今日の1枚(115)

ニールセンの作品を集中的に聴いてきましたから、序にもう1枚ニールセンに手を伸ばしました。これもディジタル初期のステレオ録音で、サイモン・ラトル Simon Rattle 指揮、バーミンガム市交響楽団 City of Birmingham Symphony Orchestra の演奏です。

①ニールセン/パンとシリンクス
②ニールセン/交響曲第4番「不滅」

1986年3月に発売された東芝EMIの日本盤で、品番は CC33-3292 。番号から類推できるように、1枚何と3300円もした貴重盤です。こんな高価なCDを持っている人なんてそうはいないでしょ。へえん。

初期の東芝盤はブックレットが冊子になっておらず、LP盤の裏面の解説ページが四つ折りの1枚として挟みこまれているスタイルでした。四半世紀を経た現在、解説書の折り目は破れかけていて、ほとんど古文書状態ですわ。ライナーノーツは懐かしき菅野浩和氏。

この解説書の片隅にデータがキチンと印刷されていて、1984年9月13・14日の収録。録音場所はワーウィック大学アーツ・センター Arts Center, University of Warwick で、プロデューサーは John Willan 、エンジニアは Michael Sheady となっています。

ご存知でしょうが、ラトル/バーミンガム市響の後の録音は新装なったバーミンガム・シンフォニーホールで行われています。当録音はそれ以前の間借り時代を代表するもので、却って貴重なものかも知れません。

EMIの特徴である自然な広がりを重視したもので、ホール後方の席で聴く感じ。ただ最新の録音に比べてやや弦などが硬めに感じられますが、これはマスタリングで改善されるレヴェルかも知れません。

①は珍しい作品で、解説の菅野氏ですらナマでは聴いたことが無いと書かれています。演奏時間8分強の美しい作品で、中間部に出るイングリッシュホルンとクラリネットのソロが印象的。
このソロ、ラトルは奏者に自由に吹かせていて、アド・リブの雰囲気があります。

またイングリッシュホルンには鐘(campanelli)が絡みますが、練習記号Gの13小節目の鐘を1拍前倒しして叩かせています。前後の小節と合わせたのかとも思いましたが、これは奏者のミスの可能性が強いでしょう。イングリッシュホルンのイントネーションから判断して、ここはスコア通りに叩くべきだと思慮します。

また、この前、練習記号Fの11小節目から13小節目にかけてタンバリン Tamburino の消え入るようなソロがありますが(ppp から pppp に減衰)、ここは録音レヴェルが低すぎてほとんど聴きとれません。少し残念な箇所です。

更に当作品には珍しいクロタル Crotales が一箇所だけ使われますが、ここはオケの全奏(ff)なので聴き取ることは不可能。無理のあるオーケストレーションでしょう。

②は不滅という表題故にナマでも時々演奏される機会がある作品。何と言っても2組のティンパニが活躍するのが聴きどころですね。
当盤では第1ティンパニが中央やや右に、第2ティンパニはその左に明瞭に定位します。

第4交響曲は単一楽章とする見方と、4楽章制で考える二つの見方がありますが、ニールセンは楽章に番号を付けていません。シベリウスの第7交響曲のように単一楽章の交響曲で、大きく四つの部分に分けると考えた方が自然でしょう。

当ディスクは各部分でトラックが分けられており、第2部は練習番号27の38小節目から、第3部は練習番号31の31小節目から、第4部は練習番号42の11小節目からに設定されています。

①②とも若きラトルの説得力ある、スケールの大きな指揮が楽しめるディスク。個人的にはベルリン・フィル時代より好きですね。

参照楽譜
①ウィルヘルム・ハンセン Nr.18807
②ウィルヘルム・ハンセン Nr.1843

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