ヴィジョン・デ・タの復活宣言

昨日のヨーロッパは全域で雨、ドーヴィルもニューバリーも重馬場で行われました。先ずは第3週目に入ったフランス夏競馬の祭典、ドーヴィルから。

土曜日のドーヴィルは全部で7レース。第4~第6レースが「インターナショナル・ジョッキーズ・チャレンジ」と題されたメイン・イヴェントになっており、日本からは内田博幸騎手が参戦していました。内田騎手は2レースに騎乗し、残念ながら10着・8着と振るいませんでしたが、ドーヴィルの華やかな雰囲気を楽しんだことと思います。

ということでこの日は第1レースと第2レースがパターン・レース。珍しく前座扱いの重賞となっていました。

最初に行われたゴントー=ビロン賞(GⅢ、4歳上、2000メートル)にはアルゼンチンの強豪インターアクション Interaction が登録してきましたが、馬場状態を嫌って取り消し、10頭立てで行われています。
イーヴンの1番人気に支持されたのは、意外にも前走ヴィシー大賞典を制したエージェント・シークレット Agent Secret 。その勝ちっぷりの良さと2着を外していない堅実さが買われたのでしょう。

しかし優勝は、久し振りのヴィジョン・デ・タ Vision D’Etat でした。一昨年の仏ダービー馬で、既にGⅠに4勝している実力馬。3月にドバイ・ワールド・カップで負傷して以来の休養明けが嫌われたのか、37対10と実績の割には人気を落としていました。
2着は1馬身差でドイツ調教馬のブダイ Budai 、更に1馬身半差3着には逃げたシラス・デゼーグル Cirrus des Aigles の順。
本命エージェント・シークレットは7着と期待を裏切り、初めての着外惨敗です。

ヴィジョン・デ・タはオリヴィエ・ペリエ騎乗。管理するエリック・リボー調教師も高らかに同馬の復調宣言を出しています。
やはりヴィジョン・デ・タの最適距離は2000メートルなのか、この後はチャンピオン・ステークスに向かい、最終的には香港カップ2連覇を目指す予定です。

3着に健闘したシラス・デゼーグルは、このあとフワ賞(凱旋門賞のトライアル)を使ってジャパンカップに参戦したい意向。こちらも最終的には香港カップが目標だそうです。
日本のファンは、シラス・デゼーグルに注目。先行して逃げ粘るタイプですぞ。(調教師はバランド・バルブ女史)

続いて行われたポモヌ賞(GⅡ、3歳上牝、2500メートル)。ここでも出れば有力視されるはずのダルヤカナ Daryakana が重馬場を嫌って取り消し、10頭立てで行われました。

5対2の1番人気は、サン=クルー、ケルン、リヨンと転戦しながら3連勝中のパール・バンクス Pearl Banks でしたが、本命馬はここでも期待に応えられず5着敗退です。

優勝は11対1のパーンテュール・レア Peinture Rare 、1馬身差2着に英国から遠征したハイ・ヒールド High Heeled が入り、ハナ差3着に妊娠中ながら逃げ粘って健闘したバーン・ザ・ブリーズ Burn The Breeze の順。
イギリスからは3頭が参戦していましたが、イースタン・アリア Eastern Aria は4着、ポリーズ・マーク Polly’s Mark が10着ドン尻負けという結果でした。

パーンテュール・レアはエリー・ルルーシュ厩舎、アンソニー・クラスタス騎乗。重馬場を得意とするウイルデンシュタイン所有の4歳牝馬。

名前から連想されるように、凱旋門賞馬パーントル・セレーブル Peintre Celebre の半妹という血統で、父はサドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells というエリートです。
この兄弟姉妹は全てがパターン・レースかリステッドの勝馬で、パーンテュール・レアはこれがパターン・レース初勝利、ファミリーの伝統をしっかりと受け継ぎました。
2400メートルこそ最適の距離とあって、秋はヴェルメイユ賞に向かう予定です。

さてイギリスのニューバリー競馬場も重馬場。多くの馬が取り消すほどの馬場状態でした。

ジェフリー・フリーア・ステークス(GⅢ、3歳上、1マイル5ハロン61ヤード)は1頭取り消して8頭立て。3歳上の条件ながら、3歳馬の出走はありません。
1番人気(6対4)には去年の勝馬でセントレジャー2着の実力馬カイト・ウッド Kite Wood が支持を集め、ここでは格上という存在です。

デットーリ騎乗で快調に逃げていたかに見えたカイト・ウッドでしたが、あと3ハロン地点でズルズル後退、最後は馬を止めるばかりの6着惨敗に終わりました。前走(ゴールド・カップ7着)に続く凡走で、馬自体に具合が悪いところがあるのかも知れません。

優勝は中団からスルスルと内に入って脚を伸ばしたサン・フロンティエー Sans Frontieres 。2着ラーヘブ Laaheb に2馬身4分の1差を付ける快勝です。更に1馬身4分の1差3着にサプタパディ Saptapadi の順。勝馬は3対1のオッズでした。

サン・フロンティエーを調教するジェレミー・ノセダ師、レース前は重馬場、長距離、格上挑戦といくつもの不安を抱えていたそうですが、全て杞憂に終わったようです。
最後は外によれ、2・3着馬に多少影響があったかも知れませんが、ゴール前ではまだまだ余裕を残した楽勝です。これで次なる目標の愛セントレジャーにも自信が生まれたでしょう。

鞍上はジョニー・ムルタ。この日はドーヴィルの「インターナショナル・ジョッキーズ・チャレンジ」に参加するはずでしたが、ノセダ師からの誘いで急遽予定変更。その甲斐があったと言える騎乗でしたね。

ニューバリーのもう一鞍は、直線コースのハンガーフォード・ステークス(GⅡ、3歳上、7ハロン)。
当初10頭の登録がありましたが、何と3頭が取り消して7頭立て。5対2の1番人気にはパターン・レースの常連ウークバー Ouqba が挙げられています。

ここも人気馬は敗退。優勝は、皮肉にもジェフリー・フリーアで期待を裏切ったゴドルフィンのシェークスピアリアン Shakespearian でした。オッズは3対1。
2着は1馬身半差でキャット・ジュニアー Cat Junior 、更に半馬身で本命ウークバーの順。

出走馬中唯一の3歳馬シェークスピアリアンは、2歳時のソラリオ・ステークス(GⅢ)に続いて二つ目のパターン・レース勝利。得意の重馬場にも恵まれました。

騎乗したデットーリは、“これといった先行馬がいなかったので、思い切って行った” という作戦が見事的中しての逃げ切り勝ちです。デットーリはこの日の第2レースにも勝っていてダブル達成。

なお余談ですが、この日、ニューマーケット競馬場で芦毛馬限定のハンデ戦が行われました。その名もグレイホース・ハンデキャップと言い、9頭の芦毛馬によるレース。人気薄の8歳馬が勝ちましたが、全馬芦毛というのは中々の見ものでした。UKレーシングでテレビ放映されていましたから、興味のある方は自分でネット検索して御覧なさいな。

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