今日の1枚(128)

今日はメンゲルベルク・ライヴ録音集の4枚目です。

①ヨハン・ワーヘナル/序曲「じゃじゃ馬ならし」作品25(1909)
②ショパン/ピアノ協奏曲第2番
③チャイコフスキー/交響曲第5番

録音日時は、

①1940年10月10日
②1943年4月9日
③1939年11月26日

①は、当セットに含まれるメンゲルベルク唯一のオランダ作品の録音です。
メンゲルベルクはオランダ音楽にはそれほど熱心ではなかったようですが、それでも1902年、1912年、1935年に自国作品によるフェスティヴァルを開催しています。オランダの作曲家にはこれが大いに励みになった由。

ワーヘナルという名前の作曲家は何人かいるようですが、ここに収録されているヨハン・ワーヘナル Johan Wagenaar (1862-1941) はユトレヒトに生まれてデン・ハーグで没した人。
原題はオランダ語で“De getemde feeks”とありますが、英語表記は“The Taming of the Shrew”です。

当セットの中では最も録音状態が良いもの。メンゲルベルクはこの作品を1911年12月にコンセルトへボウで取り上げたことがあり、それを聴いたワーヘナルが絶賛したという記録が残っているそうです。
スコアが手に入らないので細かいことは判りませんが、作品の活気を良く捉えた優れモノと言えましょう。
(スコアはオランダの出版社 Donemus から出ている由)

なお、メンゲルベルクはこの演奏会の3日後にもオランダ人作曲家ディーペンブロック Diepenbrook の序曲「鳥」という作品を演奏する予定でしたが、リハーサルが不足しているということで延期、替ってウェーバーのオベロンを演奏しました。そのときの録音が、当セット1枚目の冒頭に収録されているものです。

②はメンゲルベルクには珍しいレパートリー。ピアノ・ソロはテオ・ヴァン・デル・パス Theo van der Pas (1902-1986) という人ですが、どんな経歴のピアニストか詳細は不明です。

録音状態はあまり良いものではなく、特に低音がモヤモヤして聴き取れない部分があります。冒頭5小節目のコントラバスのピチカートは、何度聴いても聴き取れません。省略しているのかと思えるほど。

第1楽章の管弦楽による前奏と後奏に大幅なカットがあります。即ち前奏では34~67小節、後奏は334~342小節がカット。
また、第3楽章で登場する有名な弦のコル・レーニョ(141小節から)は普通のスタッカートに替えられているようです。
もう一つ、第3楽章のコーダ、447~448小節にかけてトランペットのクレッシェンドを加筆していることが確認できます。

③は②以上に録音が悪く、特に低音部が不明瞭。1939年のライヴという物理的条件の所為でしょう。

メンゲルベルクはチャイコフスキーの第5を得意にしていて、コンセルトへボウとはコロンビアに、ベルリン・フィルとテレフンケンにもスタジオ録音を残しました。もちろん当盤はそれとは別のライヴ演奏。

しかしながらこれは色々と問題がある演奏で、メンゲルベルク特有の表現には説得力もありますが、カットがやたらに行われているのが耳障り、いや目障りですね。

先ずは第2楽章、メンゲルベルクは24小節から44小節までをバッサリ切り落します。オーボエとホルンの美しい掛け合いの箇所ですね。

第4楽章も大胆で、210~315小節の大幅カット。これは展開部の大部分に当たり、いくらなんでもやり過ぎの感があります。
更にコーダ、472~489小節のカット。これまでの2箇所は自然に繋がっているので漠然と聴いていると気が付かないかも知れませんが、最後のものはバレバレ。ここまでやると驚きを通り越して笑ってしまうしかありませんな。

他にもメンゲルベルク流の改訂が豊富で、第4楽章第1主題の隠し味であるオーボエにホルンのゲシュトップフを加えている(59,61,63,65小節)のは秀逸。
第4楽章のコーダ、502小節の頭にシンバルのクラッシュを加えるのはマニアの間では有名でしょう。

第1楽章第2主題はコントラバスのピチカートが支えますが、ここをアルコに替えているように聴こえるのは録音が貧弱なためか・・・。
その第1楽章の終結部も、低弦の動きがモヤモヤして良く聴き取れません。

第2楽章と第3楽章をアタッカで続けていますが、これは演奏そのものがそのように行われたと考えてよいと思います。

参照楽譜
①楽譜なし
②オイレンブルク No.1216
③ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.63

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