8月最後の日曜日
昨日は8月最後の日曜日、英愛仏3カ国で8レースものパターン・レースが行われました。イギリスから行きましょうか。
グッドウッド競馬場は所謂オーガスト・ミーティングで、前日に続いてのパターン・レースです。英国には珍しい日曜日の重賞は、シュープリーム・ステークス(GⅢ、3歳上、7ハロン)。
6頭立て、5対2の1番人気はノセダ厩舎のヒマラヤ Himalaya です。
しかし優勝は7対2、芦毛の4歳牝馬トロピカル・パラダイス Tropical Paradise でした。1馬身4分の1差2着にファースト・シティー First City 、更に4分の3馬身で本命ヒマラヤの順。
トロピカル・パラダイスはピーター・ウインクワース厩舎、イアン・モンガン騎乗で、前走グッドウッド・グローリアス開催でのオーク・トゥリー・ステークス(GⅢ)に続くパターン・レース2連勝です。
その時にも紹介したように、引退を考えていた矢先の重賞連覇、陣営では予定を変更して来シーズンも現役続行に踏み切ったようです。
次はアイルランドのカラー競馬場。この日はパターン・レース4鞍の豪華版で、フェスティヴァルの様相です。
レース順にいくと、先ずラウンド・タワー・ステークス(GⅢ、2歳、6ハロン)は2004年からGⅢに格上げされた2歳戦。
9頭立ての1番人気は、未勝利ながらパターン・レースで善戦が続くボルジャー厩舎のグロール・ナ・マラ Glor Na Mara でした。
ゴール直前では漸くグロール・ナ・マラが初勝利を飾るかに見えましたが、先手を奪った英国馬ディングル・ヴュー Dingle View が22対1の大穴を開けました。2着グロール・ナ・マラは又しても頭差及ばず。2馬身差3着にはハノン厩舎のビッグ・イシュー Big Issue 。
ディングル・ヴューはデーヴィッド・エヴァンズ厩舎所属の牝馬で、これが4勝目。パターン・レースは初勝利です。騎乗していたのは、女流騎手のキャサリン・ガノンさん。
二つ目のパターン・レースは、ダンス・デザイン・ステークス(GⅢ、3歳上牝、1マイル1ハロン)。2005年創設で、去年からGⅢに上がった一戦ですね。
今年は1頭の取り消しがあって12頭立て。7対2の1番人気は、去年の6月以来、1年2か月振りの長期休養明けとなるGⅠ馬ラッシュ・ラッシズ Lush Lashes でした。
しかしこれも波乱。優勝は16対1のオバマ・ルール Obama Rule で、1馬身差2着にシャリーン Shareen 、頭差3着がミス・ラー・ディ・ダ Miss Laa Di Da という結果になりました。ラッシュ・ラッシズは中団を進みましたが、切れ味が不足しての4着。やはり休み明けが響いたのでしょう。
オバマ・ルールを管理するのは女流調教師のジョアンナ・モーガン女史。後方一気の好騎乗を見せたのは、デルカン・マクダナーくん。
これが未だ3戦目というオバマ・ルール、パターン・レースで初勝利を挙げる快挙ですが、16対1のオッズも当然と言えるでしょうね。
続いてはスプリンターのためのフライング・ファイヴ・ステークス(GⅢ、3歳上、5ハロン)。スプリント戦はどれも多頭数になりますが、今年は1頭取り消して15頭立て。サンダウンのスプリント・ステークス(GⅢ)に勝っているトリプル・アスペクト Triple Aspect が7対2の1番人気に支持されていました。
しかしここも本命馬は期待に応えられず、優勝は9対2のアストロフィジカル・ジェット Astrophysical Jet の楽勝。2着争いは4頭がほとんど同時にゴールインする激戦で、写真判定の結果、2馬身差の2着はタックス・フリー Tax Free で、以下頭差3着にサント・パードレ Santo Padre の順。
トリプル・アスペクトは更に首・頭の差で5着惜敗でした。
アストロフィジカル・ジェットはエド・マクマホン厩舎、グレアム・ギボンズ騎乗。陣営ではシーズン当初はクラシック候補と考えていた3歳牝馬でしたが、1マイルはスタミナに問題があることが判って路線を変更してきた経緯があります。
来年は最初からスプリント路線をつっ走る計画。いや、まだ今シーズンも残っていますね。
そして日曜日のメインは2歳牝馬のGⅠ戦、モイグレア・スタッド・ステークス(GⅠ、2歳牝、7ハロン)。
12頭が出走し、イーヴンの断然1番人気を集めたのが、目下のところ1000ギニーの1番人気で英国から参戦してきたハノン厩舎のメモリー Memory 。アルバニー・ステークス(ロイヤル・アスコット)とチェリー・ヒントン・ステークス(ニューマーケット)を含め3戦無敗のチャンピオンです。
ところがこの日は本命馬の厄日なのか、大荒れの結果になってしまいました。
10対1のミスティー・フォー・ミー Misty For Me の逃げ切り勝ち。1馬身差2着がラーフィング・ラッシズ Laughing Lashes 、首差3着にキッサブル Kissable が飛び込んでいます。
メモリーは定位置の後方待機策を取りましたが、あと2ハロンで反応が無く、ヒューズ騎手は無理をしませんでした。結果6着惨敗。
ミスティー・フォー・ミーはエイダン・オブライエン厩舎、シーマス・へファーナン騎乗。オブライエン師はこのレースに4頭を出走させていましたが、軍団のエース格はムルタ騎乗のトゥギャザー Together 。こちらは4着でしたから、ミスティー・フォー・ミーは期待以上に走った、ということになるでしょうか。
どちらにしても、しっかりGⅠ戦を持って行くあたりは流石にオブライエン。
この結果、各ブックメーカーは来年の1000ギニーに向けたオッズを大幅に入れ替えました。
メモリーは1番人気から落とされて8対1、替って前日にグッドウッドでプレスティージ・ステークスに勝った セイスキンズ・セオリー Theysken’s Theory が6対1の1番人気に上がっています。ミスティー・フォー・ミーは12対1。
メモリーの敗因は特定されていませんが、初めてとなった7ハロンが長過ぎたのかも。次走チーヴリー・パーク・ステークスでのレース振りが注目されます。
最後はフランスのドーヴィル競馬場。長かった夏の開催もフィナーレを迎え、パターン・レースは3鞍が組まれていました。
ここもザッと紹介していきましょう。
カンセー賞(GⅢ、3歳上、1600メートル)は7頭立て。6対5の1番人気に支持されたエルーシヴ・ウェイヴ Elusive Wave が期待に応えています。
1馬身半差2着にヴェルティジヌー Vertigineux 、更に1馬身半差3着が逃げたアラジン Arasin と順当な結果。
ジャン=クロード・ルジェ厩舎、イオリッツ・メンディザバル騎乗のエルーシヴ・ウェイヴは、去年の仏1000ギニー以来の勝利。ここは2番手から抜け出す貫禄の優勝で、まだ余裕のあるレース内容でした。クラシック馬の復活に期待したいところ。
ドーヴィル大賞典(GⅡ、3歳上、2500メートル)は10頭立て。13対10の1番人気は前走ユージェーヌ・アダム賞(GⅡ)に勝ったシムラーン Shimraan でしたが、4着に敗退。
優勝はパターン・レース初挑戦のマリヌース Marinous で22対1の大穴。半馬身2着がイギリスから遠征したレッドウッド Redwood 、更に半馬身差3着にラ・ブーム La Boum の順。
本命シムラーンは4着に終わりました。
マリヌースはフレディー・ヘッド厩舎、デイヴィー・ボニラ騎乗。
最後はスプリント戦のモトリー賞(GⅢ、3歳上、1200メートル)。1頭取り消しがあって11頭立てです。
ここも3対1の1番人気に支持されたケミヤン Kemiyan が期待を裏切る凡走で6着。勝ったのは33対10のスイス・ディヴァ Swiss Diva でした。
3馬身差2着はカチガイ Kachgai 、頭差3着に南アフリカのティザ Tiza 。
スイス・ディヴァは英国馬で、月初にドーヴィルのリステッド戦を制しての2連勝。よほどフランスの水が合うものと思われます。
調教師はデヴィッド・エルスワース、騎乗したイオリッツ・メンディザバルはカンセー賞に続いてパターン・レースのダブル達成です。
エルスワース師はメンディザバルに最後方待機を指示したそうですが、結果は逃げ切り勝ち。調教師の指示を無視した形ですが、好スタートによる咄嗟の判断でしょう。
この馬もパターン・レース初制覇となります。
ということで3カ国のパターン・レースを大特急で駆け回りました。ヨーロッパは来週から秋競馬に突入します。
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