今日の1枚(131)

メンゲルベルクのラジオ・レコーディング集、7枚目はフランス音楽を中心にした1枚です。特にドビュッシーとラヴェルはメンゲルベルクにとっては「同時代」の音楽と言えるでしょう。

①ワーグナー/歌劇「タンホイザー」序曲
②ドビュッシー/ピアノと管弦楽のための幻想曲
③ラヴェル/バレエ「ダフニスとクロエ」第2組曲
④ベルリオーズ/劇的物語「ファウストの劫罰」~三つの管弦楽曲

これもデータは録音日付のみです。

①1940年8月10日
②③1938年10月6日
④1943年3月21日

メンゲルベルクはオペラ指揮者ではありませんが、ワーグナーの管弦楽作品にはいくつかのスタジオ録音が残されています。
ここで演奏された「タンホイザー」序曲にはコンセルトへボウでコロンビアにSP録音がありますが、これは全く別のライヴ収録。

いわゆるドレスデン版の序曲で、最後は「巡礼の合唱」の動機が高らかに鳴らされるエディション。メンゲルベルクは171、174、176小節にもティンパニを加え、更に最後の終止和音のティンパニをオーケストラ総奏のリズムに合わせて効果を高めています。

②はメンゲルベルクに限らず珍しいレパートリー。ソロは大御所、ワルター・ギーゼキング Walter Gieseking が弾いています。ギーゼキングには他の指揮者とのライヴ録音も残されていますから、得意のレパートリーだったのでしょう。

あまり知られていないようですが、この曲には2種類の譜面があり、ここで取り上げられているのは旧版の方。新しいショべール社の改訂版で聴くと、特に第2楽章が彼方此方違っていて面食らうかも知れません。スコアを参照するなら古いペータース版の方でどうぞ。

しかし、残念ながら当盤は録音が貧弱な所為か、ピアノの音がパッとしません。当時の新聞批評も“ピアノに比してオーケストラの音が大き過ぎる” という意見が多かったようで、この録音でもそれが感じられます。ただ私見では演奏の所為ばかりと言えず、ドビュッシーの書法にも責任の一端はあるような気がしますが・・・。

③は②と同じ日の演奏。録音には限界がありますが、何度か聴いて音質に慣れてくれば、結構楽しめる演奏です。

フランス系指揮者の演奏に比べて、例のフルート・ソロ(フルートはバルワーザーの由)が活躍するパントマイムのテンポか速目なこと、強奏でのアタックが若干強いことが特徴でしょうか。
そのアタックとは練習番号193や209辺りのことですが、敢えて言えば、という微妙な感覚です。むしろメリハリが効いていると言った方が適切かも。

④はメンゲルベルクが得意にしていた小品集。3曲の並列を「妖精の踊り」→「鬼火のメヌエット」→「ハンガリー行進曲」の順に並べ替えています。演奏効果を考えれば自然な処置でしょう。

「鬼火」と「行進曲」にある繰り返しは全て実行。
ハンガリー行進曲では練習番号21辺りからテンポをアップし、最後の全音符からなる3小節(練習番号22の12~14小節)だけを思い切りテンポを落として盛り上げます。

参照楽譜
①オイレンブルク No.903(歌劇全曲スコア)
②ペータース Nr.9352a
③デュラン(バレエ全曲スコア)
④オイレンブルク No.994(歌劇全曲スコア)

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