強者弱者(141)

なでしこの花

 此頃野になでしこの花あり。東京にありては目黒、大崎、大井の辺りすべて南郊の野に之を見るべし。情調を主とする邦人の趣味を最もよく代表したるものは此花なり。相模の國はなでしこの野なり。松生ふる岡の上に、波寄する砂の上に、白砂的皪する蛇籠の上に、炎天を旅する人の渇して水を思う時、一味の涼風を送るものは此花なり。

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なでしこ科の植物にはハコベやカーネーションも含まれますが、ここではカワラナデシコのことでしょう。単にナデシコと言えば淡い紅紫の可憐な花をつけるカワラナデシコのこと。
秋の七草の一つですが、実際には7月から咲き出します。現に今年も散歩の途中で見かけるようになりました。

「的皪」(てきれき)は、白く鮮やかに光る様を表します。

また「蛇籠」(じゃかご)とは、細く編んだ籠に小石を詰めたもので、川の護岸を守るために並べるもの。
100年前の目黒川を始めとする城南の河川は、この蛇籠で護岸工事をしていたものと思われます。近代都市のコンクリートによらない治水。ここにナデシコが着生して、見る人に涼を与えていた光景です。

詳しくはウィキペディアを。↓

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%9B%87%E7%AF%AD

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