今日の1枚(138)
メンゲルベルク/コンセルトへボウによるベートーヴェン全集の3枚目に進みます。
①ベートーヴェン/交響曲第5番
②ベートーヴェン/交響曲第7番
資料によると、①は1940年4月18日、②は1940年4月25日の演奏。第5は第8と同じ日のプログラムにあり、第7は前回取り上げた第4と同じ日の演奏です。
当盤の個別番号は、468 633-2 。
①は既にテレフンケンに録音したセッション盤を取り上げました(今日の1枚・122)。そのときはメンゲルベルクの改訂についてあまり細かく触れなかったので、ここでは気が付いた限りのものを列記しておきましょう。基本的にはテレフンケン盤と同じですが、若干異なる部分もあります。
先ず第1楽章は、テレフンケン盤では提示部の繰返しを実行していたのに対し、当ライヴ盤では省略されています。ただし、この繰り返しは編集によって操作が可能ですから、故意にカットされた可能性も無いとは言えないでしょう。セッションでは実行していた繰返しを実演では省略する、というのは考え難いと思うのですが・・・。
次に提示部コーダ、110小節と114小節の木管による下降音型にホルンを重ねます。
続いてテレフンケン盤でも触れた、再現部第2主題を導くファゴット(303小節)をホルンに変更。
更にコーダ、練習記号Fから始まる木管と弦の応酬パッセージ(439~453)でも、木管にホルンを重ねるのが聴き取れます。
第3楽章では、90~93小節のオーボエにもホルンを重複。このパッセージにはホルンも別の動きで参加しますから、あるいは倍管に増やしたホルンを2群に分けて使用しているものと想像されます。
トリオ部の繰り返しは実行。ここではティンパニに加筆があり、155小節の1拍目、156小節の3拍目、157小節の1拍目と、計3か所の追加。
第4楽章提示部の繰り返しは省略。63小節にティンパニを加えるのは、再現部の同じ箇所(272小節)と整合させるためでしょう。
テレフンケン盤にも聴かれた106~111小節のコントラファゴットにバス・トロンボーンを重ねるのはここでも同じ。
練習記号D(132~135)の木管にもホルンを重ねるのは、フルトヴェングラーも行っていた改訂。
テレフンケン盤で指摘したコーダでのトロンボーン加筆(390小節以降)は、ここでは聴き取れませんでした。あるいは低音が不足する当盤の音質のためかも知れません。
②は、①に比べればオーケストレーションの加筆・変更は最小限に止められています。
第1楽章提示部の繰り返しは省略。
第2楽章では主題冒頭のテヌートを強調するのが独特ですが、不思議に重くならないのが如何にもメンゲルベルク。
第3楽章冒頭、ティンパニの最初の2発が見事に落っこちています。
スケルツォ前半の繰り返しは実行し、後半は省略。またトリオでは、第1トリオの繰り返しは実行するものの、第2トリオでは省略。
スケルツォに比べてトリオのテンポが極端に落ちるのも特徴。更にトリオの途中、199~206小節の間だけテンポが一気に速くなるのも面白い表現で、もちろん第2トリオ(459~466)も同じ扱いです。
第4楽章の繰り返しは、提示部全体の繰り返しは省略するものの、他は全て実行。当時の一般的な演奏と同じ処置でしょう。
冒頭のティンパニに注目。スコアでは1拍目が休符で“うん・パパパン” となっていますが、メンゲルベルクは1拍目も叩かせ“パン・パパパン” としているのが目を引きます。これは当然ながら再現部(220小節から)と同調させた処置だと思われます。
113小節にもティンパニを加えて連続させるのも、この曲で聴かれる数少ない改編の一つ。
コーダの熱狂的な盛り上がりの中、435小節の前に短いパウゼを置くのにはチョッと拍子抜けしました。大音量(ff)のあと急に p に落とすので、細かい動きが聴き取り難くなるための配慮でしょうか。一度聴いて慣れれば何でもないんですがね。
参照楽譜
①ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.1
②ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.11
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