今日の1枚(119)

バイエルン放送交響楽団 Symphonienorchester des Bayerrischen Rundfunks の創立60周年記念セットの4枚目は、第3代の首席指揮者コーリン・デーヴィス Sir Colin Davis が指揮したアルバムです。

①エルガー/「エニグマ」変奏曲
②ヴォーン=ウイリアムス/交響曲第6番

デーヴィスは1982年から1992年まで首席指揮者を務めたイギリスの名指揮者。お国ものとも言える英国作品を組み合わせた選曲です。

BR Klassik レーベルの 900705 で、これもミュンヘンのヘラクレスザール Herkulessaal, Munchen での録音。①はデーヴィスが首席に就任して間もない1983年12月14日の収録。一方②は1987年4月30日と5月1日に行われた演奏会のライヴ録音とクレジットされています。
①には Live の文字がなく、収録日も一日だけとなっていますから、あるいは①は放送用に聴衆を入れずに録音したのかも知れません。確かに客席ノイズは聴き取れませんでした。

この時代、既に世界の録音方式はディジタルになっていた筈ですが、当盤にはアナログなのかディジタルなのか明示されていません。もちろんステレオではあります。

プロデューサーとエンジニアは①と②では違っていて、①のプロデューサーは Michael Kempff 、エンジニアが Martin Woehr 。
一方②のプロデューサーは Wilhelm Meister 、エンジニアが Hans Schmid  とクレジットされています。

これまでのディスクとの決定的な違いは、弦楽器の配置がアメリカ方式に変っていること。ブックレット(解説は Bernhard Neuhoff)に掲載された演奏風景の写真を見ても、チェロが右端に位置しているのが確認できます。デーヴィス時代に配置が変えられたものと想像します。

もう一つ。気の所為かも知れませんが、デーヴィス時代になってからオケの音色が明るくなったようにも感じます。録音技術の向上、趣味の変化などの影響があるかも知れませんが・・・。

当盤はこれまでのものに比して収録レヴェルが低く抑えられているのが難点と言えば難点。アンプのヴォリューム摘みをかなり思い切って上げないと頼りなく感じてしまうでしょう。
ま、曲の所為かもしれませんが、音量を上げて聴けば両曲の素晴らしいオーケストレーションが楽しめます。

それでも①のフィナーレで登場するオルガンは物足りません(エルガーの指定では使っても使わなくても良いアドリブとなっていますがね)。辛うじて鳴らされていることは判りますが、ペダルの重低音は全くと言って良いほど収録されていません。これはマイナス。

デーヴィスの指揮は、自国ものということもあって堂々たるエルガーを聴かせます。第3変奏の繰り返しは指定通り実行。
トラックは各変奏ごと、全部で15のトラックに分割されています。

それにも増して感動的なのが②。これを聴くと、日本でこの曲がほとんど演奏されない状況に怒りを覚えるほど。間違いなくヴォーン=ウイリアムスの最高傑作でしょう。
全4楽章を休みなく演奏するシンフォニーですが(トラックは各楽章の頭に正確に振られています)、第1楽章から第3楽章まで客席ノイズが全く聞こえないのは、恐らく聴衆も作品の素晴らしさと演奏の凄さに圧倒されているからでしょうね。
音量記号が最初から最後まで、全てのパートが pp という特異な第4楽章に至って、漸くライヴ収録であることが判ります。

その第4楽章(エピローグ)に入って間もなく、8小節目に僅かなデジタル・ノイズと思しき傷がありますが、鑑賞の妨げになるほどのものではありません。

参照楽譜
①オイレンブルク No.884
②オックスフォード・ユニヴァーシティー・プレス

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