日本フィル・第259回横浜定期
4月以来の横浜です。2009-2010シーズンを締めくくるコンサート。このところ日本フィルの7月は広上の指揮と決まっているようで、年に一度の七夕再会でもあります。
それにしても蒸し暑い!!
ブラームス/大学祝典序曲
モーツァルト/ピアノ協奏曲第26番二長調K.537「戴冠式」
~休憩~
ベートーヴェン/交響曲第8番
指揮/広上淳一
ピアノ/辻井伸行
コンサートマスター/木野雅之
ソロ・チェロ/菊地知也
アメリカのコンクールに優勝してから大ブレーク中の辻井登場とあって、この定期は早くからチケットが完売していました。同じプログラムで前日行われた埼玉定期も同様だったとか。改めてマスコミの影響力の大きさに舌を巻きます。
この定期もメディアにとっては舌なめずりしたくなる材料。ホール入口には、カメラ取材が入る旨の貼り紙がありました。某民放(テレビ朝日か?)の取材で、8月8日にオンエアされる由。演奏そのものではなく、ドキュメントとしての放送です。
今回のソロは辻井のコンクール優勝以前から決まっていた人選ですから、広上を聴きたい小生にとってはチケット入手難が起きることを懸念。会員先行予約を利用して早めに入手しましたが、その時点でも座席は残り僅かでした。
曲目はウィーンの作曲家によるスタンダードなものばかりですが、中身は案外に地味、というのが広上らしい選曲です。ベートーヴェンの8番など名曲中の名曲でありながら、集客という意味では敬遠され勝ち。不適切な表現ながら、ソリスト人気の序に聴いてもらえるという意味ではタイムリーだったかも知れませんね。
冒頭のブラームス。これまた案外に人気の無い曲で、有名なブラームス指揮者でも振らない人もいるほど(フルトヴェングラーやカラヤン)。私の記憶を探しても、ナマで聴いた体験を見つけるのに苦労したほどです。
ヒョッとすると初体験? まさかぁ~。
オーケストラの編成はこの日最大。序曲だけで帰っちゃう楽員も多数いるのでは、と思いましたが、全員最後まで拘束される仕掛けになっていたようですな。
如何にも広上らしい、外連の無い端正なブラームス。もう少し面白くても良いかな、と感じられるほど。
楽員が大幅に減り、替って客席隅に2か所カメラが据えられて満場期待の辻井伸行登場。ハンデキャップを背負ったソリストなので、常時指揮者が手を携えて出入りします。
いわゆる戴冠式協奏曲、モーツァルトのピアノ協奏曲では最も有名とされていますが、それは過去のこと。最近では他の作品の人気に押されて演奏される機会が少なくなっているような気がします。
これまた何時聴いたか思い出せない名曲。
今回久し振りにナマ演奏に接し、改めて作品の素晴らしさに目を瞠りました。何よりオーケストラの充実した書法が見事。
もちろん広上のニュアンスの付け方、生き生きとした表情が卓越しているからでしょう。何気なく聴き過ごしてしまうフレーズにも命が吹き込まれている。こういうバックでソロを奏でられるソリストは幸せです。
辻井は以前にも聴いたことがありますが、ブレークしてからは初めて。コロコロと涼やかに流れる音に独特の個性が感じられます。
第2楽章が終わって、間髪を入れずに弾き始めたロンド。そのタイミングの良さに、このソリストの並々ならぬ音楽的センスを見出しました。
音楽性とテクニック。これに豊かな音色が加われば、更に上の活躍も夢じゃないでしょう。まだまだ演奏家としてはスタート地点に立ったばかりですから、じっくりと必要な要素を身につけて行って貰いたいと思います。
オーバーヒート気味の客席にショパンのマズルカがアンコールされました。作品24の1。
何度も何度も手を組んで登場する辻井と広上に暖かくも熱烈な拍手が贈られます。
私にとってのメインは、もちろんベートーヴェン。期待通り手応え十分な演奏です。
多分ベーレンライター版を使っていたと思いますが、スフォルツァートを強調し、多少は新しい演奏スタイルにも敬意を払った解釈のようにも感じられました。
第1楽章展開部、ホルンの不協和音(155小節)にドキッ!
第3楽章トリオ、チェロのオブリガートは菊地のソロで。他のチェロ・プルトは、コントラバスと同じピチカートのパートで。
恐らくここは、ホルンとチェロ・ソロの自由な二重奏に任せたのでしょう。福川/菊地によるムジチーレンということか・・・。
ベートーヴェン自身が演奏者の判断に任せているとは言え、珍しい処理のように思いました。
プログラムは終了しましたが、舞台裏で待機していた楽員たちが登場。中には本体には参加していなかったメンバーも加わってのアンコール。
マエストロから“あのね、涼しい奴” と短いアナウンスがあったのは、ルロイ・アンダーソンの「ブルー・タンゴ」。客席から“一緒に踊りたかった” とい声も聞かれた楽しいプレゼントでした。
でも、どこが涼しいんでしょうか。
終演後にロビーで行われたシーズンファイナルパーティーで、マエストロ自ら“すいません、ちっとも涼しくなかったですね。” と訂正が入ります。
パーティーでの演奏は、(美人)木管トリオによるイベールの5小品。ファゴット/田吉佑久子、クラリネット/八段悠子に、入団したばかりの横浜出身オーボエ/杉原由希子が華を添えました。
いつも、楽しい日本フィル情報有り難うございます。昔、定期会員の頃
アケ先生のシベリウスとか、思い出します。七番はよっかたです。