シーズン末期の本命馬受難

11月最初のパターン・レースは、月曜日にフランスのメゾン=ラフィット競馬場で行われた直線コースのスプリント戦3鞍。
フランスの平場競走パターン戦線も残り2週間とあってシーズンも末期、この時期は雨続きで良馬場は望めず、馬にも長いシーズンの疲れが翳を落としつつあります。

この日は8レース、最初の一般戦2レースこそ順当に本命馬が期待に応えたものの、第3レースに組まれたパターン・レースのミエスク賞(GⅢ、2歳牝、1400メートル)から馬券は荒れ始めます。

1頭が取り消して8頭立てで行われたGⅢ戦、2対1の1番人気には前走コンピエーニュ競馬場で3馬身差の楽勝を演じたコレ厩舎、ペリエ騎乗のホイップ・アンド・ウィン Whip And Win が推されていました。

レースはラフな展開となり、本命馬は4着に敗退。1着入線は76対10のイザリア Izalia でしたが、4分の3馬身差2着のジプシー・ハイウエイ Gipsy Highway に大きな不利があり、審議となります。1馬身差3着入線はエンジェル・オブ・ハーレム Angel Of Harlem 。

しかし審議の結果、着順に変更なく入線通りで確定。2着のジプシー・ハイウエイは、社台の吉田照哉がオーナー・ブリーダーの馬で、ここは悔しい2着でした。

一方、勝ったイザリアはフレデリック・ロッシ厩舎、フランク・ブロンデル騎乗のローカル馬。
ロッシ師はエクス=アン=プロヴァンス近郊のカラス Calas を本拠にしている調教師で、同馬が前走マルセイユで4馬身差の圧勝したのを受けて追加登録し、これがパリ地区でのデビュー戦でした。もちろんパターン・レースは初挑戦での初勝利です。この勝利により、来年のクラシックを目標にする由。

続いても2歳戦で、クリテリウム・ド・メゾン=ラフィット(GⅡ、2歳、1200メートル)。フランスでは今シーズン最後のGⅡ戦となります。

2対1の1番人気はアレンベルグ賞(GⅢ)に勝ち、ロベール=パパン賞(2着)とモルニー賞(4着)でも入着を果たしているブルックス Broox 。
イギリスからの挑戦となるノーフォーク・ステークス(GⅡ)とジムクラック・ステークス(GⅡ)の覇者アプルーヴ Approve が9対2の2番人気で続きます。

しかしここも人気馬は凡走。優勝はイタリアから参戦してきたブルー・コンステレーション Blue Constelation で、オッズは19対2でした。何と2着ウィズ・キッド Wizz Kid に6馬身もの大差を付ける圧勝で、更に1馬身半差3着にも伏兵(32対1)カトラ Katla が飛び込む波乱。
本命ブルックスは9着、2番人気のアプルーヴも8着という惨敗で、前者は4月から走ってきた疲れを、後者は荒れたコースの重馬場を夫々の敗因に挙げています。

アプルーヴは2歳馬ながらこれで早々と引退、来春からはアイルランドで種牡馬生活に入る旨が発表されました。

勝ったブルー・コンステレーションはイタリアのヴィットリオ・カルーソー厩舎の管理馬、ミルコ・デムーロの騎乗。デビュー戦こそ2着でしたが、その後はプリミ・パッシ賞(GⅢ)、クリテリウム・ナツィオナーレを含め、これで4連勝となります。

昨冬には心臓の手術を受けた大ヴェテランのロッシ翁によれば、ブルー・コンステレーションは重馬場のスプリント戦でのみ実力を発揮するタイプとのこと。来年はクラシックには目もくれず、ロイヤル・アスコットのスプリント戦を目標にしたい意向のようでした。

最後のセーヌ=エ=オワーズ賞(GⅢ、3歳上、1200メートル)は、1頭取り消しの13頭立て。
6対4の1番人気にはアガ・カーンの期待馬、6月にはパレ・ロワイヤル賞(GⅢ)を制してパターン・レースの常連であるダルガー Dalghar が選ばれていました。

しかしこの日は本命馬には厄日だったのか、ダルガーもまた3着に敗退してしまいます。

優勝は18対1という大穴デフィナイトリー Definightly という4歳のせん馬で、1馬身半差2着にもスウェーデンから遠征してきたアルコワズ Alcohuaz という耳慣れない名前の馬。更に8馬身の大差が付いた3着に漸くダルガーという結果です。

デフィナイトリーはイギリスから遠征した馬で、ロジャー・チャールトン師の管理馬。ティエリー・テュイレ騎手が騎乗していました。
これが今シーズン4勝目の同馬は、これまでリステッド戦とハンデキャップ戦で走っていた馬で、パターン・レースは初挑戦で初勝利の快挙。前レースに勝ったブルー・コンステレーション同様、重馬場のスプリント戦だけを狙ってくるタイプで、いずれはアベイ・ド・ロンシャン賞にチャレンジする計画があるようです。

2着に入ったアルコワズも珍しい経歴の持主で、同馬は落盤事故ですっかり有名になった南米のチリ産。当初はチリで走っていましたが去年の春にスウェーデンに移籍し、ドイツなどでも走ったあとフランスでスプリント戦に挑戦してきた変わり種です。
チリにとっては、もう一つのビッグニュースでしょうか。

以上でこの日のパターン・レースは終了しましたが、残る一般戦の3レースでも本命馬は続々と敗退。1番人気は3着までには1頭も入らない結果となってしまいました。シーズン末期の重馬場、馬券を買う人たちにとっても難しい季節ではありましょう。

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