今日の1枚(5)

今日は軽いものです。ウィーンの音楽をルドルフ・ケンペが振った1枚。原盤はEMIですが、ライセンス契約に拠ってテスタメントがCD化したもの。「ケンペの遺産」という12枚組セットの1枚で、セットの品番は SBA12 1281 。これは7枚目のアルバムです。
①ヨハン・シュトラウスⅠ世/ラデツキー行進曲
②ヨハン・シュトラウス/喜歌劇「こうもり」序曲
③ヨハン・シュトラウス/皇帝円舞曲
④ヨハン・シュトラウス/「千一夜物語」間奏曲
⑤ヨハン・シュトラウス/ウィーンの森の物語
⑥ヨハン・シュトラウス/ポルカ「クラプフェンの森で」
⑦ヨゼフ・シュトラウス/円舞曲「ディナミーデン」
⑧ヨゼフ・シュトラウス/円舞曲「天体の音楽」
⑨レハール/円舞曲「金と銀」
⑩ホイベルガー/喜歌劇「オペラ舞踏会」序曲
全てルドルフ・ケンペ指揮ウィーン・フィルの演奏です。録音は2種類あって、①②⑧~⑩の5曲が1958年2月12・19・20・22日の収録、 ③~⑦は約3年後の1960年12月21日と22日に収録されています。夫々LPでは第1集、第2集のような形で出ていたのでしょう。
録音場所は全てウィーンのムジークフェライン。プロデューサーとエンジニアも共通で、プロデューサーは Victor Olof と Peter Andry 、エンジニアは Harold Davidson 。
プロデューサーのオロフによる名録音というに尽きるでしょう。元々ヴァイオリニストだった人ですが、デッカのモノラル時代に ffrr の伝説的名録音を数多く残した人。ステレオ期にはEMIに移籍して、専らウィーンで、ウィーン・フィルとの録音を取り仕切っていました。
ケンペの指揮、ウィーン・フィルの美質もさることながら、オロフの貴族的な趣味と感性が作り上げた最高のディスク。
1960年録音がややマイクがオケに近く、1958年のものはホール中央の最良席で聴く感じ。バランスといいステレオ的拡がりといい、理想的ですね。これを聴くと、録音技術は当時からほとんど進歩していない、いや後退しているのではないかと思うほど。
ケンペの指揮も良い意味で中庸、実に音楽を気品高く歌わせています。
10曲どれも素晴らしいけれど、「千一夜物語」と「金と銀」は絶品。
①は右側に置かれた小太鼓のリズム先導入り。⑤のチターは最初と最後にも登場するけれど、奏者の名前はクレジットされていません。
⑥のカッコウは3箇所で聴こえてきます。あちこち飛んで移動するという趣向か、鳴き交わしの雰囲気か。
ワルツの繰り返しは時に応じて。全て繰り返すわけでもなく、全部はしょることもなし。常識的な選択でしょう。
ディナミーデンはリヒャルト・シュトラウスが「薔薇の騎士」で借用したワルツ。第1ワルツがそれだけれど、同じなのは最初の4小節(多分)だけ。
オペラ舞踏会は接続曲風に様々な楽想が出てくる楽しい曲。シュワルツコプフが歌った有名なワルツも顔を出して懐かしい。
選曲のセンスが素晴らしいのは、ケンペもそうだけど、もちろんオロフの意向が大きいんでしょうね。
オーケストラの配置はアメリカ式。
④⑥⑦⑨⑩の楽譜は手元にありません。一体にシュトラウスなどのウィーン音楽は手ごろなスコアが出版されていません。著作権など切れているのでしょうから、手ごろな価格で出して欲しいですよね。
「金と銀」なんてカーマスの指揮者用スコアが5000円もします。
ディナミーデンもウィーンの出版社に紹介したけれど、梨の飛礫であるんだかないんだか・・・。

 

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