グッドウッド2010・初日

今年もグローリアス・グッドウッドがやってきました。昨日(7月27日)から土曜日までの5日間、開催のタイトルにもなっているように、イギリスでも最も美しい季節に熱戦が繰り広げられます。
例によって今年もパターン・レースを中心にレポートしていきましょう。初日のパータン・レースは3鞍です。

ゴードン・ステークス(GⅢ、3歳、1マイル4ハロン)は最後のクラシックであるセントレジャーのトライアルと見做されている一戦。去年の覇者ハービンジャー Harbinger はセントレジャーを回避したものの、4歳になって充実、先日のキングジョージを圧勝して競馬ファンの度肝を抜きましたし、一昨年の勝馬コンデュイ Conduit は期待通りセントレジャーに優勝しています。今年の結果も大注目ですね。

1頭取り消しがあって10頭立て。確たる中心馬不在の中で4対1の1番人気に支持されていたのは、まだキャリアの浅いレベル・ソルジャー Rebel Soldier でした。

レースはコルシカ Corsica が逃げ、サーカムヴェント Circumvent が2番手追走で淡々と直線へ。4番手を追走し外に持ち出した本命レベル・ソルジャーが、更に外から猛烈に追い上げるダンディーノ Dandino の追撃を頭差抑え切ったところがゴール。1馬身4分の1差3着にはアークティック・コスモス Arctic Cosmos が入りました。2着は2番人気、3着も3番人気で、順当な結果です。

残念なのは、直線でゴドルフィンの期待フィルム・スコア Film Score が致命的な骨折で競走を中止したこと。鞍上のデットーリが無事だったのがせめてもの救いでしょうか。

レベル・ソルジャーはジェレミー・ノセダ厩舎、ライアン・ムーア騎乗。

ノセダ師は2006年にシックスティーズ・アイコン Sixties Icon でゴードン→セントレジャー・ダブルを達成していますから、これでこのトライアル2勝目となります。
しかし陣営では同馬は2000メートルがベストとの見解で、セントレジャーに登録はあるものの、今のところ出走させる予定はないようです。むしろ狙いはブリーダーズ・カップかカナダのインターナショナルの由。

レベル・ソルジャーは今シーズン、3歳になってからデビューした馬で、これで4戦3勝。前走はヨーク競馬場のハンデ戦での勝利で、パターン・レースは初挑戦で初勝利です。

騎乗したムーアは、去年(ハービンジャー)、一昨年(コンデュイ)に続いて3連覇。

一方2着のダンディーノもパターン・レース初挑戦。前走ロイヤル・アスコットのハンデ戦(キング・ジョージ5世ステークス)を含めて4連勝してきた上がり馬で、こちらもセントレジャーの伏兵として注目されそうな存在です。

続いてベットフェアー・カップ。ルノックス・ステークス(GⅡ、3歳上、7ハロン)として知られているレースで、2000年創設の歴史の浅い7ハロン戦。

12頭立ての1番人気(7対2)は、フランスから遠征してきたダルガー Dalghar 。パレ・ロワイヤル賞(GⅢ)の勝馬で、前走ロイヤル・アスコットのクィーン・アン・ステークスは5着でした。

デューネライト Dunelight の逃げを抑え切れないほどの手応え(ジェラール・モッセ騎乗)で2番手追走したダルガー、直線早めに先頭に立って逃げ込みを図ります。
しかしレースはここから。中団に待機した2番人気(13対2)のロード・シャナキル Lord Shanakill が、大外から追い込むキャット・ジュニアー Cat Junior を頭差抑えて優勝。ダルガーは最後に交わされて、半馬身差3着の惜敗でした。

ダルガーを管理するアラン・ロワイヤー=デュプレ師は、先頭に立つのが早過ぎた、と一寸悔しそうなコメントで応えています。

ロード・シャナキルは去年の半ばまでカール・バーク厩舎に所属していた馬。師の元でGⅠ(ジャン・プラ賞)にも勝っていましたが、バーク師が例の八百長疑惑により1年間のライセンス停止となり、アメリカのリチャード・マンデラ厩舎に転厩。マンデラの元でブリーダーズ・カップ・スプリントに挑戦したものの結果を残せず、再度転厩して現在のヘンリー・セシル厩舎に所属となった経緯があります。

新厩舎での今シーズンは、1マイル(ロッキンジ・ステークス)でもスプリント(ゴールデン・ジュビリー・ステークス)でも一息足りず、今日の7ハロンで本来の実力を発揮した形。
騎乗したトム・クィーリー騎手は、“GⅠホースであることを忘れてもらっちゃ困るね” と、誇らしげでした。

7ハロンという微妙な距離では、ロンシャンのフォレ賞が最高格(GⅠ)のレース。ロード・シャナキルは当然ながらここを狙ってくるでしょうね。

最後は直線コースで行われる2歳戦、モールコム・ステークス(GⅢ、2歳、5ハロン)。

12頭立て。2歳のパターン・レースは独占の感あるリチャード・ハノン厩舎のゼベデー Zebedee が2対1の1番人気に支持されていました。
レース実況のアナウンサーが、“またハノン、またもやヒューズだぁぁ~” と絶叫したほど、見事に人気に応えています。

首差2着に2番人気のストーン・オブ・フォルカ Stone Of Folca 、頭差3着がチューズ・ワイズリー Choose Wisely と接戦でしたが、結果は人気どおり。ゼベデーは着差以上に強い勝ち方と見ました。

ゼベデーは、これで5戦4勝。前々走のロイヤル・アスコット(ノーフォーク・ステークス)での5着が唯一の敗戦ですが、そのときは前に行っての競馬。ハノン師の指示だったそうですが、騎乗したリチャード・ヒューズは、“あのときはボスが間違ったのさ” と同馬の末脚に自信満々。今回はヒューズ得意の最後方待機から大外に回しての強烈な末脚勝負で、アスコット4着のストーン・オブ・フォルカに雪辱を果たしています。

5ハロンという短距離で後方一気というレースは、関係者にとっても馬券を買ったファンにとっても気を揉ませるもの。そんな中でも、今回は特別に心臓に悪いレースだったようです。
改めてヒューズの豪胆にスリリングな瞬間を楽しませてもらいました。

ハノン/ヒューズ・コンビにとって、モールコム・ステークスは去年のムッシュ・シュヴァリエ Monsieur Chevalier に続く2連覇。ハノン師にとっては3度目の栄冠となります。

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