今日の1枚(129)

オランダQディスクがメンゲルベルク没後50年を記念して集大成したラジオ・レコーディング集、今回が5枚目です。

①J.S.バッハ/ハープシコード協奏曲へ短調BWV1056
②コダーイ/「ハーリ・ヤーノシュ」組曲
③ブラームス/ヴァイオリン協奏曲

それぞれの演奏データは、

①1939年4月17日(スタジオ録音)
②1940年12月12日
③1943年4月13日

①は、当セット2枚目の冒頭に収録されていた「結婚カンタータ」と同じ日の録音。そこで触れた通りコンセルトへボウでの演奏ではなく、聴衆を入れたスタジオでの放送用録音と思われます。バッハ作品は多くが室内楽規模ですから、こうした演奏会も時折は行われていたのでしょう。

ハープシコード協奏曲と言っても楽器はピアノが使われています。ソロはアギ・ヤンボール Agi Jambor とでも読むのでしょうか。経歴等は全く不明ですし、ブックレットにも紹介はないようです。

バッハのピアノ協奏曲は、ほとんどが他の楽器のための協奏曲をアレンジしたもの。ここで演奏されているへ短調作品は第5番に分類され、原曲はバッハの失われたヴァイオリン協奏曲ト短調だと考えられているものですね。第2楽章(ラルゴ)はカンタータ第156番のシンフォニアにも使われている楽曲です。

②はコダーイの最も良く演奏される作品ですが、世界初演したのはメンゲルベルクで、1927年12月15日、ニューヨークでのこと。ですから当時はバリバリの現代音楽だったことになります。

録音はあまり良くありませんが、初演者による演奏ということで最も権威ある記録と言えましょう。

この日のコンサートでは、他にガスパール・カサドのソロでプフィッツナーのチェロ協奏曲、最後はリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」が演奏された由。

③は、当ディスクの中では最も良い音で収録されています。1943年のアムステルダムはナチ占領下にありました。

メンゲルベルクはブラームスのヴァイオリン協奏曲を献呈者でもあるヨーゼフ・ヨアヒムとも共演したことがありますが、この日のソリストはヘルマン・クレバース Herman Krebbers 。
クレバースは後にコンセルトへボウのコンサートマスターに就任しますが、このときはハーグ・レジデンティ管弦楽団の新しいコンサートマスターという触れ込みでした。

オランダを代表する名手との共演ですが、第1楽章のカデンツァはヨアヒムのものでもクライスラーのものでもありません。詳しくないので判りませんが、ブックレットにも何も触れられていません。

ただ思ったのは、数日前にNHKハイビジョンがベルリンの100年というドキュメントを放送していて、当時はユダヤ人音楽家を厳しく排斥していた事実とも関係があるのでは、ということ。
ブラームスのヴァイオリン協奏曲で最も多く取り上げられるヨアヒムもクライスラーもユダヤ人。もしかするとクレバースが他のカデンツァを演奏したのは、それが原因だったのでは、と考えた次第。

難しい時代のドキュメントだと思います。

参照楽譜
①リー Lea のポケット・スコア LPS No.98
②ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.272
③オイレンブルク No.716

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