オブライエン連覇、クリテリウム・インターナショナル

フランスの平場シーズン、10月最後のパターン・レースは、昨日の日曜日にサン=クルー競馬場で行われた二鞍です。
日曜日にサン=クルー競馬場が開くのは珍しいことですが、ロンシャン競馬場は29日が最終戦。シーズン末期ならではのスケジュールです。
(因みに、ロンシャンの最終日に組まれていたメインのリステッド戦では日本人がオーナー・ブリーダーの馬が勝って有終の美を飾っています。日本では全く報道されないのも不可解ですが・・・)

日曜日の注目はクリテリウム・インターナショナル(GⅠ、2歳、1600メートル)、このレースの性格については去年の日記で詳しく触れていますから、ここでは繰り返しません。

今年は10頭立て。9対5の1番人気に支持されたのは、ゴドルフィンの無敗馬(3戦全勝)フレンチ・ネイヴィー French Navy 。全走のシェーヌ賞(GⅢ)を1番人気で楽勝した馬ですね。

しかし本命馬は、この日は機嫌が悪かったのか引っ掛かってしまい、さすがのグィヨン騎手も馬を抑えることに力を使い果たして5着の惨敗に終わりました。

優勝は、大外10番枠からスタートしてスムースに先行馬を追走した2番人気(14対5)のロデリック・オコンナー Roderic O’Connor 。直線、ゴール前300メートルで先頭に立ち、急速に右に寄れる若さを露呈しながらも、2着に追い込んだサルト Salto に1馬身半差を付ける快勝です。
3着は、更に5馬身の大差が付いてマイグリ Maiguri の順。

ロデリック・オコンナーは、アイルランドからエイダン・オブライエン厩舎が送り込んだ期待馬で、ジョニー・ムルタ騎乗。オブライエン厩舎はこのレース3勝目で、去年に続く2年連続制覇達成です。即ち、2006年のマウント・ネルソン Mount Nelson 、2009年はヤン・フェルメール Jan Vermeer 。

同馬は、デューハースト・ステークス(GⅠ)発走前はオブライエン厩舎では脇役的存在でしたが、デューハーストでは逃げ粘ってフランケル Frankel に2馬身4分の1差2着に健闘、一躍競馬サークルの注目を浴びた存在です。
このGⅠ勝利によって前走はフロックではなかったことを証明しましたし、フランケルの強さを改めてサークルに印象付ける結果ともなりました。

この勝利によって2000ギニー、ダービー共に10対1のオッズが出され、オブライエン師も2000ギニーに向けて調整することを言明しています。

なお馬名のロデリック・オコンナーは、北京に赴任した英国の外交官、サー・ニコラス・ロデリック・オコンナー Sir Nicholas Roderick O’Conor (1843-1908) に因んだものでしょう。

この日のもう一つのパターン・レースは、パース賞(GⅢ、3歳上、1600メートル)。11頭の登録がありましたが、ドイツから出走予定の馬が取り消して10頭立てで行われました。

5対2の1番人気に支持されたのは、アイルランドのジョン・オックス厩舎が送り込んできたケレダリ Keredari 。
実は今シーズンのフランスはリーディング・オーナー争いが熾烈で、カーリッド・アブダッラー殿下とアガ・カーンが激しく競り合っています。本命のケレダリはアガ・カーンの所有馬、態々アイルランドから遠征してきたのは、リーディングを争う馬主サイドの強い要望があったからなのですね。

しかしレースは全く皮肉な結果になってしまいました。
ケレダリは、好位追走も最後の伸び脚を欠き、5着に敗退。優勝は31対5のラジサマン Rajsaman が攫うことになります。1馬身差2着にはもう1頭のドイツからの参戦馬アリアンサス Alianthus が逃げ粘り、頭差3着にスキンズ・ゲーム Skins Game 。

勝ったラジサマンはスタートで大きく出遅れ、最後方を追走する流れでしたが、却ってリラックスできたのでしょう。ゴール前300メートルで前が開くと、一気に馬群を割って抜け出しました。
(昨日の天皇賞でのペルーサを連想させます)

この3歳馬、実は生産したのはアガ・カーンで、ついこの間まではアラン・ド・ロワイヤー=デュプレ厩舎に所属し、アガ・カーンの勝負服で走っていた馬なのですね。
春先のフォンテンブロー賞(GⅢ)では寮馬シユーニ Siyouni のペースメーカーとして出走、本命馬を尻目に逃げ切ってしまいましたが、仏2000ギニーでは15頭立て10着と本来のペースメーカーとしての仕事。その後オレンジ公賞(GⅢ)で3着した後に凱旋門賞前日の競売に出されて現在のオーナーに買われ、フレッディー・ヘッド厩舎に移籍したばかりなのです。

皮肉にも、と評したのは正にそのことで、アガ・カーンは直前まで自分の所有だった馬に負けたわけ。
現調教師のヘッド師は、購入したときは値段が高過ぎると感じたのだそうですが、今はしてやったり、という気分でしょう。何しろ転厩したばかりなので、この馬の能力そのものを完全には把握していないというのが現実のようです。これで香港行きを決意したかも、ね。
今日のレースで手綱を取ったのは、もちろん首戦騎手のデーヴィッド・ボニラでした。

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