヴェーガ Rope De Vega 、同じ馬主のドイツ馬アルテア・スター Altair Star をペースメーカーに配して万全の態勢で臨みました。オッズも1本被りの9対10、2倍を切る圧倒的な支持です。

レースはアルテア・スターが引っ張り、ロぺ・デ・ヴェーガは2番手で順調に見えました。ところが何が起きたか、直線でロぺ・デ・ヴェーガはもがき始め、ズルズル後退してペースメーカーも交わせないままドン尻8着と期待を裏切ってしまいます。

優勝は、3番手から抜け出したディック・ターピン Dick Turpin 。2着シユーニ Siyouni に4馬身もの大差を付ける圧勝でした。3着は頭差でエクステンション Xtension の順。

ディック・ターピンは、改めて紹介するまでもなくリチャード・ハノン厩舎の管理馬。今回も主戦のリチャード・ヒューズ騎乗で臨みました。
ここ3戦はいずれもGⅠ戦で2着続き。終に手にしたGⅠ馬の栄冠です。

同馬の戦績を振り返れば、シーズン初戦のグリーナム・ステークスで同厩のキャンフォード・クリフス Canford Cliffs を破って優勝。
本番2000ギニーでもキャンフォード・クリフスに先着しながら、マクフィ Makfi の2着に惜敗。
遠征した仏2000ギニーでも能力を出し切りながら、ロぺ・デ・ヴェーガの2着。
ギニー決戦となったロイヤル・アスコットのセント・ジェームス・パレス・ステークスではマクフィを破ったものの、僚友キャンフォード・クリフスの2着に敗退。

そして今回、宿敵ロぺ・デ・ヴェーガを破ってのGⅠ初制覇です。

このあとは古馬との混合戦に突入、サセックス、フォレ、ムーランなどが計画に挙がるでしょうが、ハノン師としては、キャンフォード・クリフス、パコ・ボーイとの兼ね合いが難しい所。各馬のオーナーと相談の上、また馬の調子を見ながらの判断が迫られましょう。

この日のジャン・プラ、セント・ジェームス・パレスで3着に入ったエデリー厩舎のハーツ・オブ・ファイア Hearts of Fire も遠征しての4着。
2着のシユーニはセント・ジェームス・パレス4着でしたし、3着のエクステンションも英国(クライヴ・コックス厩舎)からの挑戦で、2000ギニー4着、愛2000ギニー5着の馬。

更にドイツ2000ギニーに勝ったフローズン・パワー Frozen Power が5着と、国際的かつレヴェルの高い一戦だったと評価すべきでしょう。こんな中でのディック・ターピンの圧勝は見事でした。

ジャン・プラの前に行われたボア賞(GⅢ、2歳、1000メートル)。フランスで行われるシーズン最初の2歳馬によるパターン・レースです。

8頭が出走。3頭の牡馬に対し牝馬が5頭というメンバーは、この時期では牝馬の方が仕上がりが早いことを反映しているのでしょう。
27対10の1番人気も牝馬から、アガ・カーン所有のケラティーヤ Keratiya に期待が集まりました。

最後方で待機したケラティーヤ、ゴール前での強烈な差し脚を発揮し、最後は内から外に出したアイリッシュ・フィールド Irish Field と鼻面を並べてゴールイン。長い写真判定に持ち込まれます。
最終的なコールは、ケラティーヤがハナ差でアイリッシュ・フィールドを差切っての優勝。3着は2馬身差でローン・キャット Lone Cat が入りました。

惜しくも2着に負けたアイリッシュ・フィールドは、スペイン(デルチャー・サンチェス厩舎)からの挑戦で、マドリッドで2戦無敗の快速馬。
勝ったケラティーヤは、フランス・ローカル競馬を本拠とするジャン=クロード・ルジェ厩舎の管理馬で、クリストフ・ルメールが騎乗していました。

5月にボルドーの新馬戦に勝ち、6月はメゾン=ラフィットの条件戦で本命になり2着。この勝利で3戦2勝の成績となります。
ルジェ師の判断では、同馬は6ハロンまでの馬。この後はロベール・パパン賞かモルニー賞を目指す由。両方に使う可能性もあり、とのことでした。

もう一鞍のパターン・レースは、3歳牝馬のためのクロエ賞(GⅢ、3歳牝、1800メートル)。

9頭立てで行われ、ここも1番人気(9対10)に支持されたリリー・オブ・ザ・ヴァレー Lilly Of The Valley が順当に勝ち上がっています。
2着は1馬身半差でファデラ・スタイル Fadela Style 、更に2馬身差3着にドイツのマハマヤ Mahamaya という結果です。

リリー・オブ・ザ・ヴァレーは、カリオカ Carioca の逃げを6番手でマーク、あと1ハロンで抜け出しての快勝でした。2着も本命馬をマークして進んだ追い込み馬です。

勝馬は、ボア賞を制したルジェ厩舎の管理馬。師にとって、この日のパターン・レース・ダブル達成です。但し、こちらの騎手は同じクリストフでもスミオンの方。

リリー・オブ・ザ・ヴァレーは、去年の11月から数えて4連勝。徐々にクラスを挙げ、初兆戦でのパターン・レース優勝は、正に「勝ち上がり」という表現にピッタリでしょう。

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください