今日の1枚(136)
昨日は定例の内視鏡検診。検診そのものに苦痛はないのですが、その前後が大変。下剤と麻酔の影響で、音楽どころではありませんでした。
幸い検査の結果は異状なし。最終的には年末の問診で詳しく解説してもらえますが、暫くは心おきなく日々を過ごせそうな状況です。
ということで、今日もCDプレーヤーの電源をオン。メンゲルベルクをもう少し続けることにしましょう。
大モノの10枚セットを聴き終えましたが、手元にはもう一つのセット物があります。ベートーヴェンの交響曲全集5枚組。これを順次1枚づつ取り上げていくことにしました。
当セットは珍しくイタリア・フィリップス Universal Music Italy が2001年に発売したもの。セット・ナンバー 468 630-2 という品番が付けられています。タイトルに「50周年限定盤」とあるように、メンゲルベルク没後50年を記念したセットで、その点では前回まで扱っていたオランダのライヴ録音集と同じ企画になるものです。
18ページほどの解説書が付いていますが、残念ながらイタリア語のみ。私には読んでもチンプンカンプンです。内容はメンゲルベルクのベートーヴェン解釈に関して、当時のコンセルトへボウの監督リッカルド・シャイイー Riccardo Chailly との対話が纏められているようです。執筆者は Gian Paolo Minardi 。
また当セットの録音データは不親切で、ただ単に1940年4月から11月にかけてのライヴ録音とのみ記されています。会場はもちろんアムステルダムのコンセルトへボウ。
そこでこれは無視し、恐らく同じ音源と思われる日本盤に関するデータを別資料を参照にして対比して行くことにしました。(レコード芸術誌付録のレコード・イヤーブック1995)
最初の1枚は、
①ベートーヴェン/交響曲第1番
②ベートーヴェン/交響曲第3番
別資料によると、①は1940年4月14日の演奏。一方②はライヴ録音ではなく、1940年11月11日にセッション録音されたテレフンケンのSP録音と同一音源であろう、とされています。
セットとは別にCD番号が付されていて、これは 468 631-2 。
このイタリア盤、ライヴながらメンゲルベルクのトレードマークである演奏開始の合図“カチカチ”はカットされています。演奏終了後の拍手は、短めながら収録。
音質そのものは、1940年という年代にしては結構楽しめるもの。ライヴ録音集に比較して、ずっと聴き易い全集と言えましょう。
①はメンゲルベルクとしては極めてストレートな表現で、オーケスレーションの追加や変更などはほとんど無いと思います。
繰り返しも実行するのが原則で、唯一第2楽章提示部の繰り返しだけが省略されています。珍しいのは第3楽章で、主部(実質スケルツォ)の再現の際にも前半の繰返しを実行していること。メンゲルベルクの時代では珍しい処理だと思われます。
第1楽章の序奏から主部への流れ込みの32分音符は、アレグロのテンポに合わせます。
また第4楽章コーダ。第237小節のフェルマータでは、ティンパニにトレモロで続けさせているのが変ったところ。
②は上記のように、ライヴではありません。単に拍手が無いということだけでなく、SP盤の面の替り目がハッキリ聴き取れることでも明らか。例えば第1楽章の197小節で2面に移行します。
WERMによると、テレフンケン盤は SK 3117/22 の6枚12面で初出されていたようです。
セッション収録ながら、音質はライヴに比べて高音がイマイチ。全体に音が籠り気味で、冴えない印象。反対に低音はライヴより若干豊かで、長く聴いても疲れないのが利点でしょうか。
繰り返しに関しては、①とは逆。第4楽章の第一、第二変奏の繰返しを全て行っている以外は全て省略していいます。特に第3楽章の繰返しを一切行わないのは、恐らくSPの収録時間の関係上止むを得なかったのではないかと考えられます。メンゲルベルクはこの楽章をほぼ4分で演奏。
(当セットは、各楽章・トラック毎の所要時間はジャケットにも解説書にも表記されていません)
流石にこの曲にはメンゲルベルクによる改訂がいくつか聴き取れます。
第1楽章では、提示部の最後、142小節にトランペットの上向音型を追加。再現部の同じ箇所と整合させています。
再現部では494小節。コントラバスのピチカートを1拍前(スコアでは2拍目を1拍目に)にずらせているのに注目。実はここも提示部に整合させているのですね。メンゲルベルクのスコアの読みが如何に徹底しているかの一例でしょう。
658~662小節にトランペットを追加するのは、メンゲルベルクならずとも当時の習慣でしょうし、現在でも普通に行われています。
更に668小節にもティンパニを追加するのはメンゲルベルクならでは、か。
第2・3楽章には特に加筆等はなく、第4楽章。先ず気が付くのは156~157と、160~161小節のホルンが聴き取れません。録音の不鮮明さ故かも知れませんが、メンゲルベルクの指示でカットしている可能性もあると思います。
最後の第七変奏では、416・417・419小節にも金管を追加。そしてコーダの頭、431~432小節にティンパニを加え、金管のリズムを強調しているのもメンゲルベルクならではの改編です。
参照楽譜
①ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.7
②ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.9
最近のコメント