今日の1枚(130)

メンゲルベルクのラジオ・レコーディング集、6枚目は世界初演の演奏を2曲収めた歴史的録音です。

①ベートーヴェン/序曲「エグモント」
②バルトーク/ヴァイオリン協奏曲第2番
③コダーイ/ハンガリー民謡「飛べよ孔雀」による変奏曲

もちろん②と③が世界初演で、それぞれの演奏データは、

①1943年4月29日
②1939年3月23日
③1939年11月23日

①は1943年ということで、録音状態は良好。
序奏からアレグロの主部に入る時にいきなりアレグロになるのでなく、緩やかに始めて次第にクレッシェンドして第一主題に突入するのが如何にもメンゲルベルク風。

コーダで派手にティンパニを加筆するのも独特で、329~332小節、343~345小節は金管のリズムに合わせて叩かせています。

これに比べると②と③は録音状態が貧弱。細かいところまで明瞭には聴き取れません。いずれもナチ侵攻以前の演奏会で、選曲への制約などが無かった時代の記録です。

②のソロはセーケイ・ゾルタン Zoltan Szekely (1903-2001) 。ハンガリーの Kocs で産まれ、カナダのバンフ Banff で亡くなったハンガリーのヴァイオリニスト。1935年にハンガリー弦楽四重奏団を設立していますから、このときは既にクァルテットでも活躍していました。
このあと1949年にアメリカ移住、1960年にはアメリカ国籍を取得しています。

メンゲルベルクはこの作品を理解するのに大変に苦労したようで、練習ピアニストと何度もリハーサルを繰り返して音楽を頭に入れた、というエピソードが紹介されています。複雑なリズムやハーモニーはメンゲルベルクの理解を超えていたのかも・・・。

第2楽章の第4変奏の最後にあるカデンツァ風楽句(第68小節)では、印刷譜では弦楽器の伴奏が途中でフェルマータ休止になるのに対し、この演奏では最後まで引っ張って伴奏しているのが現在のものとは異なります。

バルトークは初演後、第3楽章に第二の終結部を書きましたが、ここでは当然ながら第1フィナーレ(594小節以降)が演奏されています。尤もこの演奏ではかなり「怪しい」演奏となっていますがね。

③は、コンセルトへボウ管弦楽団の創立50周年を記念して作曲されたもの。これはバルトークとは違ってメンゲルベルクに理解されるのも早かっただろうと想像します。

先にも書いたように録音が今一つで、冒頭のティンパニ・ソロはほとんど聴き取れません。

第12変奏(アダージョ)の最後(第340小節以降)が、現行印刷譜より長くなっているのが面白いところ。コダーイは出版に当たってここを短縮した可能性があります。当ブックレットにも、ブージー版スコアにも、各種音楽解説書にも一切触れられていないのが不思議な気がします。

参照楽譜
①ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.44
②ブージー&ホークス No.81
③ブージー&ホークス No.704

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